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『秘かなる思慕』

作者: タコアシ

仕事で接客業をしていると、さまざまな客人に出会う。

一度しか出会わない人もいれば、毎日のように出会う人もいる。だが、時折運命の人とも云うべき、特別な存在に遭遇することがある。

そこから、恋人に発展することもあれば、結婚相手になるきっかけになる出会いもある。

だけど、それ以外にも特別な存在になることがある。

それが憧れの存在。恋人や結婚相手とは違う親愛の感情を伴った異性であり、それもまた特別な存在なのだ。

あなたに出逢って

かれこれ二年が経ちました


ずっと隠していたけれど

最近特に想うのです


時折来るあなたのことを


一度考え出したなら

次々とあなたのことが

浮かんできて

とてもじっとなんか

していられない


それくらいわたしは

あなたのことが気になります


恋人というよりは憧れの人

恋人よりもほんの少しだけ

特別な存在


話が出来るだけでいい

顔が見れるだけでいい

ほんの少しでいいから

傍にいたい


恋人になりたいというよりは

あなたの秘かなファンになりたい


来る時はいつも一人

誰かと一緒のこともなければ

恋人がいるような

素振りも見せない


怒ったり機嫌の悪そうな

表情も見せない

どこかの店員さんなのか

黒い制服で来ることもあれば

私服で来ることもある


控えめながらもお洒落で

物静かなあなたを見る度に

強く心惹かれてしまうのです


どこの人なのかは分からない

けれども来るのは一日に一度きり

けれどもいつ来るのか分からない


店を出て行くあなたの後ろ姿を

目で追ってしまうわたしがいて

入り口でふと振り返るあなたがいる


秘かなる思慕


あなたはわたしの想いに

どれだけ気付いているのでしょうか


店員と客の立場が

あなたと接する唯一の時間


それはあまりにも短い一瞬で

接客出来なかった日は

落ち込んでしまうくらい


だけどもこれは恋ではない

あなたはわたしの

永遠の憧れなのだから


そんなあなたが

店に来なくなってから

二ヶ月ほどが経った昨日


わたしはあなたに来て欲しいと

心でふと思ったのです


そしたらあなたが突然やってきた

一時間もしないうちに

わたしの元へやってきた


まるでわたしの願いを

聞いていたかのように

バレンタイデーに

あなたが店にやって来た


そしてほんの少しだけ

笑顔を見せて帰って行った


だから昨日わたしは

一日中幸せだった


わたしの憧れのあなた

これからもあなたが来る日を

ずっと待ち続けるのでしょうか


そしていつかは

あなたと逢うことも

出来なくなるのでしょうか


それを想うとわたしは・・・


     <了>


(注)この作品はタコアシのものです。

  不正な転載や盗作、並びに違法行為に

  なることは固く禁じさせて頂きます。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

ご意見、ご感想等ございましたら、

よろしくお願い申し上げます。

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