episode01
今でもあの時の事を思い出してしまう事がある。
あんな思いをするなら…
俺は恋愛なんかしないーー。
「おはようございまーす。」
眠気を飛ばすように大きな声で大きなリビングに入っていった。
「あれ?また綾さんいないの?」
「いつものことだろ。カズが起こしてきてくれ。」
「おい、また俺かよ。たまにはシュウが起こしてきてくれよ。」
このチャラチャラしているのは青柳修也。こいつとは高校に入学してから出会ったが、 一年の最初の辺りで席が近くて同じ寮であったため、自然と仲良くなり、今では校内で一番仲の良い友達だ。
「アホか、俺がいくと前みたくウザがられて追い出されるだろ。お前はあの"持病"持ちだから感覚的には出来のいい弟みたいなもんだし、いつも追い出されないだろ。」
「まぁそうなんだよな。秋子さーん!もうちょっと朝ご飯待ってくださーい!」
「はいよー!早くしないと新学年早々遅刻するよー!」
このやたらと声がでかいのはこの寮の大家である秋子さんだ。基本晩御飯は寮生交代で作っているが、この人は料理が好きらしいので朝ご飯は毎日作ってくれている。
俺は綾さんを起こすために2階の1番端の部屋の前まできた。
「綾さーん!早くしないと学校遅刻しますよー!」
「…」
まぁもちろんこんな事では綾さんが起きるはずもない。
「入りますよー!」
“ガチャ”
ドアを開けると目の前には汚部屋が姿を現した。
「また散らかってるよ…。また掃除しないとじゃないか」
その汚部屋の真ん中で綾さんは寝ていた。こんなに気持ちよさそうに寝ているのを見るとなかなか起こしづらいがこうなった綾さんはほんとに起きないのであれをする事にした。
「よし。いくか。」
そう言って俺は綾さんの耳元にスマホを近づけて再生ボタンを押した。
〝ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ〟
「やめろおぉぉぉぉおおお!!!」
「やっと起きましたか。」
綾さんが起きたのを確認して俺はその音を止めた。
「ふぁーあ、カズくんさぁ、その起こし方もうちょっと何とかならないかなぁぁ。」
「綾さんが起きない限りこれ続けますよ。」
「そんなぁぁぁ。」
この人は一条綾先輩で今年から三年生になる。顔が綺麗なので学校では男子に一目置かれているが、寮ではいつもこんな感じのグータラ星人だ。
「早くしないと朝ご飯抜きになりますよー!」
「はぁーい。カズくんはこんな美人の先輩の部屋に上がりこんでるのに何にもないの?」
「はぁ、だから俺はそーゆーのは…。先輩もそれが分かってるから俺を追い出さないんでしょ。」
「恋愛恐怖症だっけ?もったいないなぁ。顔もいい方だし、成績は常に上位で運動もできる。普通だったら彼女がいてもおかしくないのにねぇ。」
この人の言うように県内では進学校と言われている私立青葉高校で成績は常にトップ5には入っているし、運動もできる方だとは思う。
あの出来事がなければ俺は恋愛というものに興味を持っていたのだろうかーー。
そんな考えが頭をよぎったが、すぐにそれは消えた。
「恋愛恐怖症なので。」
まぁ自分自身今のこの平凡な生活に不満もないし、むしろありがたいとさえ感じている。俺はこれでいいのだ。
そうして4人で朝ご飯を済ませると綾さんは先に学校へ行き、俺とシュウはいつものように二人で学校へ向かった。
この青葉寮も昔は10数名が一緒に暮らしていたそうだが、今はもうボロくなり寮生も綾さんとシュウと俺、あと吹奏楽の朝練で朝が早い二年生の女子が一人の計四人で、それを秋子さんが面倒みるということになっている。秋子さんによると高校で寮に入る人なんて少数派だから人数が少ないのは仕方ないらしい。
寮ではなくもはやシェアハウス状態となっているのだ。
俺とシュウは学校へ着きそれぞれの教室へと別れた。
教室へ着くと同時に朝のHRが始まった。
「カズくん、おはよ。遅刻ギリギリだったね笑。」
「おぉ、アオか。おはよ。遅刻は綾さんが原因だよ笑。」
「そうなんだ笑。あの人らしいね笑。あとまた同じクラスよろしくね。」
そう言って微笑んだこの子は三宮葵。明るく誰にでも優しく美人なのでクラスでは人気者だ。ちなみにアオとは小学校の頃からの幼馴染でかれこれ10年くらいの付き合いだ。俺は家の事情で元いた家から寮に入ったが、彼女はその近所に住んでいる。
ちなみに俺の通っている青葉高校はクラス替えなどは春休みの間に公開されるので一年生の頃同様、アオと同じクラスな事に今更大した驚きもない。
その後もアオと話していると始業式が始まった。
うちの学校は私立ということもあり、コンピューターを利用する事が多く、始業式も前のモニターで行われる。
「…。じゃあ明日から通常の授業に戻るから忘れずにな!」
気がつくと始業式はとっくに終わっており、先生の話が始まっていた。始業式開始早々に睡魔に襲われてしまったのだ。つくづく一番後ろの席で良かったと思う。
「明日からうちのクラスに転校生がくるので紹介する事になると思うが、先にそれだけ伝えておく。」
『えっ、女子?男子?』
『こーゆーのは二次元だと美少女だったりするんだよなぁ。』
『楽しみだな!』
なにやらクラスのみんなが騒いでいるが俺はそんな事に興味が無く、転校生の話は耳から逆の耳へと通り過ぎていった。
「伝える事は全て伝えたし、今日はもう終わりだから早く帰れよー。」
やっと終わったか。今日はバイトもないし帰って勉強でもするか。そう心の中で思い、テニス部に所属しているため帰りが遅くなるシュウを置いて一人で帰ることにした。
「おい、聞いてないぞ…。」
寮に着くと何やら寮の前に引っ越し用のトラックがあり、若いお兄さん達が何やら家具を運び込んでいた。
「新しい寮生かな…。秋子さんそんな事一切言ってなかったけどあの人抜けてるからなぁ…。どんな人が来るんだろ。」
そう思って俺は寮に足を踏み入れるとそこに立っていたのはどこか雰囲気があの子に似ている…。
髪の長い黒髪の美少女だった。
この日から俺の平凡な日常が変わっていくーー。
皆さんどうもrintoです!episode00に続き、見てくださった読者の皆さんありがとうございます!!
次のepisode02からは波乱の予感ですね!
何やらepisode01は説明が多くなってしまい反省です…。
またまだ精進していきますのでこれからもよろしくお願いします!!