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第2章(改)~聞いた、向かった、勝った~

 9月2日(火)は実力テストを受けた。そして部活動が再開。3日(水)は通常授業が開始された。ここまで良くも悪くもトラブルなく学校行事が進んできた。サンガンピュールは町を守るスーパーヒロインであると同時に、勉学や部活(卓球部)に忙しい女子中学生・・・という生活が再び始まった。だがホッとする時間帯は束の間だった。

 3日の夜8時前のこと。サンガンピュールはKの帰宅を待っていた。Kは毎日、土浦から東京の原宿まで遠距離通勤をしている。片道だけでも1時間30分はかかる。Kは以前、「茨城県内にある支店へ転勤できないかどうか話をしてみる」と話していたが、それは果たしてどうなったのだろうか。待ちくたびれていた様子のサンガンピュールだったが、その時、彼女の携帯電話に緊急の連絡が入った。着信からすると市長室だ。

 「はい、サンガンピュールです」

 「もしもし、サンガンピュールさんですか。こんな夜遅くにごめんなさい」

 「あ・・・はい。それで、悪人が出たんですか!?」

 「うん、そうだ」

 どうやら、桜川沿いにある公園に10人前後の不良の若者がたむろしていて、近所の住民がおびえているらしい。彼らはナイフなどといった凶器を隠し持っている可能性があり、危険だ。そのため、彼らを撃退するのにサンガンピュールの力が必要になったというわけだ。彼女はそれまでのラフな格好から急いで茶色の戦闘服に着替え、ライトセイバーと拳銃を用意した。夜遅い時間帯だが、出動するしかなかった。

 千束町の自宅から南西へ約400メートル。目的地の公園についた。確かに10人前後の若者がたむろしていた。全員が男で、それも20歳前後。タンクトップとジーンズというお揃いの服であるが、近所の人からは不気味がられている。

 「ちょっとあんた達!!」

 サンガンピュールは威勢よく言い放った。

 「・・・ああん?なんだ、お前」

 不良グループのリーダー格が視線を彼女に向けた。

 「あんた達から『お前』呼ばわりされる筋合いは無いわよ!」

 「俺たちに何の用だい?」

 「あんた達・・・今、何時だと思ってるの?」

 「はぁ?・・・ククククク・・・フハハハハハハハ・・・」

 不良グループのほぼ全員が一斉に笑い出した。

 「そっくりそのままセリフを返すぜ、お嬢ちゃん!」

 「そうそう、良い子はもう寝る時間ですよ~~だ!」

 「そうそう、ママと一緒にお休みしましょうね~~~」

 赤ちゃん扱いされたことに、サンガンピュールは癪にさわったと感じた。彼女が反論する。

 「とにかく、町の人達から『うるさい』って苦情があったの!あんた達、何もしていないようなプー太郎よりも、頑張って働いている人達が、大勢いるんだからっ!」

 勢いよく強い言葉を不良グループにぶつけまくる。

 「その『うるさい』って苦情を言ったのは、どこのどいつだぁ?説明しろよ」

 盲点を突いた質問だ。だがサンガンピュールは答えに窮した。

 「くっ・・・・・・。市長さんからよ」

 市長室から電話があったのは事実だが、苦し紛れの返事にしか聞こえなかった。

 「市長がぁ?・・・おいおい、冗談もいい加減にしろよ」

 不良グループからは再び彼女への嘲笑が聞こえてきた。不良グループの一員が

 「おい、お前ら! 俺たち、邪魔する奴はたとえ女・子どもであっても容赦しねえよな?」

 「そうだ、そうだ!」

 他のメンバーが次々と同意する。

 「くっ・・・これで交渉決裂ね」

 「そうだな」

 10人前後の不良グループの中で最前線に立っている男がそう言った。そして次の瞬間、彼は、猛ダッシュした。


 戦闘の始まりだ。そして彼を追いかけるかのように後の仲間も次々と彼女に襲い掛かってきた。サンガンピュールは逃げるように公園の後方へ猛ダッシュした後、公園と道路を隔てる柵を軽々と飛び越えた。その後、柵の所で待機した。そして追いかけてきた不良グループの一人が柵に足をかけた時、彼女は彼の右すねを強力にキックした。彼は攻撃を受けた反動で姿勢を崩し、顔を地面に思いっきりぶつけてしまった。

 「うわああああっ!」

 彼女は道路に一旦出て、公園の外周を走り回った。他の不良メンバーが後を追った。彼女は一周して講演の遊具の場所にきた。不良グループの中には足技で攻撃する者もいれば、50cmくらいのステンレスの金属棒で振り回す者もいた。彼女は圧倒的に数的不利の中で攻撃をかわしていった。それもこれも、1学期に卓球部に入部したおかげで、動体視力が鍛えられたおかげだ。

 そして遊具の特徴を生かしていきながら、彼女はキックしたり、相手に足をひっかけたりして攻撃していった。その際、メンバーの一人が金属棒を落とした。彼女はそれを奪って自分の武器にした。そしてさながら、サンガンピュールと不良グループによるチャンバラが始まった。本来ならばサンガンピュールはライトセイバーを使うべきだっただろうが、無益な殺しはしないという誓いを忘れていなかった。ライトセイバーよりも殺傷能力が極めて低い金属棒だが、彼女はまるで最初から自分の武器であるかのように振り回していった。

 カン、カン、カン、カン、カン!

 甲高い金属音が夜の公園にこだまする。サンガンピュールは次々と金属棒を相手の腹や頭、腰にあてていき、戦闘不能状態にしていった。当初は10人前後だった相手が、次第にあと7人、あと5人、あと3人と減っていった。

 そしてあと1人。最後の1人はあのリーダー格の男だ。彼は彼女に向けて猛ダッシュした後、ドロップキックを加えた。サンガンピュールは強い衝撃で後ろに倒れこみ、尻餅をついた。リーダー格はなおも金属棒を持って攻撃してくる。だがサンガンピュールはリーダー格の顎を思いっきりパンチした。

 「うおあっ!!」

 リーダー格は痛みをこらえているものの、相当な痛みを感じている。サンガンピュールの左腕には血が流れていた。

 「うううっ・・・」

 リーダー格はうめき声を挙げたあと、カクッと倒れた。この姿を見届けた後、サンガンピュールは携帯電話を取り出した。

 「・・・もしもし、市長さん?」

 電話の相手が出た。

 「今、不良グループとやらを撃退しました。・・・・・・はい、みんな倒れこんでいます。・・・・・・救急車とパトカーが来る?・・・分かりました」

 報告がひとまず終わった。町を守る魔法少女・サンガンピュールの仕事は、悪い奴を倒れて終わり、ではないのだ。警察の到着を待つ。事情説明をする。そして不良グループの連行を見届ける。どれも「適切な法執行」のためには必要な手順だ。


 結局、自宅に戻ったのが夜の9時だった。

 「ただいま~~」

 疲れ切った様子のサンガンピュールだった。そこへ

 「おかえり、遅かったじゃん!」

 いつの間にかKが帰宅していた。

 「・・・血だらけじゃん!ちょっとこっちに来て!」

 先ほど、公園で止血の応急処置をしたはずなのに、また血が流れていた。Kが浴室から急いでタオルを用意し、再び止血した。

 「・・・ごめんね、おじさん」

 「何を謝ることがあるの?サンガンピュールは、与えられた仕事をこなしただけだよ。偉いよ」

 Kは養父として、養子の活動をほめた。

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