[短編]拡大し続ける怪獣
空を白い球が落下する。
その球は地面ではなく、一人の男の頭に落ちる。
コツン
しかし、結局地面に落ちた。
男がその、手のひらサイズの白い球を拾うと、
ピキピキ
白い球にひびが入り
パキ!
ガオー!
なんと、見たこともない怪獣が顔を出した!
男は怪獣を研究した。
幸い、男は研究者で研究する設備はあった。
白い球を調べる。
どうやら怪獣の卵ようだ。
しかし、怪獣の姿は図鑑には載っていない。
どこから来たのかもわからない。
研究が長引くうちに、怪獣はドンドン体を大きくしていった。
怪獣の体が大型犬くらいの大きさになったころには、
すでに怪獣のことは世界中に知れ渡っていた。
世界中の研究者が研究しても、怪獣の正体は掴めないままでいた。
唯一の手掛かりである卵の殻も、非常に頑丈であることと
怪獣と同じDNAであること以外、わからないままだった。
さらに研究が長引いたころ、怪獣の体は熊と同じ大きさになっていた。
そのころになって研究者たちは、一つの畏怖を抱いた。
「もしかしたら、こいつは延々と体を大きくし続けるのではないか」
事実、怪獣の姿かたちは生まれた時から変わっていない。
大きさだけが、ただ拡大し続ける怪獣。
エサを減らせばいいのか?
怪獣は、腹が減れば肉を、皿を、さらには捕えている檻の鉄格子まで食べた。
調教をすれば何とかなるのではないか?
怪獣は、腹が減れば肉を食べた。
殺してしまえ!
怪獣は、死ななかった。
毒を与えても銃撃しても爆撃しても溶岩に落としても絶対零度の冷気を浴びせても、
怪獣は、死ななかった。
その事実に、世界は驚愕するとともに恐怖した。
すぐに世界中でこの怪獣の処分の仕方を検討した。
「まず、どう捕える?」
「卵の殻が使えるのでは?」
「量が少なくないか?」
「怪獣の増え続ける細胞を利用すれば簡単かと」
「よし、ではどう処分する?」
「地中に埋めるか?」
「いや、太陽に放り込むのも手だろう」
「怪獣は何をしても死なないし、何でも食べられることもわかっている。」
「無くなっては困るもののところへは行かしたくない」
「では宇宙の彼方へは?」
「いっそのことブラックホールへ放り込んでは?」
「危険すぎないか?」
「不確定要素が多すぎる」
「さらに大きくなるやもしれんぞ」
「しかし、その逆も然り」
「時間の逆行が発生しているとも言われているぞ」
「そんな都市伝説を信じているのか」
「超重力だぞ、一瞬でぺしゃんこ、それで終わりだ」
「ブラックホールはいい案だな」
作戦は決まった。
まず、怪獣の細胞から作った卵の殻で怪獣を捕獲。
長期間捕え続けられるように、現在の怪獣よりも何十倍も大きく設計。
行き先をブラックホールに設定したロケットに乗せ、発射。
無事、宇宙空間の旅が始まる。
ブラックホールに近づいたころ。
まだ怪獣は殻の中に空間的にも生命的にも余裕をもって生存している。
ロケットはブラックホールに突入する。
一瞬でぺしゃんこ
とはならず、怪獣を乗せたロケットは、ひたすら進み続ける。
否、その場で停滞、もしくは逆行
ロケットの軌道は、もはや観測不可能であった。
ふと気づけば、再びロケットは宇宙空間をさまよっていた。
怪獣は大きくなり続け、殻の内部空間的に限界を迎え始めている。
その前方には、青く輝く惑星。
ロケットは大気圏に突入し、その装甲はチリとなり燃え尽きた。
しかし、怪獣を包んでいた殻は無事に大気圏に侵入。
地面へと突撃した。
しかし、硬すぎる殻は割れずに、そのままバウンド。
コーーーーーーーン
コーーーーーン
コーーーン
バウンドを繰り返すうちに勢いは消える。
そんな折、
コツン
何かに衝突
さらにその何かに拾われたとき、
ピキピキ
とうとう殻の中が狭苦しく、限界を迎えた怪獣が、
パキ!
ガオー!
再び顔を外へと覗かせた。
お読みいただきありがとうございます。
じつはこちら、
インターステラー
を見終えた後、深夜テンションで書き上げました。
ほかにもシン・ゴジラの進化し続ける生物というのにインスピレーションを得たり、
ドラえもん のび太の魔界大冒険みたいに、空から時間回帰のヒントが降ってきたり…
深夜テンションで、ふと思いついたのを30分くらいで書き上げたものなので、
至らない点が多々あったと思いますが、楽しんで読んでいただけたなら、幸いでございます。