第2章 ①
――それから。
アリーシャは、セジの宣言通り、二度と彼と会うことはなかった。
舞踏会の日は、放心状態で、淡々と従者のシーファスに自宅まで送り届けられた。
ふわふわと宙に浮いているような変な気分だった。
それでも、もしかしたら、ふらりとセジが自分の前に現れて、再び愛を囁き始めるのではないか?
そんな根拠のない予感もあった。
でも、セジは再びアリーシャの前に現れることはなかった。
あれほど、しつこいくらい追い掛け回していたのに。
ぱたりとやんだ。
怖いくらい、静かに、あっけなく。
意味が分からなかった。
やはり、アリーシャが気に入らなかったのか。
アリーシャの選んだ言葉は、セジを怒らせていたのか。
それとも、一向に自分になびかないアリーシャが面倒になったのか。
会ってみて、セジを問いただそうかとアリーシャは真剣に考えた。
自分にはその資格があるのだと、そう思っていた。
……だって。
アリーシャは、そっと襟元に触れる。
あの晩、セジがアリーシャに贈ってくれた首飾りは、今もここにある。
これを返さなければいけない。
愛情がないのならば、尚更だ。
けれども、彼と出会う機会すらアリーシャに掴むことは無理だった。
セジは、聖院に進学することはなかった。
……かといって、ラティス公の後を継いだわけでもなかった。
アリーシャがセジの消息を知ったのは、祖母が拾ってきた噂話からだ。
そう……。
セジは、アリーシャの兄が志願した道を選んだのだ。
よりにもよって
―――軍隊に入ったのである。