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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

百合の花

キスにときめく

作者: 夜桜てる
掲載日:2022/01/09

「……ねえ、キスしていい?」


 放課後の廊下で私にそう言ったのは、部活に行くため一緒に歩いている同級生、白川(ひさぎ)

 ショートヘアで背が高くて目鼻立ちも整っている。イケメンな、女の子だ。


「えっ?」


 言われたことを反芻しつつも、理解が追いつかず短く聞き返す。


「だから、キス。してもいい?」


 きす。鱚。キス。……うん。どうやら聞き間違いではなかったらしい。


「えっと……」


 答えに窮しつつも歩みを進めていると、急に楸ちゃんは距離を詰めてきた。

 そして私の進路を、彼女の白い腕が塞いだ。思わず後退しようとすれば、もう片方の腕がそれも遮る。


 何をするのか、と彼女の方を向くと両の視線が重なり合った。


「……っ!!」


 ――近い


 綺麗な睫毛、その一本一本までよく見えるほどの距離。生暖かい吐息が触れ、爽やかな香りが鼻をくすぐった。


 後退りをしてみれば、背中が壁に当たった。両側は彼女の細腕で塞がれたまま。


「……いい? するよ?」


 綺麗な声で、耳元にそう囁かれた。思わず「うん」と頷きそうになる。でも。


「……ちょっと、ごめん。今は、ダメかも」


 顔を逸らしながらそう答える。

 ……ファーストキスもまだなのだ。唇は守らなければ。


「そう。わかった」

「うん」


 分かってくれた、と安堵したのも束の間。


 ――僅かに濡れた柔らかな感触が、頬に触れた。


「えっ」

「唇は我慢してあげる。でも、また気が変わったら、言って」


 それだけ言うと楸さんは、先に行くねと部室の方へ走っていった。

 私は一人、ただ呆然と立ち尽くして、その背中を見送る。


 ……早くなった鼓動は、暫く収まりそうになかった。

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