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激闘

「どういうことだ?小仲!」

 ただでさえ怒号が飛び交う週刊春秋の編集部で、特集班キャップの金子がひときわ大声を張り上げた。小仲の細い身体がぴしっと跳ね上がる。


 金子が持っていたのは他社のスクープ記事だった。他社といっても高文社のような大手ではない。青龍会の息がかかったゴシップ誌。金のためならでっち上げでもゆすりでもやりかねないと言われている、荒っぽい連中だった。

 哲平の書いていた文化ジャーナルは、それでも社会的道義にのっとった反体制を気取っていたので、おれたちと一緒にするんじゃねえ、とふだんの哲平なら言っていることだろう。

 しかし、今はそれどころではなかった。


 その号の巻頭カラーページには、堂々と『殺人集団プロジェクトS』と書かれ、ぼかしを入れたSのメンバーと思われるCG合成の想像画とSTEの概要が載せられていた。

 もちろん、書かれている記事のほとんどは、解決していない猟奇的殺人事件を無理やりSと絡めたでたらめなものばかりだった。

 しかし、それでもこの雑誌はいちおうコンビニ等にも置かれているれっきとした商業誌だ。

 扇情的な表紙にもプロジェクトSの文字が躍っている。


 一般のメディアに、ここまではっきりとSの存在が出てしまうなどとは考えもつかなかった。

 青龍会をもっときっちり抑えておくべきだったか。哲平は悔しさに爪を噛む。


「こんな非常事態に中村は欠勤、てめえは挙動不審。吐くならさっさと吐きやがれ!」

「ボ、ボクは何も知らないです。本当に、あの…」

 小仲は冷や汗をかきながら直立不動で立ちつくしていたが、やがてあきらめたようにがっくりと肩を落とした。

「言わないでくれって理香子ちゃ、いえ中村さんから。PSDは各製薬会社に配られたサンプルを集めることで完全なものができあがるんだって。中村さん一人が行くことを条件に、それを渡せば加奈子さんを解放すると言われて…」

 最後はほとんど聞き取れぬほどの小さな声だった。しかし、次に顔を上げた小仲はきっぱりと言い切った。

「ボクは今から現場に向かいます!どう考えても彼女一人で行かせちゃいけないんです!ボクだって特集班の一人ですから。だからボクも現場に!」

「こんの大ボケ野郎!何だってそんな大事な情報を早くおれたちに言わねえんだよ!てめえ一人のこのこ行ったところで何になる?現場現場って、その取引場所はどこだ?早く言え!」

 いきり立つ遠藤に、腕を伸ばして止めに入ったのは哲平だった。


「……待ってくれ、遠藤さん」

 なぜ止める?全員の視線が哲平に集まる。

「やつらの交換条件はあくまでも理香子一人が来ること、だろうが。おれたちが押しかけて行っちまったらぶちこわしじゃねえか。それにおそらく警察、公安も動いているはずだ。それを計算に入れねえ漆原とも思えねえからな」

 歯を食いしばるように哲平は言葉を絞り出した。

 今おれたちが動けば、綾也がどうなるか。それよりも彼が今どんな状態なのか、こんな記事が出てしまった以上、正気を保っているとは考えにくい。

 これじゃ情報が足りなすぎる。もっともっとおれに必要な情報を得てから。

 焦りと理性がせめぎ合う。爪が食い込むほどこぶしを握りしめる。


「おい、勘違いするなよ津雲。おめえはブンヤじゃねえのか?こんなスクープみすみす逃せるか!おれたちが一番真実の近くにいる。でたらめな捏造記事じゃなくて正しい本来の姿を世論に訴えることができる。それで初めて正しい報道と言えるんじゃねえのか?」


「おれは!おれは……綾也を……助け…」

 金になるヤマだとあいつをつけ回し、調べ倒したのは誰だ?みすずとちょっとした小芝居をして、あいつをその気にさせたのは誰だ?

 あいつを知れば知るほど、その苦しみと辛さの中でさえ笑顔を忘れずに生き抜いてきた綾也の、生への強いエネルギーを感じた。とてもまっすぐで眩しささえ感じる素直さに、自分にはない憧れを持った。

 どんな苦境でも、誰を恨むことなく運命に流されてゆくあいつを助けたいと思った。


 あいつに当たり前の平凡な生活を送らせてやりたい。おれの願いはそれだけなんだ。そして、世の中にいるはずのたくさんの綾也に同じ苦しみを味わわせてはいけない。


 おれはブンヤなんかじゃねえ。ジャーナリストが聞いて呆れる。おれはただ、あいつを……。


 あの哲平が言葉をなくし、押し黙ったまま固く目をつぶる。何も言えなかった。どう考えても遠藤の言うことの方が正しい。己の勝手な思い入れを押し通すために高文社を利用しようとした。梅村まで使った。話はでかく広がり、もうおれ一人のものではなくなっていた。それでも、おれは。

 哲平は自分を落ち着かせようと、息を大きく吐き出した。武道のすべては呼吸、そして気。この記事が出たことで何が起こる?よく考えろ、津雲哲平。まだあきらめるには早すぎる。


 こっちにはまだ、あれがあるんだ。

 哲平はサングラスをむしり取ると、遠藤をまっすぐに見た。


「まず公安に連絡を取ってみます。動きを探ってそれから…」

「そんな悠長なこと言ってられっか!おめえらしくもねえ!」

 ことは重大なんです。哲平の言葉には重みがあった。もしサンプルで足りないことがあいつらにばれたら、そのとき一体どう行った行動に出るのか。おれたちだけで対応できることではない。今すぐにでも藤堂に。

 その様子をじっと見ていた金子は改めて特集班全員を集め、それぞれの配置と役割を確認していった。





 それは異様な風景だった。

 物音一つしない事務所内には、十数人の男たちが倒れていた。

 息はあるらしい。しかし苦しげに顔をゆがめ、意識を失っている。

 その一番奥に立っているのは……。


「お姉ちゃん!」

 加奈子の叫び声に理香子は持っていたサンプルのケースを握りしめた。どうかこれで、これでおとなしく加奈子を返して!


 今にも泣き出しそうな加奈子のとなりには、いつもの穏やかな綾也一人が立っていた。

 彼女の肩を抱き、いとおしそうに視線を送る。

 それから理香子の方へと向き直った。

「サンプルと、交換ということにしましょう。どうぞこちらへ」

 静かな、あまりに落ち着いた声に哀しさが募った。これがあの気弱でおとなしげでそれでいてはにかみながら微笑む梶尾くんだというのだろうか。

 そっと理香子はケースを差し出す。加奈子は思いきり首を横に振った。

「いやよ!もう綾也くんとは離れない!ずっと一緒にいるって決めたの。ね、いいでしょう?」

 その声に、綾也は彼女の髪を優しくなでた。そして切なげに顔を耳に近づけてささやいた。

「向こう側へ、君たちの安全な場所へお帰り、お姫様。君にはもっとふさわしい世界がある」

 綾也と加奈子の視線が絡み合う。

 しかしそれはいつまでも続くものではないのだ。いつかは離れなければならないもの。決して交わることのないユークリッド幾何学上の平行線。


 イヤイヤをするように首を振り続ける加奈子。瞳にはもうすでに輝く涙が浮かんでいる。その姿に、綾也はほんの少しだけ冷たい響きを加えて言葉を紡ぐ。

「お願いだから、加奈子ちゃん。僕が僕でいられるうちに……」

 抑えても伝わってくる悲痛な想いに、姉妹は息を飲んだ。そっと加奈子が彼の腕から離れる。サンプルが綾也の手へと渡る。理香子は知らぬうちに止めていた息を吐き出した。


 妹の肩を抱き寄せて綾也から引き離す。

 それがどんなに残酷なことであっても、私の大切な役目。ここにいる三人が嫌でも知っている事実。

 どんなに言葉を取り繕うとも、私たちと彼の住む世界は違う。理解しがたい未知の領域。そこへ私たちは足を踏み入れてはいけないのだ。


「ねえ…」

 加奈子がそれでも綾也を見つめる。

「戦いがすべて終わったら、もう一度いっしょにジェットコースターに乗ってくれる?今度こそ写真を買うのよ」

 加奈子はいたずらっ子のように無理に微笑もうとした。大きなぬいぐるみを抱え彼女に振り回されながらも、とまどいと嬉しさを隠せなかった綾也。彼のはにかむ笑顔に、明るさを弾けさせた加奈子。それはそんなに遠い昔のことではなかったはず。

 なのに二人はどうしてこんな遠くまで来てしまったのだろう。

「約束ね!」

 わざと明るく小指を突き出す。ためらいがちな綾也の腕を取って、そこへ無理やり絡める。彼はされるがまま、何も言わなかった。

 その日が来ることは永遠にないだろう、その想いが彼を満たしていた。

 無邪気なあの頃へは戻れない。いや、あの穏やかな平和な日々こそが非日常だったのだ。


 少しずつ距離を取る。一歩、また一歩。

 行こう、加奈子。そう理香子が声をかける頃には彼女も綾也から視線をはずした。

 静かに来る別れ。理香子はまるで我がことのように、心が切られる思いだった。

 部屋のドアノブに手を掛けた。





 ふいに背後から冷たい響き。どうかこのまま、何もなかったように私たちを解放して!その願いは、どうやらやはり叶えられそうにもなかった。


「何かお忘れではないのかな、中村バイオファーマのお嬢さん」


 振り向かなくともわかる。年若いSのメンバーたちの声とは違う。この冷酷さこそが彼、漆原博士。


「サンプルはちゃんと渡したわ。商談成立。ザ・ゲーム・イズ・オーバー。何の問題もなくてよ?私たちは加奈子を返してもらう。あなた方はPSDの情報がつまったサンプルを手に入れる。元々そういう条件だったでしょう?」

 声は震えてなかったか。悟られはしなかったか。あえて理香子は振り向かなかった。相手の目を見てしまって、それでも冷静でいる自信はなかったから。


「我々を甘く見てもらっては困る。このサンプルだけでは用がなさない。流通してしまっている各社のPSDの差異を統計学的に処理しても、母数の間には有意差 があるという結論が導かれる。何らかのファクターが欠けていると考えられる」

 ごめんなさい、私根っからの文系なの。後ろ向きのまま理香子も冷ややかに答える。相手は少しも動じることなく、言い放った。


「何を隠している?そう訊いておるのだよ、私は」

 途端にあの頭痛が理香子を襲った。耐えきれずに振り向けば、綾也一人だったその空間には、博士を始め、Sのメンバーが揃っていた。

 無機質な表情にどこか普通の人間どもを蔑むような悪意のある視線。そう、綾也もその中の…。

 落ち着いて考えることが来たのもそこまでだった。頭痛が酷くて立っていられない。


「お姉ちゃん!」

 加奈子の叫び声が遠のく。いっそ意識を失ってしまえば記憶は探られずにすむのか、それとも。





 突然廊下に足音が響いた。一人や二人ではない。それも鍛えられた…。

 警察か、公安か。私たちは助かるのか。

 一縷の望みを抱いて振り返った理香子の目に飛び込んできたものは、意外な人物だった。


「…こ、小仲くん!」

 そこには後ろ手をぎゅうとねじ曲げられた格好で、申し訳なさそうな表情を浮かべた小仲がいた。

 彼の手をひねるごつい手の持ち主は、広域指定暴力団青龍会幹部、若頭の加勢。そしてその背後にはずらりと並んだ舎弟たち。


「どういうことなの?」

 つい理香子の声にとげとげしさが加わる。

 小仲はじっと耐えるような瞳で、それを聞いていた。唇を噛み一言も言い訳をせず。


「……誰にも言わないで、何もしないでって言ったのに……」

 微かな哀しげな理香子のつぶやき。

 それに、一瞬だけ顔を上げた小仲は「ボクは!」と叫びかけたが、すぐに下を向いた。


「この荒々しい手口は君らの仕業か。殺人集団プロジェクトS、よくもまあこんなでっち上げを」

 どぎつく彩られた表紙のゴシップ誌を手に、漆原は冷笑した。

 加勢はその挑発に乗らず、一歩後ろに下がった。舎弟どもも道を空ける。

 現れたのは、動きやすいためなのか、身体の線がはっきりと見えるバイク用の真っ赤なレザースーツに身を包んだ、藤城日千佳だった。手に持つのは、ベレッタ製の軽量サブマシンガン。


「どこの世界にも飛び出したもんはおるということでっしゃろな。金さえ積めばいくらでもしゃべる輩はおる。このお嬢さんたちのように正義の味方を気取ってはるお方のお仲間さんでも、ほらこの通り、裏切り者がいるということ……」

 妖艶な笑みを浮かべて、まっすぐSたちにベレッタを向ける。


 そのとき、突然悲痛な声を上げて綾也が頭を抱えた。

 みながハッとしてそちらへと視線を向ける。綾也は酷く辛そうに肩で息をしながら、とぎれとぎれにつぶやいた。


「うら…ぎ…り……もの……。『Judas』…」


 カチリ。


 綾也の中のフォルダが一つ、音を立てて開き始めた。それは深く深く、とても奥深くにしまい込まれていた隠しファイル。

 あまりの衝撃に、綾也は膝から崩れ落ち、息を荒げている。アツシの瞳が野性味を帯びた!


「この中に、隠しファイルがあるよ!ここにあるはずだ!」

 いつも冷静沈着なはずの漆原でさえも、顔色を変えた。

 アツシがかなり乱暴に綾也の脳に蓄えられているグラフィックメモリーのフォルダを、手当たり次第あさり始める。

 彼は苦痛に顔をゆがめる。それでもアツシは攻撃の手をゆるめない。


「あった!でも中身は空っぽだ。綾也は中を見ていない。でも、その情報を持ち出したのは綾也自身だ!」

 Sたちのあわてぶりに手を出すこともためらわれた青龍会は、ハッと我に返ってあたりに散らばった。それぞれに武器を持ち、狙うは殺人集団プロジェクトS。

 当のSのメンバーは、いっこうにそんなものには興味すら示さず、ファイル探しに躍起になっている。


 耐えられるのか、理香子。彼女は必死に悟られまいと自分の記憶を消しにかかった。


 どうか、どうかこちらに意識を向けないで。


 アツシがゆっくりと理香子の方を向く。


 獲物を捕らえた猛禽類の瞳。


 それは決してルカだけのものではない。彼女の背中に冷たいものが通り過ぎる。


「理香子!」

 混乱しきったその場に一人飛び込んできたのは……。





 津雲哲平だった。








「なぜおれに、言わなかった…」

 哲平の言葉は静かだった。あなたに言えばすべてわかってしまう。巻き添えにしてしまう。それが恐かったのだとは、おそらく当の理香子自身でさえ自覚していなかっただろう。

「加奈子は私の大切な妹よ。それにこれは、中村バイオファーマの関わる犯罪…」

 中村バイオのしたことなんぞ、おれのしたことに比べれば。哲平はかろうじてそのセリフを飲み込んだ。

 その代わり聞こえてくるのはたくましげな野太い声。

「敵がでかすぎるんだよ。おまえ一人でやれると思うなよ?自惚れんな、このぺーぺーの新入社員がよ」

 後ろにはいつの間にか遠藤とカメラマンの木谷がいた。おそらく他の連中も、この周りに待機しているに違いない。

「どうして知らせたの?小仲くん。みんなを巻き込みたくなかったから、あなたを信用して話したのに」

 このボケは、手順を打ち合わせたってのに一人で突っ走りやがって、挙げ句の果ては青龍会様にとっつかまった大ボケだよ。呆れたように遠藤が苦笑いする。

 加勢からも突き放された小仲は、腕をさすりながらきっぱりとした口調で理香子に言った。


「理香子ちゃん、いや、中村さん。ボクだって高文社の社員なんだ。週刊春秋の編集部記者で、大して役に立たなくても特集班の一人なんだ。ボクだって、スクープが取れるものなら取りたいよ!津雲さんや先輩たちみたいにさ!」

 小仲は言い慣れない言葉に顔を赤くしながら、そう叫んだ。小仲くん…、理香子が絶句する。

「小仲、大事なときにセリフを間違えるな。中村が心配だから。そう素直に言うもんだ」

 哲平が優しく諭す。

 私たちは何をしているの?こんな戦いの場でこれほど似合わない見当違いな話を延々と続けているの?ばかばかしい。理香子はふっと我に返った。


 そうよ、元はと言えばサンプルを渡すことだった。それで加奈子は帰って来てすべては終わる。私が思い出しさえしなければ、そう、あのことを…。

「馬鹿野郎!それ以上何も考えるな!」

 哲平の罵声が理香子に飛ぶ。ハッとする彼女にアツシがさらに攻撃を加える。頭を抱えてのたうち回る理香子。

 忘れて、忘れて!私の記憶!

 違うことを、そう全く違うことを考えるのよ!例えば?





 青龍会の連中はSのメンバーに向けて銃を乱射していた。しかし、トオルの絶妙なテレポートとルカの攻撃に、Sの誰一人として傷を負う者はいなかった。

 博士を守るようにしながら戦いを挑むかつての子どもらは、もはや世間の目に怯える少年少女ではなかった。


 理香子は必死に耐えていた。両親の顔、優しい祖父の声、思い出せるものはすべて思いだして、あの記憶を流してしまいたい。

 アツシの容赦ない攻撃は続く。理香子が最後にすがりついたのは、哲平の皮肉げな笑い顔。


 哲平さん、助けて…。


 当の哲平は、舎弟どもに阻まれて理香子に近づけないでいた。彼らにとっては哲平も敵の一人。Sを片付けたらおそらく次の標的は彼なのだろう。


「理香子!」

 遠くから叫ぶのが精一杯だった。らちのあかない戦いに業を煮やしたアツシは、理香子に直接襲いかかろうとした。脳に刺激を与えて何としてでも取り出してやる。それはどれだけ苦痛を伴うのか、そのあとのダメージがどの程度なのか。

 いつもシニカルでどこか醒めているアツシが闘争心をむき出すことなどめったにない。それほど彼らも追い詰められていたのだ。

 理香子に近づくアツシへと、日千佳はサブマシンガンを向けた。アツシの意識は理香子にしか向いていないことを、この百戦錬磨の極道女は察したに違いない。

 あちこちで鳴り続く銃声とは違う、軽いマシンガンの音が響く。


「理香子ちゃん!危ない!」


 アツシが身を翻したせいで、無防備な背中を晒していた理香子をかばうかのように、小仲は飛び込んでいった。


 パシュッ!


 あたりに血が飛び散った。

「小仲くん!耕太郎!」

 腕を押さえて小仲はその場に崩れ落ちた。

「大丈夫?ねえ!しっかりして、耕太郎!」

 初めてだね、名前で呼んでくれるなんて…、つぶやいた小仲はそのまま目を閉じる。ようやくたどり着いた哲平が、小仲のネクタイを急いではずして腕を縛り上げる。

「ねえ、どうしよう、哲平さん、耕太郎が、耕太郎が…」





 落ち着け理香子!今、この状況で何ができるか考えろ!叫ぶ哲平の声が遠くなる。理香子の記憶の蓋がゆっくりと開く。状況もセリフもそのままに。






………………


「またそのぬいぐるみ?よほど大事なのね」

 加奈子はクセになったかのように、ぬいぐるみにつけたストラップを無意識に握りしめる。

 赤くて周りが銀色に光るスタイリッシュなデザイン。可愛らしいパーピーとは対照的な…。

「これはお守り。ほら、パーピーのポケットにちょうど入るでしょ?綾也くんが私にってわざわざ買っておいてくれたんだって、哲平さんが…」

 大きさは八センチ×一センチほどの薄い直方体。ホルダータイプで中に何かが入れられるようになっている。何かが……。


………………





 女の子が持ってるぬいぐるみだ!その中にUSBがあるよ!


 叫んだアツシにほんの少しできた隙。日千佳が見逃すはずもなかった。トオルが急いで移動させようとしたその瞬間に、アツシの胸を銃弾が貫いた。

 急いで駆けより彼を抱きとめた綾也に、真っ赤な血しぶきがかかる。

 視界はすべて朱。他には何も見えない。アツシ…とつぶやく綾也に直接彼は言葉を流し込む。


 …は…ん。しくじった。でもいいや。これで、ボクはもう綾也の花畑を見なくても、すむ…ん…だ……。


 黄色い花が舞い飛ぶ映像。それを覆い隠すかのような真っ朱なスクリーン。朱はすべてを、何もかもを血で染めてしまうのか。

 ふっ、とアツシからのメッセージが途絶えた。微笑むような安堵の表情を浮かべた物言わぬアツシ。

 それに反比例するかのように、綾也の顔からすべての感情が消えていった。


「お兄ちゃま、こうやるのよ…」

 ルカは綾也の正面に回ると、ほんの少しばかり背伸びをして銀のフレームに手をかけた。静かにそれをはずしてゆく。綾也の瞳が徐々に朱みを帯び、眼は細められてゆく。


「あなたはリョウヤ、プロジェクトSの五番目のメンバーにして最強の戦士。あなたのPK能力は人類を救うため、正義の戦いのために使われしもの。呼び起こしなさい、あなたの鳥どもを。さあ、ここへ!」

 恐ろしい魔の呪詛を吐き出す見目麗しき幼き巫女。


「トオルは博士を連れて彼女の部屋へ。急いで!USBを見つけ次第こちらへ合流してちょうだい!博士、お願いします。ルカは私と一緒に、この連中を。リョウヤは、リョウヤ?」

 レイナの采配には無駄がなかった。しかしリョウヤにその言葉は届いてはいないようだった。怒りとも違う。すべてを失った殺戮生物兵器。

 轟轟と音を立てて風が舞い始めた。部屋中のすべてのものが、突然起きた不自然な嵐に巻き込まれる。


「おまえに人は殺せない!思い出せ綾也、おれたち仲間と一緒に過ごした時間を!おまえは人間だ、兵器なんかじゃねえ!ちゃんと感情もあれば悲しみも喜びも知っている。人を愛することだってできる。おまえの中には何もかもそろっているんだよ!頼む、思い出してくれ!鳥など呼び出すな、あれはおまえじゃねえ!」

 哲平は必死に綾也へと語りかける。いや叫び続ける。声の限りに。

 青龍会の連中の持つ武器が、すべてへし折られ、うち捨てられる。浮き足だった舎弟どもを加勢は一喝して思いとどまらせようとするが、己の味わった恐怖が蘇ってくるのだろう。

 食いしばった歯のあいだから、もれこぼれる止められようのない言葉。


「バ…ケモノ…めが」


 ……ボクヲバケモノトヨブナ・ボクヨリヨホドオソロシイニンゲンドモメ……


 加勢の一言が引き金となって、嵐はなおもいっそう酷くなった。

 そしてどこからか飛んでくる真っ朱な鳥どもが、綾也の周りを取り囲んだ。何十何百の数えきれない冷たい炎を燃やすそれらは、一つの大きな怪鳥を創りだし、その場のものをすべて燃やし尽くそうとしていた。


 もちろん、その中心には朱い瞳を冷ややかに光らせた綾也。


 ひときわ大きな風が、その場の戦闘要員たちを壁に叩きつけた。遠藤も木谷も機材を身体で守りつつも床にがつんと倒された。よほど酷く打ちつけたのだろう。うめき声があがる。






 哲平は理香子と加奈子を庇うように床に伏せたが、やはりダメージは避けきれなかった。

 彼女たちがさほど怪我することなく意識を失ったのは幸いと言えるだろう。これから何が起こるのか、さすがの哲平ですら考えたくはなかった。彼もしばらくは何も言えず痛みをこらえていた。


 静まりかえった事務所にもう誰も意識のあるヤツはいないだろう、そう哲平は考えていた。頼む藤堂さん、早く間に合ってくれ。


 しかしその中で、さすがと言うべきか、一人の女が立ち上がった。

「コロシが恐くて極道の女がやってやれるかい!うちの人が苦労して大きゅうした青龍会かて、もうしまいや。あんたらと相打ちの覚悟でうちらは今日ここへ来てるんやからな。覚悟しいや!」

 恐ろしい鳥どもにもひるむことなく、綾也の真正面に日千佳は立ちふさがった。口元の血をぬぐい取りながら。

 先程のサブマシンガンなど、とうの昔に吹き飛ばされてしまっている。

 胸のあいだに差し込んでいたコルトを取り出すと、彼女はぴたりと標準を綾也に合わせた。


「待ってくれ、姐さん。それから、頼む。おれの言葉が届くか?綾也」

 哲平は覚悟を決めてゆらりと立ち上がった。

 鳥どもは同じ場所で羽ばたくばかり。

 綾也のそばには戦闘用スーツ姿のレイナ、そしてアンジェリックプリティのあどけない妖魔…ルカ。

 想いは言葉にして言わなければ伝わらない。さもなくばアツシのように辛い思いを重ねるだけ。

 気持ちを言葉に託せるのは理性ある人間だけなのだから。


 わかってくれ、綾也。おまえが人間の心を完全になくしてしまう前に。

 よろめく足で、哲平は日千佳と綾也のあいだに割って入った。

 おれはおまえを取り戻したかった。ごく当たり前の生活を送らせてやりたかった。

 過去形じゃない。それは今からでもできるはず。

 そう信じて、哲平は静かに語り始めた。


 漆原の呪縛からすべてを解き放つために……。








 綾也はそっとアツシを横たえた。いつもの喪にふくす黒い服は、はた目にもわかるほどのおびただしい血に染められていた。

 しかしSのメンバーたちは涙を浮かべることなく、隙さえ見せずにいつでも飛びかかれる戦闘態勢をくずすことはなかった。


 ここは平和裏な日常空間ではない。このわずかなスペースがすでに戦闘の場であることには変わりなかった。そしてここにいる誰もが、ひと皮むけばいつでもその本性を現す現代の戦場を、知り尽くした者ばかりだった。

 そう、戦いはつねに行われている。マスメディアに載らず、一般の幸せな市民が知らずにいるだけ。知らぬ方がどれだけ幸せか。


 哲平が口を開く。思いを抑えて、ささやくように。


「おまえらは……漆原に操られているだけだ。目を覚ませ。おまえたちの大切な力は、こんなことに使われていいはずがねえ」

 綺麗ごとね、レイナが吐き捨てる。

「ならなぜアツシは死ななければならなかったの?テレパスであること、ただそれだけなのにこの女は彼を撃ったわ。何のためらいもなく」

「うちの人を殺したんは、あんたらの方が先や!」

 日千佳の叫び。戦いに生きるしかない女たち。

「もうやめましょうや、姐さん。報復は報復を生むだけだ。現にこうして彼が死んでも親父さんは帰っては来ない」

 だまされたんはうちの人の方や…肩を落としてつぶやく彼女に視線を送ってから、哲平はSの三人に向き直った。


「まだわからねえのか?おまえらは漆原にいいように使われているだけだ。あいつは権力を求めている。その手足、道具、物言わぬ兵器。それでいいのか?」

「博士のことを悪く言うのはやめて!」

 指揮官としてつねに冷静さを心がけてきたレイナが悲痛な声を上げる。誰もが胸を痛めるほどの…。

「あの子が、アツシがラボに来るまでどんな生活をしていたか、あなたにわかる?閉鎖病棟で膝を抱えて、薬漬けの毎日を救い出してくれたのは博士よ!私だってそう!母に無理やり新興宗教の教祖役を押しつけられ、毎日毎日、見たくもない透視をさせられて。それがどんな生活だか理解できるとでも?誰もいなかった、私たちを助けてくれる大人は誰一人いなかった。綾也のことはよく知っているはずでしょう?地下室に閉じこめられて毎日責められ続けて、あの子は外の世界を全く知らずに育ったのよ!それを救い出してくれたのもすべて漆原博士だわ!」

 ルカが驚いてレイナを見やる。彼女がこれほどまでに感情をあらわにするなんて。レイナの瞳からはひとすじの涙さえ。





 その切なさと残酷さに、哲平は胸がつまった。あの悪魔のような男にしかすがることのできなかった子どもたち。 


 そしてそれを利用しようとした、本物の狂気。


「……漆原がおまえらを引き取ったわけは……何だ?決して同情でも保護でも、ましてや父親代わりになどでは絶対にないだろうがよ。現実を見ろ、プロジェクトSのリーダーさんよ。あの男はおまえらを人殺しの道具に仕立てようとした。実際に人を殺させた。それが父親代わりのすることか?自分の可愛い娘や息子を、冷酷に殺人兵器のこまとして使おうとする親がどこにいる?あの男は、おまえらがいなくなったら平気な顔で別の子どもを探し出すだけだ!」

 あなたがそれを言うというの?津雲哲平。レイナがほんの少し冷静さを取り戻す。どうせおれの素性などすべて調べ上げていやがるんだろう。視線がぶつかり合う。

「恐喝に傷害。あなたほどの人が実刑を食らうにはあまりにも軽微な罪状。なぜかしら?」

 レイナが挑戦的に口元をゆがめて微笑む。

「実の親であっても子どもは所有物とばかりこき使う。自分の欲望の標的にする。日常的な虐待を加える。私たちだけじゃない。それはあなたこそがよくわかっていることではなくて?」

 ああそうさ、おれは初犯じゃねえ。哲平が歯を食いしばる。

「そうだよ、高校に入ってすぐアル中の親父を刺した。人を殺すってのはそんなに簡単じゃねえって思い知らされたね。思いきり刺したつもりがたかだか全治二週間。なのにおれが院を出てきた頃には肝硬変であっけなく死んじまってた。暴力の限りを尽くし、おれたちの金をむしり取っていたろくでもない親父がよ。どこに怒りをぶつければいいかわからなかった。だからこそ、このおれが言うんだ。憎しみ合い、殺し合いからは何も生まれない。そのために言葉があるんだよ!」

 そんな状況から彼は自力で有名私大へ行ったというのか。あえて大手を選ばず、反体制を掲げる小出版社に入ったのか。そこへ行き着くまでどれだけの思いを味わったのだろうか。

 綾也の心にわずかなくさびが打ち込まれる。今すぐそのペルソナが割れることはない。しかしなにがしかの変化。


 それを瞬時に察したのか、今度はルカが一歩前に出る。目を半開きにしてあどけなくも妖艶な表情を浮かべる。

「私たちの戦いは正義。生きる意味のない虫けらどもを殺して何が悪いの?そのために救われる人びとがいる。大統領襲撃事件は未遂に終わったけれど、そのおかげであの国の国民はみな民主主義に向かって歩み始めることができたのよ。大義の前には多少の犠牲は厭わない。そうじゃない?」

 その言葉にカッと来て、日千佳がコルトを構え直す。哲平は右手を伸ばして何とかそれを押さえようとした。

 しかし、止めきれない一発がルカの豊かな巻き髪すれすれを横切り、後ろの壁にのめり込んだ。


「…うちの人を、虫けら呼ばわりかいお嬢ちゃん。ええ度胸してはるな」

 あまりの怒りに、日千佳の肩が上下している。姐さん、哲平が静かにいさめる。

「考えたことがあるか、お嬢ちゃん。いや、里美ルカさん。あんたが今まで手にかけてきた人間にもそれぞれの思いがあったんだ。生きたいという強い願いとたくさんの想い出と、大勢の人びととのつながりとが。あんたはいともたやすくそれを断ち切ってしまった。その屈託のない笑顔を浮かべながらな!おまえらが今こうやって仲間を失ったのと同じ悲しみを、みな味わってきているんだ。亡くなった人ばかりじゃねえ、大怪我をして今までの生活を失った人も多い。今でも彼らは苦しんでいる。それでもおまえらは博士の戯れ言を鵜呑みにして、大義の前には多少の犠牲だなどと抜かせるのか!」





 ふわりとルカが浮かび上がる。目が肉食獣の光を帯びる。


 戦うことしか知らぬ最凶の妖女。レイナがそっと片手を挙げる。戦闘の合図。


 ルカの瞳がカッと見開かれ、日千佳はその場から吹き飛ばされた。しかし、壁につく寸前に身を翻すと床を蹴り、そのままルカに向かってゆく。


「無茶だ、姐さん!」


 差し出したコルトはあっけなく弾かれる。すぐさま胸元から取り出すダガーナイフ。


 日千佳は飛び上がったルカのドレスの裾を引きずり下ろすと、思いきり床にたたきつけた。


 獣じみたうなり声を上げるルカ。その顔めがけてナイフを振り下ろす。


 目を見開こうとする瞬間を狙って平手打ちを食らわせる。


「あうっ!」


 思わず顔を両手で押さえて、ルカがのたうち回る。


 そこへ何度もナイフを突き刺そうとするが、ルカは必死でその攻撃をかわそうとし続ける。


 どちらもやめさせようと足を踏み出す哲平の前に、レイナが立ちふさがる。

「私たちは戦うことでしか生きていけないのよ!そうでなければ!」

「石を持って追われる、か?いいかげんあんなペテン師の言う嘘っぱちから自由になれ!」

 大声で叫ぶレイナに負けじと、哲平は声を張り上げた。

「そりゃあ、自分の意志に反して皿が飛べば不自由だろうよ!中には変な目で見るヤツもいるかも知れねえ。だがな、皿が何枚割れようが誰も困りゃしねえ。本人が困るなら紙皿でも使っとけ!テーブルが飛ぶのが嫌なら、何度でもボルトで固定しろ!それで済むことだ。あんたの力だってそうだ。人に見えないものが見えるのが嫌なら、もう少し待てばよかったんだ。あんたが大人になって自分の力で生きてゆけるようになれば、そんなものいくらでも拒否できる!もっと人のために自分の能力を使うこともできる。それはあんた自身が自分で選べたことなんだ!一人ひとりの能力は変わっているだろう、確かに生きづらいだろう。そのための支援だったらこれっぽちも惜しまねえ!もっと世間を信じろ!世の中の人たちを信じてみろよ!普通の人間はちょっとばかり変わったあんたたちを排除したりなんかしねえよ!頼む、信じてくれ!」

「私たちは、バケモノと呼ばれ、蔑まれ、閉じこめられ隠されてきた。今さら何を!」


 レイナの手にはベレッタ。哲平は一度深く沈み込んでから、右脚でそれを払いのける。

 そして彼女の腕をねじり上げる。レイナは哲平の手の甲に思いきり齧り付いた。


「いてっ!」

 普通に噛まれた程度ではすまない、血がにじんでいる。


 はい出ようとする彼女を今度は反対の腕で床に押しつける。


 手首を持って攻撃を塞ごうとする哲平に、身体をねじってレイナは逆に払いのける。


 蹴り上げたレイナの膝が哲平の喉にがつんと当たる。さすがの彼も喉元を押さえて転がった。


「リョウヤ!何をしているの?早く攻撃に加わりなさい!リョウヤ!」

 真っ赤な血を滴らせながら、綾也は立ちつくしていた。鳥どもは行き場を失って、彼の周りを羽ばたき続けるのみ。





「……お、思い出せ綾也、それでも信じてくれた人たちの、ことを…。おまえのすべてを知ってもなお、愛し続けている加奈子ちゃんを……」

「僕は…」

「みすずは、一言だっておまえへの恨み言を言わずに、郷里へと帰って行った。おまえに悪かったと、後悔しつつ…な。谷田貝は、おまえを利用しただけか?本当にそうか?おまえだけは信じられるからと、USBを託したのではないのか?」


 苦しい息の元で、哲平が言葉を絞り出す。

 頼む、どうか届いてくれ。綾也のやわらかい本当の心の奥へ、この言葉たちよ。


 もう哲平にも、それ以上言葉を続けるだけの体力はなかった。レイナの思いがけない攻撃力を防ぐことで精一杯だったのだ。

 おれはテレパスでも何でもねえ。死んじまったSのメンバーのように、心を読むことも思いを黙って伝えることもできない。けれど、この心がおまえに届くのなら。


 哲平は必死に思い浮かべた。

 研究室の気のいい友人たちを。加奈子や理香子の笑顔を。

 出会って築いてきた綾也のごく当たり前で自然な日常生活の情景を。


 伝われ、この思いよ。おまえは人を愛することのできる普通の人間なんだ!





 ふっと、哲平を押さえつけていたレイナの力が消えた。気づくと彼女は苦しさに顔をゆがめ、意識を失っていた。


 ルカも日千佳もまた、同じように倒れている。


 哲平ですら、もはや立ち上がることもできずにいた。


 綾也の周りにいた鳥どもが、一羽、また一羽と消えてゆく。陽炎のように少しずつその姿を淡く周りの景色へと溶かしながら。


 苦しげに顔を上げた哲平が見たのは、そっと階段を一人で上がってゆく綾也の後ろ姿。


「……どこ……行く気……だ、りょう……や…」


 テレパスではないはずの綾也の心の声が、哲平の脳へ直接響く。いや、ほんのわずかのささやき。





 ……ボクハボクデケッチャクヲツケル。


   ボクヒトリテヲヨゴサズニ、ナカマヲミゴロシニシタ。


   ボクニトッテハクシノメイレイハ、ゼッタイダ……





 綾也の朱く燃える瞳に光るものがあったと見えたのは錯覚か。

 遠のく意識の中、哲平は必死に手を伸ばしたが、空を掴むばかりで彼を止めることはできなかった。



(つづく)


北川圭 Copyright© 2009-2010  keikitagawa All Rights Reserved

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