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初めての着物



 侍女たちに囲まれた私は流されるまま、今着ている壺装束を脱がされた。


「咲良様はお肌が白いので薄紅や藤紫が似合いそうですし、こちらの打掛にいたしましょう」


 椿様が打掛と言い持ったのは、藤紫地に藤の花や牡丹、桔梗が描かれているものだ。その隣にいる雪さまは「では、掛下はこの色はどうでしょう?」と椿様に聞いているようだ。


 この装束は初めて見るけど、沢山の花が描かれていて色も鮮やかだ。後宮でも綺麗な単は見てきたけれど、こんな綺麗に刺繍されたものは初めて見る。


「咲良様、このような色合いにしたいと思っているのですがどうでしょうか?」


 先ほどの藤紫の下は撫子色の無地だが菊の花紋が襟にあった。とても素敵だったので、もちろん頷く。


「では早速始めさせていただきますね、苦しかったりしたら言ってください」


 そう言うと、とても素早くやってくださって苦しいとかもなくあっという間に着付けは終わった。


「とてもお似合いです! きっと、ご当主様もお喜びになりますよ」


 幸様と春様がさっきまでなかった布を被っているものを持ってくるとそれを私の前まで持ってきてその布をゆっくりと取った。


「……っ……」


 それは自分を映し出していてこんなの見たことなくて、とても驚いてしまう。ガラスみたいなのにガラスじゃなくて、鏡のようなのに私が知っている鏡じゃない。それに私がもう一人いるみたいだ。


「もしかしてこのような鏡は初めてでしたか?」


 首を縦に振れば雪様、春様、幸様は少し困った表情をしていた。

 もしかしたらこういった鏡は普通に出回っているものなのかしら……後宮ではなかった気がする。もちろん、藤角家でも見たことがない。


「申し訳ありません。私たち、幼い頃から玻璃製でできた鏡を使っていたので……あ、でもこんなに大きな鏡は初めてですが、配慮が足りなくて」


 申し訳なさそうな顔をされてしまって慌てて書くものを探すがなくて焦る。

 私は大丈夫だと伝えたいけど今書くものがなくて伝える手段がない。珀様は私の声を認めてくださったけど、この方々が認めてくれるかわからない。彼は何も言わなかったけど発音もおかしいと思う。


 これから一緒に過ごしていくのにお父様やお継母様たちみたいに、気持ち悪がられたらどうしたらいいか……そうなったら私は、また居場所がなくなってしまう。


 でも、ずっと申し訳なさそうな表情をさせて笑ってくださらなくなるのではないかと思い意を決して口を動かした。



「……だ、だぃじょ……ぅぶ、で、す。こ、っんな、にきれい……ぁりがとう。椿さま、幸さ、ま、春さま、せつ、さま」


 言葉になっているのか発音が大丈夫か心配なことはたくさんあったけど、伝えたいことは伝えられた……はず。


「こちらこそ、ありがとうございますっ。私たちも、ご当主様の奥方になられる咲良さまが可愛らしいお方で舞い上がってしまって……あ、私たちのことは様は不要です。幸とお呼びください。春も雪も同じように」


「わかり、ました。これから、よろしくおねがぃします」


「はい。よろしくお願いします」

 



 彼女らと話をしていると、椿さんが襖を開けたみたいで人の気配がする。幸さんたちが礼をした様子から珀さんが来たのだろうと思い後ろを向いた。



「……綺麗だ」



 後ろには思った通りに珀さんがいらっしゃってその隣には玄さんもいた。


「やはり、その色が似合う。想像通り、可愛い。あぁ、そうだ、お茶をしよう。……玄、準備はできているか」


「はい、ご用意できています。ご案内いたします」


「ならよかった。では、咲良。この格好で移動は慣れていないだろうから先ほどのように体に触れても良いだろうか?」


「ぇ……っ」


 彼は触れてもいいかと聞いていたと思うのだが私が答える前に私を抱き上げた。


 すると、部屋から出て階段の近くの茶室へと運ばれて珀さんの点てて下さってのんびりと過ごした。





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