ep.1 国立第壱高等学校
新連載開始です!
よろしくお願いします。
投稿ペースは滅茶苦茶遅くなります。(月に二本は投稿かな)
国立第壱高等学校入学式の日。
俺は学校指定の制服である、白いワイシャツ、黒色のブレザー、紺色のネクタイに灰色のチェック模様入り長ズボンに着替え、家を出る。
「行ってきます」
家には誰もいないが、癖でつい言ってしまう。
学校まで歩いて約30分。
ぼんやりと空を眺めながら、歩いて行った。
『国立第壱高等学校』、東京都にある日本で八校しかない能力の育成に重点を置いた国が運営する高校の一つである。
俺はそんな高校の入試を受けた。
入試の内容は、筆記試験、実践試験、面接試験の三つあり、定員200名で倍率は例年100倍を超える難関校に俺は進学した。
俺のスキルは世間で言う負け組、だが、負け組の人生を生き抜くためにこの学校に進学することを決めた。
俺はスキルで人生が決まってしまうこの世界に疑問を抱いていた。
なぜスキルだけでその人の全てを決められるのだろうか、と。
別にスキルだけがその人の強みだというわけではないのに。
『能力』、人々に与えられし魔法のような力であり、この世界での絶対評価となる。
スキルのレベルが高いほど優遇、低いほど冷遇される。
もちろん、スキルが弱すぎるとレベルが高くても冷遇される。
事の発端は西暦2150年、突如として、全ての人類に異能の力が発現、スキルを得たことで争いが始まり、西暦2155年に第三次世界大戦が起きる。
西暦2160年にある一人の英雄がたった一人で戦争を終わらせ、翌年に国際能力安全保障条約が国連で採択された。
その主な内容としては、「能力を行使し、他国を制圧、又は戦争を起こしてはならない」というものであり、これを破ってしまうと多額の賠償金を国連に支払わなければいけないのだ。
その後、能力に関しての法律などは各国で決めることになったが、『能力の優遇制度』、これだけはどこの国でも扱っていた。
学校の校門前に着くと、そこにはこの学校に通っている在学生やこの学校に今日から通う新入生の姿があった。
俺は校門を通過して、案内通りに入学式の会場である体育館に向かった。
校内の敷地は広々としていて、ほぼ大学と同じくらいの敷地の広さといったところか。
体育館に着くとパイプ椅子が並んでおり、前から十列目の一番左端が指定された席でそこに座った。
それにしても体育館は広い。
サッカーコート一つ分くらいかそれ以上ある。
これから意味もない入学式をやると思うと、憂鬱な気分になる。
入学式が始まり、開会宣言、入学許可の宣言が行われた。
「学校長式辞」
「皆さん、本日は国立第壱高等学校への入学おめでとうございます。…………皆さんの未来が輝かしいものになるよう、心から願っています」
今、話をしていた人が日本で最強のスキルを持つ、月島校長だ。
スキルについては、情報が少なく、詳細がほとんど分からないが、唯一分かることがあるとすれば、圧倒的強さ、それだけだ。
「在校生歓迎の言葉。在校生代表、真田 勉」
「桜の雨も降り止み、 葉桜が萌えいづる季節となって参りました。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生を代表して、歓迎の意を表したいと思います。…………在校生代表、真田 勉」
確か、この人は神能人格者候補の一人で成績優秀で学校では人気者だ。この人は絶対真面目なタイプだ、多分。
そして、ほとんどの生徒がめんどくさいと思う堅苦しい入学式が終わり、自分のクラスの教室に行った。
クラスは5クラスあり、1クラス40人で計200名。
俺は確か、……E組か。
E組の教室へと向かい、指定された席(窓側の一番後ろの列の席)に着いた。
省かれた……。周りの人はもうすでにグループになって、会話をしている。
俺は小学校、中学校と友達がいなかったので、別に一人でいることは慣れているからいいのだが。
俺は特にやることがなかったので、姿勢を崩し、外の景色を眺めた。
数分すると、先生が教室に入って来た。
その先生は眼鏡をかけた20代前半の若い男性、体型は普通で、前髪は眉毛にかかるかかからないかぐらいの長さ、性格は真面目そうだ。
「えー俺はこのクラスの担任になった神木 真嶋だ。よろしく。今日はガイダンスで終わるが明日からは普通の授業だ。何か分からない事があったら聞いてくれ。じゃあ、まず、この学校は皆も知っての通り、普通の学校とはカリキュラムが大きく違う。普通の座学もやるが、実技、実践もある。座学、実技、実践で一定の単位を取れなければ進級は出来ない。退学もあり得るから、気を付けるように。ここまでで、質問がある人はいるか?」
俺の前の席にいる黒色のロングヘアーで背丈は俺より背の低い女子が手を挙げた。
「じゃあ、そこの君」
「はい。一定の単位というのはどれくらいでしょうか」
「九割だ。それぞれ、30単位ずつあるから……81単位以上取らなけらば、進級できない。卒業も同じだ。他に質問あるか」
「この学校ではスキルの使用を認められているが、校長先生が言ってた通り、校則の範囲内だけだ。それを破れば、厳罰に処分が下される。注意するように。よし、じゃあ、一人ずつ自己紹介をしてくれ」
先生の印象は明るくもなく、暗くもなく、至って普通のテンションで、予想通り真面目そうな性格だ。
自己紹介、俺が苦手とするもので、学校生活で最初の壁。
自己紹介一つで学校生活の全てを決める。
さて、どう乗り越えるか……。
あまり目立たずに行きたいが、友達は今後、必要なときがくるかもしれない。ある程度、印象に残らなければならない。
どんなことを言えばいいのだろう。
特技はないし、趣味もこれっといったものがない。好きな食べ物とかが無難か。
……いや、無難すぎても意味が無い。
そんな感じでどう自己紹介をするか迷っていたら、俺の番がとうとう来た。
「緋織 慧。これからよろしくお願いします」
……、うん、綺麗に無視された。
一応、これでも頑張った方なんだけどな……。
馬鹿にされるよりはましだが、少し悲しい。
特技とか趣味があれば良かったなと痛感をした。
これで何度目だろうか。
友達がいないと今後の学校生活で大きくひびくからな。
俺はすでに二度も体験しているから分かる。
学校というものは友達がいないとひどい目に遭うということを。
取り敢えず、最初の壁は乗り越えられたので、良しとしよう。
自己紹介が終わり、各自解散という形になった。
もう、友達が出来つつあるのか、周りの人達は二人以上で帰る人が多かった。俺はもちろん一人で帰るのだが。
鞄に荷物をしまい、教室を出ようとすると、俺の前の席の女子が声を掛けてきた。
「あの、落としましたよ。緋織くん」
「……あ、ああ、ありがとう。えーえっと……」
ちなみにクラスメイトの名前が全く分からない。
覚えられなかったわけではない。自分の自己紹介の事を考えていて聞いていなかっただけだ。
「……水野 杏香です。クラスメイトの名前くらい覚えてください」
「ごめん。人の名前覚えるの苦手で……」
水野 杏香。
性格はおとなしそうで、口調は柔らかい、いかにも清楚系って感じの女子だ。
だが、かける言葉は容赦ない。
そのせいか、怖いと感じてどうにも近寄りがたい雰囲気がでている。
取り敢えずこれで、一人は覚えた。
後38人だ。
水野さんが届けてくれた持ち物を鞄にしまい、俺は教室を出ていった。
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