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白虎サイド






 目の前には彼女が寝息を立てて眠っている。俺は彼女に触れると、小さかった体が徐々に人の姿へと変わった。



「戻った、のか」



 さっきまで自分の体は白虎だった。毛に覆われていたはずの体もなく、爪も鋭くなく切り揃えられている……なぜだ。今までなら、ひと月は戻らないはずなのに。



 少し混乱していると、頭の奥がピーと鳴り「え、珀様!?」と驚いた玄の声が聞こえた。急に通信が始まったのであちらも驚いているのだろう。



「玄、今どこにいる?」


『藤角の客室で休ませていただいております。珀様はどちらに? どうして通信できているんですか?』


「まぁ色々な。俺は、本家の地下に咲良といる」


『地下? どうしてそんな場所に』


「説明などどうでもいい。なんでもいいから、こっちに来い。知られぬようにな」



 それだけ言ってブチッと通信を切った。それからすぐ、玄はこちらにやってきた。


「お待たせいたしました、珀様」


「思ったより早かったな、まぁいい。状況説明は後だ。俺は先に出る。半刻ほどで迎えにくるから」


「かしこまりました」



 俺、白虎(びゃっこ)(はく)は皇国西の領地である華陽の領主だ。皇国ができた時から守護神としている白虎が祖先だ。俺もその守護神の能力を受け継いでおり、守りにおいては皇国一だと自負している。


 だが、一つ問題がある。それは先祖返りが強く現れてしまうことだ。まだ人間のまま耳があったり尻尾だったりあるのはいい方で今日のように藤角家の女主人が言っていたようにただの“白い獣”だ。……まぁ、あれは少しムカついたけど。


 そんなわけで俺は気配を消して藤角家から出た。


 藤角家から出て四半時ほど歩いてすぐに高級呉服店がある。


 そこは【呉服屋きぬはた】と言って皇都に住む貴族や上流階級の人々が着用するための高級布地や仕立ててある着物を販売する専門店だ。大体の人はここで購入する。


 戸を叩き声をかけるとこの店の店主で、友人の絹畠(きぬはた)衣槻(いつき)という。



「随分、遅かったな。珀」


「すまない」


「まぁいいが、いつものことだしな」



 店の中に入ると衣槻は灯りをつけて奥に案内される。



「急な話だったから、大変だったよ……で、姫君はどんな方だったんだ? 噂じゃ、おとなしいと聞いているが」


「……とても優しい可愛らしい姫君だった」


「そうか、それなら良かったが。だけど、珀が下賜された姫君とね。じゃあ、また他のものは届けさせるよ」



 衣槻から着物を受け取ると、藤角家に向かった。今度は、華陽の領主として姫君を迎えに。

 





 


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