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さして怖くも面白くもない創作百物語 2  作者: 弐屋 丑二


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考察

篠山さん(仮名)から聞いた話だ。


ある難しい病気で大病院に長期入院していた彼はその病院地下のコンビニをよく利用していたそうだ。


その日もエレベーターを利用してコンビニに降りていっていると、途中の階で、父親と4人連れの男女の子供たちが乗ってきた。

ガタイの大きな篠山さんは邪魔にならぬよう端に立っていたのだが、しきりに五十くらいの父親が彼に舌打ちしてきたそうである。

「とんでもなく失礼な人やな」

と思いながらも、子供たちもいるし、父親より彼の方が遥かに体格的優位もあったので、無視していると、一階で扉が開き、父親と3人の子供たちは素早く出ていった。


だが、十歳くらいの女の子が何故か一人残り、ジッと彼を見てきた。

篠山さんが黙って手で早く降りて親を追うようにように促すと、女の子は頷き父親の後をついて行った。


というだけの、なんてことのない話なのだが、後日、篠山さんはこの時のことを思い出し、何となく、あの女の子は生きていなかったのではないだろうかと考えたそうだ。彼を見てきたときの目が

「どうしたらいいと思う?」

という、問いかけるのような目つきだったので、あの家族に憑いて行かせてしまったかなあ……と彼は語ってきた。


この話を更に後日、田中さんに話すと、彼は不気味に笑いながら

「舌打ちってのは拒絶行為だ。その父親が勘違いしてたんだろうな」

「勘違い?」

「何か嫌な気配がある。うわっ、デカい男が居る、こいつなんかするんじゃないか?という思考回路を経ての舌打ちだったんだが、デカい男は無害で、実は幽霊に憑かれてました的な怪談でよくあるやつだ」

何となく納得できないので田中さんに

「単純に、クソ親父から虐待受けてる女の子が、強そうな篠山さんに助けを求めてたっていう線はないん?」

と言うと

「……だとしたら、俺たちには彼女の幸運を祈るしかないな」

そう言いながら、窓の外の青空を見つめていた。


ふと自分が

「いやよく考えたらおかしいよな。たまたま篠山さんが見ただけで、そもそも何もないっていう線もあるやろ、舌打ちはあかんけど」

そう言うと田中さんは

「何もなかったら考察にならないだろ。色々ひねり出すのが楽しんだろ!」

何故か怒っていた。



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