表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/23

去年の話だ。


水野さん(仮名)は、癌で入院していた。発見が早かったので抗癌剤の点滴で治療を進めようという話になったが、経過が思わしくない。


彼は四人部屋の病室にいたくなくなると、院内禁煙になり、もはや誰も使っていない元喫煙室へと向かい、そこの閉め切られた大きな窓から、街並みと日差しを眺めるのが日課になったそうだ。


そんなある日のことだった。夕焼け雲をぼんやり眺めていると、細長い先端にポッカリと大きく穴が空いた雲の、その穴に夕陽が入り込んで、まるで何か、巨大な眼光を光らせた生き物のように見えたそうだ。


とっさに彼は今年は辰年だったと思い出し、あれは龍じゃないかと祈りを捧げた。するとその夕焼け雲はチカチカと夕陽を光らせて答えてくれたようだったと水野さんは言っていた。


その後、がん細胞は小さくなり始め、今では彼は退院して、社会復帰している。

「病は気から。ってあると思いました。……もちろん必要な治療を受けた上で、治るって自分で本気で思うことも大事なんだなって」

彼は言葉を選びながら、自分にそう言っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ