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零 つまらない更衣
あの日は赤い紅葉が印象的な頃だった。
籠で運ばれ来た先は帝の妃が住む後宮とよばれる七殿五舎に私は更衣――一番位の低い妃として入内をした。
私に与えられたのは、帝がいる清涼殿から最も遠い淑景舎と呼ばれる場所。先帝時代は更衣はたくさんいらっしゃったらしいけど、今の帝は皇后を一身に寵愛しているため更衣は私だけだった。
入内した初めの時は、更衣がいなかったために帝が身分の低い姫を見初めたと言われていたらしい……そんな事実は全くない。そもそも私は見初められるような環境にいなかったし、それに喋らないから床入り後は一度も帝のお渡りはなかった。
だって、私は耳が聞こえないので何かを話しているのかわからない。
喋らないのではなく、喋ることができない。だから私は帝から【つまらない姫】だと言われているのだから。