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11不老不死なんてありえない

 榎木の話をこれ以上聞きたくなくて、実乃梨は無意識に榎木に詰め寄り、一つの質問を口にした。被害者の女性が不老不死で、自分たちの取引先の人間だからと言って、そこまで話題にするものだろうか。彼女が何か罪を犯して、人様に迷惑をかけたとでも言うのだろうか。彼女だって、好きで不老不死の体質を手に入れたわけではないかもしれないのに。


 つい、被害者の彼女に自分のことを重ねてしまう。


「栄枝さんが、ですか?今まで一緒に栄枝さんと仕事をしてきましたが、気付きませんでした。あなたも不老不死体質ということですか?」


「ええと、それは」


 榎木の言葉に実乃梨は返答に困ってしまう。このタイミングでこの問いかけは、自分が不老不死だと言っているようなものだ。どう答えたらごまかせるか考えている間に、榎木が自分の不老不死に対する主張を述べ始める。


「まったく、冗談でもそんな質問はしない方がいいですよ。栄枝さんが不老不死?まあ、栄枝さんが不老不死だとして、不老不死歴五年ほどで、実年齢三十五くらい。実年齢とほとんど変わらないくらいですよね。不老不死体質が騒がれてずいぶん経ちますけど、実際にそんな人が身近に何人もいるはずないです!もしそうだとしたら、つまり、それだけ自分の周りに《《処女》》がいるってことでしょう?いい年こいて気持ち悪い」


「気持ち悪い……」


「そうです!だって、せっかく女性に生まれたのに、男とヤラないなんて損だと思いません?よほど外見や中身がやばい人以外なら、男なんて簡単に作れる。だって、人間の半分が男なんですよ。それなのに、ヤラずに不老不死なんてありえなくないですか?」




「何を話しているの?不老不死がありえないとか聞こえたけど?」


 不老不死に対する主張を熱く語っていた榎木は、二人で話すには声を荒げすぎていた。それを目ざとく聞きつけた、事務職員の年配の女性が実乃梨たちに声をかけてきた。


「栄枝さんが、自分が不老不死だなんて言いだすので、つい不老不死について熱く語ってしまいました」


「わかるわ、その気持ち。自分のことを軽く不老不死だという若い子がいるのよね。そんなことを言うのはやめてほしいわ。そんな力があるのなら、私たちおばさんにも分けて欲しいくらいよ。でも、その条件で《《アレ》》を我慢するのは無理ね」


「ですよね。さすが人生の先輩!」


『アハハハハ』


 二人が意気投合して話が熱中しているすきに、実乃梨は自分の席に着き、仕事を始めることにした。机の上に置かれた電話機のディスプレイで時刻を確認すると、始業時間はとうに過ぎている。


「榎木さん、先輩。もう始業時間を過ぎていますよ。仕事を始めた方がいいのでは?」


 話に夢中になっているのは、榎木たちだけではなかった。今日の事務所は異様な雰囲気に包まれている。どこか興奮した様子で話に熱中している社員があちこちで見られた。しかし、社内のあちこちで交わされる会話のほとんどは、《《不老不死》》に関するもので、当事者である実乃梨にとって耳の痛い話である。


 とりあえず、自分の近くで話している二人には仕事をしてもらおう。榎木たちに現在時刻を示して、仕事をするよう指摘する。彼女たちも今の時刻を確認して、さすがに仕事をしなければと思ったのか、自分の席について仕事に取り組み始めた。それを見た他の社員も、慌てて席につき仕事を開始した。



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