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告白

銀座のホストクラブ襲撃事件から一年後、ホストクラブの聖夜は、あれから直ぐ、使い物にならないとホストクラブをクビになり、今では飯島陽子の彼氏として生活していた。


たまに陽子に会いに行くと、いつも聖夜(本名 権田抜 糠蔵 ごんだぬき ぬかぞう)が陽子に怒られてシクシク泣いていた。


それでも陽子は聖夜(糠蔵)が可愛いらしく、この先糠蔵を専業主夫として、結婚を考えているらしい。


プライドとステータスで疲れ果てていた陽子にとっては、正にうってつけのイケメンだったのだ。


智子と香はあの日からは特に大きな事件もなく、今まで通り二人仲良く過ごしていた。


しかし香の方に、いつも国家レベル、世界規模のドタキャンが入り、二人が会えるのは半年に1、2回になっていた。


そんなある日、珍しく香が智子をいつもの喫茶店に呼び出した。


『香~、久しぶり~!今日は世界平和デーじゃないの?』

智子が不思議そうに聞いた。

『うん、今日はお休みよ。』

香が静かに答えた。

『香が暇してるの久しぶりだよね?総理大臣のストーカーも今日は来てないみたいね。』

智子はにこにこしていた。


香は何処と無く元気が無かったが、急に昔の事を語りだした。



『昔ね、私たちが中学2年生の時、二人で良くつるんでいたでしょ?そんなある日の放課後にね、私が教室に入ろうとしたら、智子がクラスの中心的な女の子達と会話していてね、私何故かそれを黙って盗み聞きしてしまったの。』

香が静かに智子を見つめている。


『そのクラスの女の子達はね、一生懸命智子に私と縁を切るように薦めていたの。やれ(臭いでしょ)だの(頭悪いでしょ)だの、(醜い顔と体型でしょ)だの、散々だったわ、終いには、(少しずつ距離を取って高校になったら疎遠にしちゃいなさいよ!)ってアドバイスもしていたわ。』

香は淡々と話している。


『その子達の言い分は、(香とつるんでいると、智子も同じ仲間にされちゃうよ!香とつるんでいても何の得にもならないし、香との付き合いには何の価値も無いのよ!)って事だったわ。』

智子が黙って聞いていた。


『でもね、私はそれを聞いても少しも驚かなかったわ、だってそんなことは、ちょっと考えれば誰にでも解る、当然の事だったんだもの。』

香が少し珈琲を口にした。


『驚いたのはその先よ、その子達に智子が言った台詞なのよ。』

香が智子をじっと見つめている。


『(私、それは出来ないわ。)って言ったの!』

香が少し強い口調でしゃべった。


『いや、出来るでしょ?何で出来ないの?確かに、その子達の言う通りでしょ!その子達との付き合いより、私との友情に何のメリットがあるの?損得の計算とか出来ないの?私には、それが到底理解出来なかったわ。』

香は少し間を置いて、


『でもね、私の頭では、とても理解できない馬鹿げている出来事だったんだけど、何故かその出来事が私の頭に何時までも残っているの。』

香がまた少し間を置いた。


智子は静かに聞いていた。


『それでね、智子、ここからが本題なんだけど、ともだちを止めて欲しいの。』


香が突然本題に入った。


智子は突然の申し出にビックリした。


『えっ?何で?』

智子は驚きを隠せなかった。


『私ね、今色々やってるでしょ?世界的なテロ対策をしたり、世界大戦を防いだり、』

香が意気揚々と語りだした。


智子は、もしかして、香が自分との友情に何の価値も見いだせなくなったのかなと、少し勘繰り始めた。


『私ね、智子、実は総理大臣官邸の地下にも私専用の部屋があるのよ。』

香が得意気に話し出した。


『その部屋にね、日本の政策を影で実質的に決めている政策対策本部があるのよ。そこにその時々の専門家達が集まって、日本の政策を決めたり、日本の経済対策を取り決めしたり、まして、日本を中心に世界経済を安定させたりと、色々やっているのよ、』

香が嬉しそうに話している。


『日本はね、資本主義のアメリカと社会主義の中国・ロシアの間に挟まれた小さな島国なの、だからその両方の間をうまく取りまとめて、私が、世界経済と、世界情勢が混乱しないように取り仕切ってきたの。』

香は得意気に話している。


『か、香、それは凄いことだと思うんだけど、わざわざ私達が友達を辞めることは無いんじゃない?私は、年に一回でも香の顔が見れたら、それで充分なんだから。』

智子は必死にしがみついた。


『私ね、今日休みじゃないの。』


香が突然静かになった、


『私ね、もう辞めたの。』


智子はまたもビックリした。


『私ね、実は凄い勢いで知能指数が落ちているの、生理と同時に突然知能指数が上がりだしたから、何時かこんなときがくるとは思っていたの。』


香が、静かに下を向いた。


『あの子達の言う通りだと思うの。』


香が項垂れている。


『私が昔みたいな頭の悪い女になれば、私には何の価値も無くなるわ、智子にとって只の足手まといのデメリットでしかないの、あの子達が言うまでもなく、誰でも解ることだわ、だから、先に友達を止めておきたいの。もう、昔みたいに智子の足手まといにはなりたくないの。』


香が、じゃあサヨウナラと言わんばかりに席を立とうとした。


すると、その一方的な香のサヨナラの態度に、頭に血が昇った智子は、カッと目を見開き、コーヒーカップを壁に叩きつけた。


『だから、私、それは出来ないわ!』


智子がカンカンに怒っている。


『香!香がどこの地下でどれだけ凄いことをしているのか私には分からないわ!でもね、香の価値は、私が私自身の判断で決めさせてもらうわ!意見しないで頂戴!』


智子は香をぎらりと睨んでいる。


『でも智子、もしかすると前以上に知能指数が落ちてしまうかも知れないのよ?本当にただの足手まといの介護が必要な人間になるかもしれないの。そんな私との友情に何の価値があるの?

私怖いの!

今まで簡単に出来ていたことが、どんどん出来なくなって行くことが怖いの!

周りの期待に応えられずに、皆が掌を返していくのが怖いの!』

香は、今回はもう本当に良いからと云う感じで項垂れていた。


『じゃあこの際だから言わせてもらうわ!頭がしっかりしている内に良く聞いて!私から言わせれば、要介護状態で毎日お世話しなければならないあんたより、年に数回しか会えない、世界を動かしている今のあんたの方がよっぽど価値が無いわ!』


智子は憤りを隠せていない。


『私わね、香!心で価値を決めるの!みんなとは違うの!もう、ともだち止めるなんて言わないでちょうだい!』

そう言って智子は香をぎゅっと強く抱き締めた。


二人はわんわん泣いている。


喫茶店のマスターも一緒になって涙をポロポロ流していた。


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