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~麻薬戦争と腐った化け物~ 2

爆発音が林に響いていたのは僕が目蓋を閉じてから2時間ほどが経過したころ。

唐突な警報により僕らは起こされた、ボロ宿舎で唯一新しい備品の警報はその破壊的な音量で僕らを寒空の下へと追い出した。

先ほどより冷えた外は僕の頬を引きつらせた、白い息を顔にかけるがゴワゴワと上手く表情を作れない。林の中心部あたりから月へとゆらりゆらり、黒々とした煙が続いている。消火斑がくるまでに原因の確認と報告が下っ端の役目だ、それは死んでもかまわないから未知の物体にも体当たりさせようという上の考えが見える。


室長を先頭に僕らは進む、道など無い雑草や木を掻き分けながら目指す先は月が教えてくれる。

ふと何かの匂いを感じた。

明らかに生物の臭い、完璧なる腐乱臭。三日洗ってない室長の靴下より臭い。目が滲みてくる。


「隊員とまれ!」

小隊6人は足を止めた。目の前にはクランツの禿頭が帽子に隠れきっていない場面。ふと横を向くと・・・。


目が合った。


呼吸のタイミングが合った。



そこには、顔だけで僕の身長ぐらいあるドロドロの巨人がいた。


ドスッ、と僕は拳銃を抜きながら尻餅をついた。目が合ったまま僕は呼吸を止めた。

食われるのか!?

想像したよりも僕の身体は臆病だった、足がすくんで立てやしない・・・。

実践なんてしたことないし、ましてや顔だけで僕の身長を上回る化け物なんてイメージもしなかったし、それでも16年間で死にそうな思いになったことも何度かあって、でも死んでないのは僕の力な訳で。言い訳が走馬灯のように流れる僕の脳みそは、腐った材料と混ざり沸点ギリギリを彷徨う。

その化け物に口はなかった。

その化け物に目はなかった。

その化け物が生きているのかどうかの判断すら僕には難しかった。

とゆうか逃げたかった。


そんな中で室長のの低い笑い声だけが僕に届いた。

「おいおい、アリア君。何をしているんだい。」

あきらかに馬鹿にした声で僕の斜め上から見下ろしている、その声に怯えはない。

なんで、と口に出そうとしたが僕の口は空気を吐き出すことしかできずパクパクと開閉を繰り返す。すると室長もとうとう呆れて口調に怒りがはいってきた。

「状況を報告したまえ、アリア一般兵。」

口に出すより最初に指をさした、指の先には化け物がいる。


「は。」

鼻で笑われた。

僕の指の先には変わらず化け物の顔があった。つまり室長には見えていないんだ、匂いにも気が付いていない。


化け物が笑った気がした。

正確には顔のパーツなんてないから正しく笑ったのかどうかなんて分からない、でもたしかに笑った気がした。

でか過ぎて気が付かなかった、こいつの顔は一つじゃない。そう気が付いた時には周りは20もの腐った塊が点在していた、しかも僕らが今まで確認していたのは月じゃない、それは丁度こいつの真上の青く光る発光体だ。

馬鹿デカイじゃねぇか。こんな林なんて飲み込んでいる。


なんで僕にだけわかるんだ、周りの奴も気が付いていない様子だ。

逃げなくては。僕が言った。

また逃げるの。僕に言った。

しょうがないじゃないか。僕は答えた。

逃げる意外に考えないんだね。僕は黙った。


ぐちゃっ。

クランツが地面と水平にふっとんだ。手と足はありえない角度へと捻じ曲がり、真っ赤な身体から恐ろしく白い骨が出ていた。それ以外のモノも出ていたが、それ以上は見ていない。僕は隊員達に背中を向けて走り出していたからだ。逃げたのだ。

室長が何か言った、聞いちゃいなかった。

目の前から巨大な腐った塊が飛んできた、僕は真横に飛び出した。

そこから僕の意識はブラックアウトした・・・。

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