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8次の標的はあなたです

 犯人は捕まることなく、次々と不老不死の女性たちを殺害されていく。警察は当初、女性の身体に付着した男が犯人であると考え、DNA鑑定をして男の身元を特定した。男はすぐに見つかったが、自分は頼まれたから女性をレイプしたと証言した。


 殺害された不老不死の女性の遺体には必ず、男の体液が付着していた。男の体液の持ち主は毎回違っていた。捕まった男たちは皆、一様に《《彼女》》に頼まれたから、不老不死の女性をレイプして殺害したと言い始める。とはいえ、男たちは《《彼女》》の素性を明らかにしようとはしなかった。指示を出した《《彼女》》のことになると、途端に口を閉ざして話そうとしない。《《彼女》》は男たちの弱みでも握っているのだろうか。


 女性の遺体に付着した体液の男が毎回変わるが、殺害方法は一貫して、刃物を腹部に刺すという方法、遺体のそばにメッセージカードが置かれていることから、直接殺害に関与した男の他に、殺害計画を企てた人物がいるということが分かった。おそらく、《《彼女》》と呼ばれる存在が今回の事件の首謀者だろう。


 男たちが話す《《彼女》》は依然として捕まっていない。



「私が狙われるのも時間の問題というわけか」


 記事を読み終えた実乃梨は、空になった弁当箱を机のすみに寄せて、腕を机に乗せて頬杖をつく。不老不死連続殺人事件の首謀者は、不老不死の女性に対して、恨みでもあるのだろうか。実乃梨たちは世間に迷惑をかけてはいない。静かにひっそりと不老不死だということがばれないように生きている人間が多数派だ。恨みを買う要素などないはずだ。


 事件の詳細を読むと、殺害された女性のもとには一週間から数日前にかけて、不審な電話があるらしい。そうなると、今朝の実乃梨宛の不審な電話は、犯人から、次はあなたの番ですよ、という予告電話の可能性が高い。実乃梨は、犯人に目をつけられてしまったのだ。


「お疲れさまです。お先に失礼します」


 朝の電話と昼間に記事のせいで、実乃梨は午後からの仕事に集中することができず、細かいミスを連発してしまい、上司や榎木に怒られてしまった。しかし、何とか定時に仕事を終えて会社を出る。


 玄関の郵便受けを確認すると、一通の不審な郵便物が入っていた。黒い封筒に差出人の名前はなく、封筒の表に白いペンで『栄枝実乃梨』とフルネームで書かれているだけだった。


「はああああ」


 今日は嫌なことが続いている。そう思うも、自分ではどうしようもないことで、実乃梨はカギを開けて家に入り、靴を脱いでベッドまで直行する。そして服も着替えずにベッドにダイブした。


「いったい、いつまでこんな生活を続けていれば……」


 いつもは口にすることのない、自分の体質についての愚痴が口から出てしまう。先日百五十歳の誕生日を迎え、余計に自分の体質の異常さが心にしみてくる。


 しかし、いつまでも服も着替えずベッドで倒れているわけにもいかない。仕方なく仕事着から部屋着に着替え、夕食の準備に取り掛かる。今の生活をうだうだいう前に、先に腹を満たそうと考えた。



「いただきます」


 今日の夕食は、肉じゃがと焼き魚となった。料理をしている最中は余計なことを考えずに済んだ。しかし、いざ料理が完成して机に並べると、自分が一人暮らしで孤独なことをまざまざと見せつけられる。


 目の前には長年一人暮らしで培われた料理スキルを駆使したおいしそうな料理が並んでいる。食事は大切だと食器にもこだわっていた。それなのに、今日は一向に食欲がわかなかった。




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