飯島 陽子
『か、か、香~、ど、ど、どうしよう~。』
香が家に籠って、得意のパソコンで一仕事していたある日、智子から突然神妙な電話があった。
『ど、どうしたの智子?何かあったの?』
香は智子のただならぬ様子に驚きを隠せなかった。
『陽子ちゃんが、自殺未遂しちゃったんだって~。銀座のビルから飛び降りたんだって。幸い奇跡的に命に別状はないみたいだけど。うちらのせいかなぁ?』
智子が泣きながら話し出した。
『うっそ?私あれからちゃんと智子に言われた通りに完璧にケアして回ったはずよ?』
香はそんな筈はないと思ったが、取り敢えず智子といつもの喫茶店に集合して、二人で相談することにした。
『ごめんね香~、わたしのせいで~。』
智子はしくしく泣いている。
『智子、本当に私たちのせいなの?だってあれから大分経っているのよ?お詫びの印に売り上げだって、かなり貢献したんだから!』
香は信じられない風に驚いている。
『分からないよ~、噂で聞いた程度だから~、怖くて確かめられないの~。』
智子は気が動転している。
『分かった、じゃあ今度お見舞いに行って、真相を聞いてみましょ。』
そう言って二人は、次の休みに飯島陽子の入院している群馬県立病院へお見舞いに行くことにした。
群馬県立病院へ向かう途中、智子は香に何気なく質問をした。
『香さぁ。私が苛められているとき、黒幕が飯島陽子ちゃんだって気付いたでしょ?陽子ちゃんに会ったときも無いのに、どうして分かったの?』
智子が不思議そうに聞いてきた。
『だって、智子のいじめ、かなり陰湿だったでしょ?教室には相当の負のエネルギーが漂っていたはずよ。そんな中、智子の味方なんかしてごらんなさい、きっとその子も只では済まされないわ。でも、智子の口からは、私が質問するまで、一度も飯島陽子の名前が出てこなかったでしょ?そうすると答えは1つよ、その智子に唯一優しくしてくれた飯島陽子も、その醜悪な負のエネルギーに溶け込んでいるとしか考えられなかったからよ。』
香は前を歩きながら淡々と答えた。
『香、色々本当にごめんねぇ。』
智子は、智子のいじめの総ての責任と犠牲を、いじめた方でもなく、いじめられた智子でもなく、香が一人で背負ってきたように思えて、心の底から申し訳なく思った。
病院に着いて直ぐ、二人は飯島陽子の病室を訪れた。
香は安静にしてもらうために、予めメールで飯島陽子にお見舞いに行くことをメールし、ちゃんと許可を貰って、飯島陽子があまり興奮しないように手配しておいた。
『飯島さん大丈夫?』
智子が心配そうに尋ねた。
飯島陽子は静かに下を向いていた。
『私たちのせいなの?』
智子は申し訳なさそうに聞いた。
『そ、それは違うわ!』
陽子はキッと智子を見た。
『私ね、ホストにお金をむしり取られていたの。』
陽子がしくしく泣き出した。
『高校の時はごめんね、智子ちゃん、』
陽子はしくしく泣いている。
『私ね、お父さんがヴィトンの会社に勤めてるでしょ?そのせいで小さいときから回りの女の子に、服装やら振る舞いやら成績やらステータスやら常にチェックされていて、あれもヴィトンなの?これもヴィトンなの?って何千回も質問されて、常に高いセンスを求められてきて、ストレスで死にそうだったの!』
陽子はまたしくしく泣き出した。
『大人になってからも、常に高いファッションを求められてきて、友達も男も回りもどんどん高いステータスを求めてくるの!それである日、ホストに通うようになって、そしたらイケメンたちがチヤホヤしてくれて、いい気になっていたら、次第にお金をせびられるようになって。』
陽子は呆然とし出した。
陽子は口をパカッと空けたまま前を見つめ、目は死んだ魚の目のように、大きく見開いていた。
『せめて最後はグチャっと醜く死にたかった。』
陽子はそう言って目から涙を流した。
(えっ?グッチと醜く?)
それを聞き間違った智子は、グッチへのライバル心がむき出しなのかと勘違いしていた。
『香、懲らしめてやりなさい!』
そう言って智子は香を見た。
(智子は水戸黄門か!)
香は呆れていたが、一人の女の子を死へと追い込んだ、そのホストが許せなくなり、懲らしめてやることにした。
(ホストの件が上手くいったら、そのお礼に、飯島陽子にこの間の智子のお尻丸出しの水着を着せて、市民プールに遊びに行こう。)
香はニマっとして病室を後にした。




