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序章【青春狂騒編】第二話「異界の悪霊」


高台にある見晴らしの良い公園から

一人の男に鋭く眼光を向ける少女がいた


「目標を特定できた…これから誘導するから安全な場所を教えて」


耳の裏に指を当て

何やらテレパシーのような不思議な能力で会話をしている


『了解です!………目標の位置から南に300m進んだ先に廃墟のビルが確認できます!私の能力も発動しておきますよ』

「ありがとう先生!一通り片付いたら後でおじいちゃんに言っといてあげるから!」

『そんなことはいいんです…どうか無理だけはしないでください…お嬢様』

「その呼び方はやめてっていつも言ってるでしょ?…大丈夫!ダメだと思ったらすぐに逃げるから!」


会話を終わらせると

少女は全力で対象の男に向かって走り出した


家屋の柵を乗り越え屋根から屋根へ飛び移り

最短距離で男の元に向かう少女のことを

周囲の人間はなぜか気付く様子は無かった



不審な男に接近すると香水のような物を取り出し全身に振りかけた

すると男は血相を変え血に飢えた獣のように少女に足を向ける


それを確認した少女は指定された廃ビルへ急ぐ


汗を拭いながら

追ってきているの男を一瞥し廃ビルへと入る


長い間放置されていたであろう机や椅子

散乱し錆びついた工具を掻き分け

少し広い場所に出ると少女は迎撃態勢に入った


(誘導は成功!あとは…)

「かかってこいやっ‼︎」

自分を鼓舞しているような声高らかな宣言のあと

少女が呪文のような言葉を発した

『純真たる光の精よ…堕落した邪な霊魂から救済を…解放パージ‼︎』


すると不審な男の背中から黒い影が

悲鳴にも似た低いうめき声をあげながら煙のように立ちのぼった


(よし!このまま引き剥がす!)


その影から見える緋色の眼が彼女の姿を捉えた瞬間

「…グオオおおおおぉぉ‼︎‼︎」と

けたたましい唸り声をあげビル全体を揺らすような凄まじい衝撃波を発した


その衝撃に当てられた彼女は数メートル後方の壁へ吹き飛ばされてしまう


その衝撃にたじろぐ少女

(くっ‼︎…やっぱり大物…だけどここで止めなきゃ被害が拡大する!…私がやるんだ‼︎)


負傷した腕を押さえ疼くまりながら覚悟を決めた彼女の元に予期せぬ来訪者が現れた


「いた!…大丈夫か⁈」


その声に驚き呼びかけられた方向を見ると

同い年ぐらいの青年が息を切らして佇んでいた


「…え⁈あなた誰⁈なんでここにいるの⁈」

「不審者に付き纏われて逃げてたから事件かな…と思って助けにきたんだ」

「…というかあなた私が見えるの⁈」

「…はぁ?何言ってんだお前…ってか怪我してるじゃねぇか」


少女の腕に手を伸ばそうとしたその時

青年は部屋の奥からのただならぬ殺気に気付き

視線をそちらへ移す

「…なんだあのバケモノ⁈」


その様子に更に驚嘆する少女

(悪霊も認識してる⁈…この廃墟にも私にも先生の隠蔽の能力は発動してる筈なのに…なんで⁈…でも今はそんなことより‼︎)


「逃げて‼︎」

そう彼女が叫ぶと同時に

雄叫びと共に黒い影が膨れ上がり先程よりも重い衝撃波を放った


大きな衝撃音がビル全体に鳴り響く


吹き飛ばされた二人だが

運良く解体工事用の落下防止用のネットに絡まり

床の開口から下の階降りたことで難を逃れた


飛散した瓦礫と土埃に紛れて身を隠し状況を整理しようとする


「あの黒い影は人の魂に寄生して心を腐敗させる異界の悪霊…」


理解しようと努力している青年を横目に話を続ける


「本来この世界には存在してはいけないはずの悪霊がなぜか最近この地域周辺に確認されてる…その原因の調査と悪霊の浄化をするために私はこことは違う世界からきたの…信じられないと思うけど」

「…その話が本当だとして、これからどうすんだ?」

「君は逃げて…私は悪霊を浄化して取り憑かれた人を助ける」

「怪我してる女の子置いてトンズラしろって⁈…それは無理だな」

「あのね!異界に住む人間は脳の一部が発達していて超常の力を使えるのっ!その力が無い君達じゃ、あの男の人のように取り憑かれて正気を失っちゃう‼︎…だから!」


話を遮るように

不審な男と取り憑いた悪霊が咆哮とともに突進してくる


『グオォォオオおお‼︎』


(…見つかった⁈)


攻撃を予測していち早く反応した少女の指示で間一髪それを避ける二人

瓦礫に突っ込んだ悪霊は身動きできずに面食らっていた


「…つまり!あの黒いモヤモヤをぶっ飛ばせばいいんだな⁈上等‼︎」

「ちょっと!私の話聞いてなかったの⁈」

「聞いてたよ!男の方を取り押さえりゃ悪霊とやらも動きが鈍くなるだろ⁈」

(確かに宿主を押えれば悪霊の行動を制限できるけど…)

「君自身の体と心が腐食しかねない!」

「"君"じゃねぇタツキだ!檜葉柱ひばしら 辰樹たつき!心配すんな!そうなる前にぶっ飛ばしゃいい!…それにお前にならできるんだろ⁈」

「"お前"じゃない…サリアよ…サリア・グラデス・ジョウンア…」

「へへっ!よっしゃ!頼んだぜサリア‼︎‼︎」


瓦礫を押し退けた悪霊と二人が対峙する

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