プロローグ
春、それは長い冬が終わり開放感が出始める季節。
1年の季節で1番長い期間。
ダウンジャケットやコート、マフラーなど重苦しい服を少しずつ軽い春コートなどに変えていき、開放的になる。
冬はオシャレが出来るなんて言う人もいるけどオシャレなんかより暖かさの方が重要だ、俺にとってはファッションより大事なことがある。
それにアウターは黒とか暗い色の物が多いし選ばれがち、何より日が落ちるのも早く暗くなる、だから冬はどうしても暗くなりがち。
なんて事は俺はどうでもいい、何故ならオシャレに興味ないからな。
激安アパレルショップで買ったダウンジャケットにジーパン、我ながらダサいのは分かっている。
どうせ俺は彼女いない歴史=年齢だっての。
季節は3月そうさっきから春っぽい感じの話ししてたのはそう言う事、あ、彼女出来て春がきたじゃないぞ。
俺の名前は佐藤卓也年齢は18歳晴れて大学生…になる予定だったが、一浪してしまった。
ま、今年もそれなりに遊んですごそうと思う何事もポジティブだよね?
今の俺は心がどんよりしてるんだよね、これからのことにさ、今から趣味仲間に会いに行くからさ。
周りにいるカップル、しかも同年代のやつらを見ても幸せそうな家族連れを見てもく悔しく...ない!
そりゃ俺も彼女ほしいけど、まず大学合格しなきゃならないし趣味が楽しくてお金がそっちに行っちゃうから無理、てかもてないよ。
公園を歩けば桜がもう七分咲きくらいかな、大人の人たちがたくさん集まってビール飲んで楽しそうな光景がずらっと目に入ってくる。
本当に桜ってきれいだよな、鮮やかなピンク色、そして一年にこの季節だけに咲き短い期間しか咲かないそういう期間限定がやっぱりいいのかな?何度も言ってるけど春は開放感あるってのもありそう。
そんな桜並木を通り抜け俺は仲間との集合であるファミレスまでやってきた。
時間は13時だ約束の時間すぎてしまった。
俺は今更慌てても仕方ないというのは分かっているし顔見知りのヲタクだしいいだろうという気楽な感じで店のドアを開けた。
周りをきょろきょろと見渡すと見知った顔の人が立ち上がり俺に向けて手を振ってくれた。
「店員さん、連れが先に行ってるのそっちに行きます」
軽く会釈をして俺は連れの方に向かって歩いた。
「遅れてすいません」
ヘラヘラしながら俺も席に座る。
「遅いぞたくっちょ氏」
今喋ったのは関西弁で喋るテルミンさんと言う。
お気付きかと思うけど、皆んなネットで出会ったのハンドルネームで呼び合ってる。皆んなチャットアプリとかで連絡は取れるし名前や住んでいるとこも何となくわかってる、でも暗黙の了解じゃないけどハンドルネームで呼び合うネットで知り合うあるあるだな。
「まぁまぁたくっちょ氏は春休みだから寝てたでござろう」
このござるな人はサムライさん、だからござる付けてるのかな?笑
「揃ったし次のライブについての会議始めようか」
こちらがリーダーで名前もリーダー。
「次のカルテットライブだけど皆んな最前行くのは確定だよな?もうすでに4連番でチケット買ってるしな」
俺たちは同じアイドルを好きになり仲良くなった4人、現場でボッチの俺に声をかけてくれた人たちである。
「もちの論でござるよ、カルテットちゃんのライブは全通でござるよ」
カルテットとはアイドルグループ名。
なんと四つ子の美少女グループ。俺はみた時全身に雷が走った感じがして心臓止まったよ。
「そらライブってアイドル支えるとこやろ?んで物販でニヤニヤするこの流れ楽しいねんな」
「あの俺は皆んなみたく学生、まぁ浪人ですがアルバイトはしてますしちゃんと行けますので大丈夫ですよ」
アルバイト実はまだしてない、皆んな気付きてるかも知れないけど俺、家がそこそこ裕福でお金には困らないってのが本音。
「たくっちょ折角だし何か食べるか? おごるぞ、一応大人だしな」
「ありがとうございますリーダーゴチになります」
俺はせっかくなので少し高い肉とかデザートとか色々頼んでしまった。
サムライさんは30代、テルミンさんは20代、リーダーは40代ってのは分かっている、それで俺はまだ18歳の10代、見事に世代が違う俺たちを周りはどう思っているのだろうか、少し気になるけど同じもの好きになるのに年齢なんて関係ない。
「それで今度のライブも俺らFCでチケット取ってるし最前行けるけど行くよな?」
テルミンさんが関西弁でさらに大きな声でしゃべってくるちょっと恥ずかしいと思った。
「もちろんでござるよ」
「そうだな最前で俺らの存在カルテットちゃん達に見せつけるとしますか」
俺ももちろん最前に行くというかそのためにFC入ったようなもの。
まあ最前と言ってもぶっちゃけた話し、カルッテトちゃん達はまだメジャーデビューして1stシングルしたばかりでそこまでは人気はない、俺が言うのも申し訳ないけど今回のワンマンライブもおそらく800人位かなと思う。
正直俺は基本ソロ参戦をしており、友達なんていないが俺がいつもライブにいるおまいつと言う事で声をかけられて社交辞令として上面だけへらへらして会に参加したのだ。
俺はまた桜並木を通りながらぶつぶつとつぶやく、まだまだ3月だし夕方になるとやっぱり寒い、でもぶっちゃ俺カルテットめっちゃ好きだし推しもめっちゃすきこれはヲタクで言うガチ恋なのかもな、だから恋人がいなくてもいい、なんて思うのはよくないってのは分かってるけど今はこの想い止められないぜ。白い息を吐きながら家路につくのであった。