初めまして異世界
ゲーマーがあるゲームの神様に気に入られて異世界転移!?
相棒もこれじゃあ先が思いやられる!?
ここから始まる異世界転移生活
「…は?」
目覚めて間もないが覚醒するまでにさほど時間は掛からなかった。自分の置かれている状況がよく分からなかったからだ。
目を開けると見馴れた天井なんて展開はよくあるが俺の場合はその逆だった。目を開けると見知らぬ天井、見知らぬ部屋、見知らぬベッドに寝ていた。
(寝惚けてんのか?)
と思い何度も目を擦るが目に映るものは変わらなかった。
混乱しつつも少し落ち着こうと思い深呼吸をしたところであることに気づいた。ベッドが不自然に膨らんでいた。
(ベッド…何か妙に膨らんでるな?)
と自分を被う掛け布団を捲った。
「…」
そこにはあった。いやあったと言うか居た。銀色で艶のある長い髪。整った端正な顔立ち。華奢でバランスのとれた体つき。どこか見馴れた美人の女性がベッドの中に…しかも俺と同じベッドの中で寝息をたてていた。
一瞬の思考停止。そして
「はあぁぁぁ!?」
俺の声が部屋の中で響いた。
この状況に至った元凶は絶対に“アイツ”だ。
話は少し遡る。
「うっし!とりあえず育成完了だな。」
モニターに映る我が分身の相棒のステータス画面を眺めながら俺は呟いた。
俺がプレイしているPCゲーム『ラグナロク』は世界中でかなりのプレイヤーが存在するMMORPGの一つである。プレイヤーの作成はもちろんラグナロクならではのシステムである自分の相棒となるキャラも独自で作成可能なことやオープンワールド、PVPやギルドシステムなど、自由度の高さから瞬く間に大人気作となった。
高校生である俺、井浦壮眞もその自由度の高さに惹かれたゲーマーの一人で発売当初からかなりプレイしてきた。その為、現在ではプレイヤーの限界レベルであるレベル100まで到達し、それだけじゃ飽きたらず、俺は更にバディである『マリア』のレベルも「限界まで上げてやるか」位の軽い気持ちでレベリングを開始した。そして遂に先程バディのレベルも100に到達し、俺のキャラこと『ソーマ』がラグナロク界No.1のプレイヤーとなった。
「マジか…オレガチ勢かよ。いやガチ勢なんだけど」
とプレイヤーランキングを見ながら一人でしょうもないことを言いながらも何とも言えない達成感の余韻に浸っていた。何気なく相棒のステータスを見るとこのバディを作成した時のことを思い出す。どうせ作るのなら女性キャラで自分好みの外見にしようと思い作成にメチャクチャ時間かけたことが強く印象に残っており、どことなく感慨深いものを感じていた。すると突然強い眠気に襲われた。俺は抗う気力もなくラグナロクを起動しながらモニターを設置している机に突っ伏し意識を手放した。
「…」
「……」
「………うん?」
閉じた瞼越しに光を感じ俺は目をゆっくりと開く。そこは真っ白だったら壁もなく床もなく天井すらない。そもそも上下左右の感覚すらない。
言葉で表すなら『無』。それがピッタリの空間だった。
「変な夢だな。」
そう呟き再び目を閉じようとした。
「夢じゃないよ~」
透き通るような声が空間に響いた。
ハッとし目を開けると先程までなにもなかった目の前にに一人の少年の姿があった。黒いショートヘアーに緋色に染まった瞳、パンクな服と背後から覗く純白の大きな羽が印象的な少年。
「え…?誰?」
咄嗟に声が出た。
「ボクはラグナ。こう見えても女の子だよ。一応神様やってるんだ~」
(あー 完全に夢だわ。どうして会ったこともない初めましての少女が俺の夢に出てくんだよ。でも妙にリアルな夢だな。面白そうだし少し乗ってみるか。)
と思いつつ俺は先程の言葉について質問してみた。
「夢じゃないってどう言うことだ?」
その問に少女は
「言葉の通りだよ」
と答えた。
どうやら彼女によると『ラグナロク』を制御しているAIが意思を持つことで彼女と言う人格が誕生したらしい。
「じゃあその神様はどうして俺を呼び出したんだ?」
と聞くとその質問を待っていたらしく
「ボクが誕生した記念にボクからのプレゼント。このゲーム『ラグナロク』を一番愛してくれているキミをラグナロクの世界へとご招待する為だよっ!」
もしかして異世界転移?ラグナロクの世界が現実になるのは少し興味あるが夢だからしょうがない。
(適当に最後まで乗って目が覚めたらまたラグナロクやるか!)
「それじゃ行ってらっしゃい~」
(軽いなこの神様)
と思った途端、目の前が真っ暗になりまた意識が遠のく。朦朧とした意識のなかで一つだけに聞こえた言葉。
「どう生きるか、何をするかはキミ次第だよ。ボクの世界、楽しんでくれると嬉しいな。」
それから現在に至る。どうやら俺はマジでこの世界の神様に出会ってマジでこの世界に転移させられたらしい。絶対に夢だと思っていたものが現実になるとすぐに言葉がでない。
じゃあ隣で寝ているこの女性は?
混乱する頭を整理しつつ
「もしかして…マリア?」
そう呟くと閉じられていた瞼がゆっくりと開き黒く澄んだ瞳が俺を捉えた。
(自身で作ったキャラでとはいえマジで美人なんだが!)
そしてゆっくりと口を開き
「おはようございます。ご主人様」
絶句…
この世界に来て自身が作成した相棒の第一声がこれである。
「へ?…ご主人様って…まさか俺のこと?」
ひきつった笑顔で俺か聞き返すとマリアは
「もちろんです。ご主人様。本日は何をなさいますか?」
一番信頼できるバディに相棒の意味を初めから教えないといけないと言う状況に先が思いやられる。
…異世界生活。なにかと大変になりそうです。
時間が欲しいぃーっ
ということでここまで見て下さりありがとうございます!プロローグということでかなり短めになってしまいました。
出来るだけ早めに続きを執筆しようと思います!