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目標その1:仲間のいる街まで行きましょう 壱

ただただ移動するだけパート。

鳳梨の目の前に飛び出してきたのは、RPGのザコ敵でお馴染みのスライムであった。


(どうしよう、僕一人じゃ戦えないよ!)


刀を持ってるものの武道の心得など何もない鳳梨が、ザコとは言え歴としたモンスターであるスライムに敵う訳がない。邪気を払うというきびだんごも四つしかない。スライムに効果があるかも分からないし、無駄に消費する訳にはいかなかった。とどの詰まり、鳳梨の選べる選択肢は『逃げる』一択であった。


「追い付かれませんように……!」


鳳梨はスライムの脇を通る様にして駆け出す。鳳梨の脚は速くもなく、遅くもない。平均的な速度である。反面、スライムの移動速度は分からないため、逃げ切れるか否かはある種の賭けだ。


(最悪追い付かれたら刀を振り回そう)


投げやりな策を練りながら、一本道をひた走る。村と村を繋ぐ道だけあって、それなりに整備されており走る分には苦労しない。ある程度来た所で、後方を確認した。スライムの姿は見えない。どうやら逃げ切れた様だ、と鳳梨は安堵の息を吐く。


(……仲間を見つけるまで戦闘は避けていかないと……)


道端の木陰に腰を下ろし、乱れた呼吸を整える。鳳梨は大学に上がってから特に運動をしてこなかった。そのため、僅かに全力疾走しただけでもかなりの体力を消耗してしまった。

水分補給をしなければ。そう思ったが、今の鳳梨の持っている飲食物は、きびだんご四つ 。


(水分補給できなくねこれ)


水分の確保について悩んでいると、別の問題があることにも気づいた。最初、鳳梨が出発した村と次の目的地の間は一本道で繋がっているらしい。その道は頻繁に使われるため、それなりに整備されている。今の数分で鳳梨はそれを確認した。しかし、それだけである。道以外には何もない。家の一軒も、水場もない。


つまり、少なくとも次の村、もしくは街にたどり着くまで、サバイバル生活しなければいけないのだ。


鳳梨はサバイバルの知識など持ち合わせていない。しかしどうにかしなければ野垂れ死には必至である。

村長曰、目的地までは徒歩で1日と言っていた。幸い季節は春か秋の様で、汗はそれほどかかない。一日程度なら飲まず食わずでもなんとかなるかもしれない。しかし、一日というのはきっとこの世界の人間の足でだろうと予想する。交通網が発達し、歩く機会の減った現代日本で育った鳳梨の脚力ではどうだろうか。体力もなく休憩を挟むと仮定すると、とても一日ではたどり着けないだろう。村に戻ろうにもスライムと鉢合わせる可能性がある。

どうあがいても、サバイバルするしかない。


「せめて水筒くらい持たせて欲しかったな……」


早速大きな問題に直面した鳳梨は天を仰ぐ。ボーイスカウトとかに参加しとけばよかったなぁ、などと後悔してももう遅い。今度は、安堵ではなく途方に暮れた故のため息をつく。


(少しでもいいから進もう……街だか村に近づけば誰かに発見してもらえるかもしれない)


なんにせよ前に進まないことには始まらない、と重い腰を上げて歩き出した。



なんやかんやで、歩くこと三時間。休み休み歩いていることもあり、あまり進めていない。太陽が高い所にあるので、正午頃だろう。昼間はモンスターの活動が鈍いのか、例のスライム以外とは遭遇していない。


(なんか食べれそうな木の実の一つくらいあったらなぁ……)


道の両脇は鬱蒼とした森。森に足を伸ばせば何かしらの食べ物や川ないし池等あるかもしれないが、同時にモンスターや毒を持った生物と出会う可能性も秘めている。鳳梨は森に入るより、歩きながら木の実を見つける方が安全だと判断し、歩き続けていた。しかしながら、食べれそうなものは一つも生えておいなかった。


(まだ死にたくないなぁ……)


くっ……、と唇を噛み締めながら更に歩いていると、緑しかなかった道端に赤い何かがあることに気づいた。近付いて見てみると、それは鳳梨が小学生の頃に実家の近くでよく見つけ食したものによく似ていた。いや、似ているというよりそれそのものである。


(木いちごだ……!)


この世界の食料は鳳梨の元いた世界と大差ないようなので、この木いちごも食べることができるだろう。


(田舎者でよかった!)

「いただきます!」


田舎に産んでくれた両親に感謝しながら木いちごを一つ摘み取って、食べる。懐かしい甘酸っぱさが口に広がる。ぱくぱく、といくつか口に放り込んだところで、これを持ち歩いて暫くの間の食料にしようと思い付く。かなりの量成っているので、なくならない程度に摘み取り、きびだんごの袋にいれる。たくさんあるとはいえ、成人男性の腹を満たすには心もとない量ではあるがないよりはいい。


そういえば、僕にはサバイバルの知識はないが、食べれる野草はいくつか知っている。僕の住んでいた所と植生が似ているなら、野草だけは食べれるぞ。


木いちごの発見により少し自信のついた鳳梨の足取りは少し軽くなった。

異世界とは。

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