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First Impression

クリックしてくれてありがとうございます。

拙いところも多々あるでしょうが笑ってやってください。


-1-第一印象

(1)

人気のない夜の交差点。もう数百メートル歩けば、深夜だというのに節操なく光るネオンに照らされる人々が、各々の目的地に向かって歩いている「人気のある」交差点があるのだが、ここは至って普通の暗い「人気のない」交差点。

そこで善良な・・・素行に少々の問題がある社会人、倉田蓬生は二人の仲間と一人の青年(?)に絡んでいた。

「おいおい、そこの兄ちゃん何してくれてんの。あんたがぶつかったせいでこいつ肩外れちゃったじゃねえのよ」

「かぁ~っいってぇ~。あーやべぇ。病院いかなきゃな~、でも病院いったら金かかるなぁ~、あぁくそ、明日仕事あるのにな~w」

「ほらぁ~どうしてくれるんですかぁ?えぇ?」

絡む内容は上記の通りただのカツアゲ。ただしこれは相手が数人いる時点で要求ではなく脅迫だ。

困惑する青年(?)はオロオロするばかりで、パクパク開く口からは小さく「ご、ごめんなさぃ・・・」という恐怖感満載の声が漏れ、当人の心情をこの上なく分かりやすく伝える。

蓬生達にとってそれは付け入る隙でしかない。

「かぁーっ。近頃の若いのは詫びの入れ方もわかんねぇの?金だよ金。医療費だしなほら、ちゃっちゃと」

「そうだよな、ふっつーこういうときは誠意を示すよな。誠意をさ」

露骨に金を要求されて青年(?)も少し苛立ちが浮かんだのだろうか。先程より少々語気を荒げ、少々高めの声で反論をする。

「い、医療費なんて実際にいくらかかるかはわかりませんし、そ、それに軽く肩をぶつけた位で肩が外れるなんてそんな訳ないじゃないですか・・・!」

正論。確かに正論だ。だがここでは理論武装ではなく、物理的な武装でなければ意味がない。

「あぁ!?確かにこいつが外れたっつってんだよ!医療費がいくらかかるかわからん!?だったらあるだけの金を出しゃいいだろうが!それが誠意ってモンだろうが!」

「そうだ。てめぇ相手に怪我させといていうに事欠いて怪我なんかしてないっつーのはどういう了見だこの野郎!」

「お前舐めてんじゃねぇぞおい。こっちが下手に出てりゃいい気になりやがって!」

このように正論で武装しても揚げ足をとって言い返してくるからだ。ついでにいうなら数の暴力とは恐ろしいもので、間違ったことを言っていても味方が他にいることで罪悪感が薄れ、一種の正義感を刺激する。

正義感は行動に大義名分を与えるもののなかでは最高品質だ。

自分は正義に基づいて行動しているのだから、悪いのはあいつらで自分は悪くない。

この二段論法によって武装された行動理由はたちが悪い。間違っていても正義を主張されればそれを説得するか、論理破綻を見つけ出して指摘するか・・・それを叩き潰すしか、処方がないのだから。

青年(?)は圧に負けてポケットから財布をとり出す。そこから二人の福沢諭吉が顔を出すその直前。

「『あー、おっさん。ツレがお世話になったみてぇだな。取り敢えずそこ退いてくんない?』」

余りにも場違いな声が耳に入り込んできた。

驚いて顔をあげると、黒いフードつきパーカーをきた青年がヘラヘラ笑いながらこっちを向いている。

顔はフードと夜闇に隠れて口元がわずかに見える程度。もちろん覚えのない他人だ。

邪魔をされた蓬生は声を荒げる。

「部外者は引っ込んでろ。これは俺たちの問題っつーモンでしてね」

しかし、闖入者はあくまでもヘラヘラと笑いながら言葉を返す。

「『おっさんおっさん。耳ついてる?こいつ、俺のツレ。俺、こいつ回収しにきた。OK?』」

会話をするふりをして言葉の端々にバカにするような台詞を挟む。その実、この青年に会話をする意図などはない。何故ならとうに話し合いなどするつもりはないからである。

「~~~~~~~~ッ!」

激昂した蓬生は目の前の華奢な青年に拳を振りかぶる。こちらも話し合いをする気は失せたようだ。

「このガキっ!」

蓬生は元ボクサーだ。二十八までプロボクサーとして真っ当な人生を送っていた。しかし、才能がなかったのか、次々と台頭する若手に追いたてられ、気づけばこうだ。

他の仲間もその手の知り合いである。かつての日本ならいざ知らず、今の日本は東京より北に、人間が住めないのだ。必然的に人口密度は高まり、優秀だが燻っていた選手も台頭しやすくなる。結果としてベテランは若い才能に押し潰されるのが現在の日本の、いや、世界の常識と化していた。

とはいえだ。かつての日本ではボクサーに限らず、格闘技において一定の練度を誇る人間の体は、凶器として扱われるという法律があった。

やめたとは言え元ボクサー。直撃すれば怪我ではすまない拳がフードの青年に迫る。

だが。

「!?痛っ!?」

右足に走る激痛によって蓬生は途中で動きを止めてしまった。当然振り切った拳も悠々と避けられてしまう。

直後、こめかみに鈍い痛みが走って倒れこむ。急いで立とうとするも、頭がぐらぐらして上手く立ち上がれない。両手をついて顔をあげた蓬生の視界に映ったのは、ヘラヘラ笑いながら二人の仲間のうち、もう一人の仲間の股間を蹴りあげつつ、顎と喉の間を指で突き上げるフードの青年だった。

フードの青年は怪我をしたふりをしていた男の方に振り向いて、

「どうすんの?お仲間二人仲良くダウンしちゃったけど」

煽り文句をフードが言い終わるが早いか、無言で突進する男。

プロレス経験があるその男は、フードの青年の左腕に取り付く。そのまま折ろうとすると突進姿勢が災いし、足を払われた。前に倒れこむ寸前、フードの青年は左腕がねじれるのも構わず体を左腕を軸に回転させ、男の背後に回る。そしてうつ伏せに倒れた男の背中に乗っかり、腰に近い背中の一点をぐりっと押した。

「!?」

男は苦しげな表情を浮かべ、フードの左腕を放して体勢を戻そうとするも、地面を引っ掻くばかりで小揺るぎもしない。しばし奮闘したが、微動だにしない体勢に諦めて脱力した男にフードの青年が声をかけた。

「『肩が外れたなんて嘘じゃないか。嘘は悪いことだぜ?こういうときはどうするんだよ。おっさん』」

男は悔しそうな表情を浮かべつつ

「誠意・・・」

フードは片手を突き出し、ヘラヘラ笑いながら

「『そう、それ♪』」

と、肯定の意を示した。

(2)

「先程はありがとうございました。で、誰なんですかあなた」

先程絡まれていた青年(?)望月楓はフードに詰め寄る。

こちらはもと格闘技選手から「誠意」を毟って気分は良さげなのだが、いかんせん口元しか見えない為、歳もよくわからない。これではお礼のしようもないと思って声をかけると。

「『あぁ、いいよ気にしないで。ちょうどいいストレス解消になったから、さ。こちらこそありがと』」

「いやだからちょっと、誰なんですかあなた!」

そのまま行ってしまいそうなフード青年の肩を掴んで引っ張ると・・・案外あっさりフードがとれた。

(3)

件のフード青年沖田穹は、立ち去ろうとした直後、肩を引っ張られ、フードがとれてしまった。

フードがとれてまず彼が考えたことは、カラコンはめてて良かった。である。

それはそうと、フードを取られたのは腹が立つが、用向きを聞かなければと思い問い返す。

「『なんですか?』」

「あなたは誰ですか?」

え・・・そんなこと?

拍子抜けしつつ穹は一身上の都合から偽名を告げる。

「『佐藤太郎です』」

「そ、佐藤さん・・・じゃ、案内してくれます?」

どこに?と首をかしげる穹に青年(?)は。

「お礼をするので貴方の家に連れてって下さい」

この瞬間、穹の中で閃くものがあった。

こいつ・・・さては家がないな?

2069年。第三次世界大戦は予想外の理由で始まった。

宇宙人の襲来である。

厳密には人ではなく、人によくにた見た目と骨格を持つ言葉を持たない獣なのだが、ふざけた民衆が宇宙人と呼び習わすことで定着してしまった。

しかし、被害はふざけたものではない。

突如アメリカの北部に発生した宇宙人はあっという間にアメリカ全土を制圧し、続いて南アメリカ大陸をも喰らった。避難が間に合ったのはごく一部のみ。そこからは情報が錯綜し、結果として衛生から確認した宇宙人の群れに適宜、GEW(GenocideExplosionWepon)を打ち込むことで手打ちとなった。

だが。その後ロシアで出現した宇宙人に対応が遅れた結果。ヨーロッパはフランスを中心にヨーロッパ連合国を結成。全ヨーロッパ面積のうち三分の二を死守する形となった。

しかし、ロシアから流氷にでも乗ったのか北海道に出現した宇宙人は北海道を瞬く間に喰らうと本州に侵攻を始めた。だが、人類とてただ待っていたわけではない。

宇宙人最大の驚異はその分裂である。彼らは腕や脚がちぎれたりするとそこから本体が生えるのだ。因みに報告書によれば意図的に自分の腕をちぎって分裂し、戦力増強を図ったという事例もある。ここからさらにもうひとつわかるのは、彼らの圧倒的な再生能力だ。トカゲの尻尾など貧弱だと言わんばかりの回復力。燃やす位しか対抗策がないのだ。だが、逆説的に考えれば熱には弱い。

そんな理由で作られたのは高周波振動ブレード。長刃のものでは難しかった為、ナイフ程度の長さのものになったのだが、それで切りつけたところ、切られた部分は再生しなくなった。振動によって接点に摩擦熱が発生する為と思われる。

だが、人間が何人集まっても獣には勝てない。勇敢に戦った自衛隊員三名の死を以て、このプロジェクトは終わるかに思えた。しかし、ある科学者がこう言った。

「人間がダメならば勝てる生き物を作ろう」

結果として、数百万人の人工生命体。通称ホムンクルスが作り出されることとなった。戦争の混乱は人の倫理観を麻痺させ、人々はホムンクルスたちによる救済を渇望した。

人工生物はご法度?ご冗談。臨機応変な対応こそが今求められているものだ。と当時の国家代表は嘯いた。

そしてそのプロジェクトは大成功。地球上から手足が残った宇宙人は消え去った。

いまだに気味悪がって人が住もうとしないかつての宇宙人支配区域が残ったものの、居場所をおわれたホムンクルスたちはそこに生活の基盤をおくことと決めた。だが。

人間は勝手だ。自分達を脅かす「かもしれない」というだけで一部の国を除いてホムンクルスたちに刃を向けたのだ。領地の変換という大義名分を掲げて。もちろん領地を返還したホムンクルス達に待っているのは、研究所での管理という名の観察動物生活である。もちろん余ったら屠殺である。

つまり、今人類はホムンクルスから領土を奪還しようとしているのだ。

まるでネズミ取りに使っていた猫をネズミが消えたら捨てるように。

と、まぁ都合十五年程度の出来事だが・・・つまり今人類とホムンクルスが世界中で戦争をしている為、人間の居留区域は昔より狭まり、世界各地で地価が上がりまくってホームレスが急増しているのだ。

その類いだろうとあたりをつけ、穹はため息をついた。

仕方ない。一晩くらい泊めてやるか。

「『あ、そう?んじゃお礼してもらおっかな。料理得意なの?俺はどうにか食える程度のものしか作れなくてさ。いや~、楽しみだな』」

穹はあくまでヘラヘラ笑いながら、頭のなかで残っている食材を頭のなかで組み合わせていく。今日は久々に他人の作った料理が食えそうだ・・・と思っていると。予想外の返答が返ってきた。

「い、いえ!かっかかか体で、払います!」

はい?

おいおいちょっと待てよ沖田穹17歳。こいつ今なんていった?まずこいつ男だろ?え、♂ってこと?

じゃぁ俺は・・・同類に見えたってことか・・・!?

困惑と混乱と自分がゲイ♂に見えていたかもしれないという潜在的恐怖に頭を抱える穹に構わず青年(?)は続ける。

「わ、私そうは見えないかもですけど女なので!昔読んだことあるんです!薄いえっちぃ本で男の人にお礼をするときは体で払うって」

「ストップ!待て、待ってくれ。俺はそんな鬼畜野郎じゃねぇから!『チンピラ追っ払ったら童貞卒業したったw』みたいな薄い本的な展開は俺は信じないぞ!だから待て!」

女の子カミングアウトにゲイに見えてた疑惑が吹き飛び、冷静な思考が戻った穹は誤解をときにかかる。

「じゃ、じゃあどうしたらいいんですか!?私嫌ですよこのあとで揺すりたかりに遭うのは!」

「揺すったりたかったりしねぇよ!まずホームレス揺すってもたかっても出てくんのはクーポン券ぐらいだろうが!?」

「!?何故私がホームレスだと!さてはストーカー!助けてお巡りさーん!!」

「ストーカーじゃねぇぇぇっ!っつーかそんな声出せるなら、さっきも助け呼べば良かったじゃんか・・・」

「さっきは固まっちゃって声が出なかったんです。それに嘘ですよ。本気でストーカーだと思ってたらこっそり110番通報です」

「えげつねぇな。なんで嘘なんか・・・」

青年改めホームレス女の子はキョトンとした顔をして、こう言った。

「カッコつけ、やっとやめましたね」

穹は一瞬考え、こう答えた。

「『ヒーローはカッコつけるもんだろ?』」

女の子は少し考えて、こう答えた。

「体で払うのは嘘じゃありませんよ?」

「そこは嘘じゃねぇの!?」

クスッ

女の子は狼狽する佐藤を見ていい人だな、と思った。

穹は笑う女の子を見て悪女かもしれない、と思った。

これが双方の第一印象だということは、後々お互いが知るのだが・・・それはまぁ、また、別の話。

どうでしたでしょうか。

読む時間をかけるだけの内容があったなら幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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