表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ 今日から君がヒーローだ!

『くらえぇ!!スーパーパーンチ!!!』


技名と共に光り輝く右手のそれが、体長4メートルはあるだろう大きさのキノコいや、シイタケいや、アレは間違いなくクリボーだろう生物を空高く殴り飛ばした。

ヤバい!なんか気持ちいい!

灰色のメタルカラーのソレは暑く高ぶる気持ちを握り締め体を震わせる。変身した自分の姿はシンプルだが強さは十分だった。必殺パンチはあれだけ巨大なシイタケ野郎を吹っ飛ばすほどなのだ!

そんな感動を噛み締めていると、後ろから割れるような拍手と声援が聞こえてきた。

『ありがとー!』

『あなたのおかげで助かったわー!』

『かっこよかったぞー!』などなど。

調子にのって手なんか振ってみたり?手を振るとさらに声援は大きくなった。

さすがに恥ずかし・・・。

灰色メタルカラーのソレは声援のなか消えるようにその場をあとにした。


      ☆

2年前、この日本に突如として現れた怪獣や怪人、悪の組織は悪の限りを尽くそうとしていた。

現れた怪獣や怪人には今までの科学技術はまったくと言っていいほど通用せず、日本は混沌に沈みかけた。

しかし、そこに現れたのが『スーパーヒーロー&ヒロイン』だった。

彼らは未知なる力を使い、悪の怪獣や怪人と戦い、平和を守っている。そしてそれは今もなを続いている。

現在確認されているヒーロー&ヒロインは31人。

彼らは団体で戦うのではなくあくまでも個人として戦っていた。

姿もそれぞれ違っていて、それぞれにその姿に合った名で呼び合っていた。

ヒーローとして有名なのが『青騎士(アオキシ)

その名の通り、全身青の鎧を着込んでいて、その大きさは自分の倍は有為にあるだろう。背中には大剣を背負っているが基本的に使わず、右腕に装備されている巨大なランスで戦っている。

ヒロインとして有名なのは『黒姫くろひめ』と呼ばれる者だ。

全身がダークカラーで、どこまでも漆黒を表しているような姿だ。特徴といえば、黒く長い髪と、黒き刄を自在に操り戦う圧倒的までの強さ。

青騎とは真逆に、黒姫はシンプルといえるだろう。その分、黒姫の動きは速く、スーパーヒーロー&ヒロインの中でもトップクラスのスピードを持っているだろう。

二人以外のも、『赤鬼』『縁剣』『紅姫』などのヒーロー&ヒロインもいるが、今のところ一番目立っているのはやっぱり最初の二人なんだろう。

しかし、彼らは一人二人と数えていいのか?そもそも人間なのかも怪しい。だって、普通、自分の三倍もある武器を竹刀や木刀の様に操ったり、鳥の様に自由に空を飛んだり、またまたは残像ができるほどの速さで移動したりと・・・まともな人間じゃ絶対できない。

だから、彼らは本当に人間なのか?という疑問を持つ人も少なくはない。

ある人が言うには、「彼らは宇宙から最新の科学技術をもってやってきた宇宙人だ」と言う人もいる。

またある人は、「異世界の魔法の力を使った魔法使いだ」なんて・・・。

まぁ、それだけ彼らが常識外れの存在であることは間違いないのだが。

そして、彼らと同じだけの力を持った怪人・怪獣、悪の組織。

彼らは一体どこから来たのだろうか?

二年前の当時、彼らはどこから来たのか?と言うことについて、専門家などをたくさん集めた会議や、その様子をテレビでよく流していたが、それもすぐになくなり、誰も彼もその行方を気にする者はいなくなってしまっていた。

それは、何故なのだろう?

気がつくとみんなそのことをどうでもよくなったようにしている。

改めて聴いてみても、みんな『よくわからないけど、そんなこと気にしてもしょうがない』と答えるばかり。

なにかそういう力が働いてるのか、みんな気にしなくなっていっている。

結局、彼らはどこから来たのだろうか・・・・・。


  ☆

それはいつも通りの下校になるはずだった。

小林蛍は学校帰りに別にどこに行くもしないで普通に帰る途中だった。

隣には妹のひかりがいて、中学2年生の妹はロリ顔でそこら辺を好きな人たちにはきっとすかれるだろう顔立ちをしている。

高校生の蛍と中学生の光が何故一緒に帰っているかというと、なんのこともなく、ただそこであったという必然でも何でもないただの偶然。一ヶ月に1,2回あるかどうかといったところか?

正直妹は嫌いじゃない。

みんな妹なんてウザイだけだ!なんて言うけど、結構かわいいとこだってあるし・・・別にシスコンって訳じゃない。

妹の方も、兄をそれほど嫌うでもなく兄妹仲良しといったところか?

まあ、仲良きことはなんとやらだ。


「お兄ちゃん、明日わたしの買い物つきあってください?」


唐突にお願いしてくる妹に「わかったわかった」といつものように適当に投げやりで答える。

明日は別に暇だったし、妹の買い物くらい付き合ってやろう。

もちろんシスコンな訳はない!

これは・・・そう。兄としても優しさ!

だから、シスコンとか全然ない。

光はうれしそうに蛍の前を走る。

無邪気なもんだ。

まあ、かわいげもあるが。

家まであと5分と言ったところだろうか?


妹のお願いより唐突だった。

目の前が爆発した。そう。爆発したのだ!幸いに光は蛍の横に戻ってきていたから、被害は蛍と同じく吹っ飛ぶだけですんだ。

ただ、腕をどこかに引っかけたのか、光の腕の部分の制服は裂け、間からは赤く染まった腕が見える。

やばい!と妹の走ろうとした蛍だが、立った瞬間クラッとふらついた。

額に汗が流れる。じゃまだ。腕で乱暴に拭き取るとズキッと頭が割れるような痛みが襲った。

あれ・・?

さっきまで真っ白だったワイシャツがいつの間にか真っ赤だ?

なぜ?!

まぁそれはMEの血な訳で、はぁ。

こりゃ死ぬんじゃ!!

と妹の前に自分がやばす!!!!

再度妹の方を見るとふらつく足取りでこっちに向かって歩いてくる。

よかった。そこまで重傷じゃないみたい?まぁ歩けるなら大丈夫だろ。たぶん?


「お、にいちゃん・・大丈夫・・?」


大丈夫じゃないです!

まぁ、私の妹君だってそれくらい見ればわかるだろうけど、社交辞令?


「大ジョブじゃないです」


まぁ普通ここは笑って『大丈夫大丈夫』とか言う場所なんだろうけど。


「出欠多量で死ぬかもしれない?」


まぁ、血が抜けてなんだか、クールになってきた。こんな時に冷静な判断を下せるとかやばいだろ。


「し、しっかりしてください!お兄ちゃん!!いま傷をふさぎますから!!」


光は吹っ飛ばされたとにの影響でぼろぼろになったスクールバックからタオルを取り出し蛍の頭を縛った。


「じっとしていてください!すぐに救急車を呼びますから!」


そう言って携帯を取り出した瞬間だった。


「きゃぁあああああああああ!!」


光の悲鳴。

光の体に変な触手?みたいなのが巻き付き、浚っていった。

はッ!?

なにそれ?

辺りは未だに爆風の影響で砂埃が舞ってよく見えない。

そんな中、一人ぽつんと取り残された。


いや・・・・。

・・・・おい。待てよ。

妹君がさらわれた!?!?


蛍は急いで立ち上がると、目が霞んだが光の消えた方へ足を動かした。

ふざけるなよ、おい。

やっていい冗談と、やらなくていい冗談と、最後にやってはいけない冗談があるとおもう。

これはどう足掻いても最後のだろ・・・。

あらかた蛍には今の触手がなんなのか想像がついてしまっていた。

たぶん、怪人か怪獣・悪の組織の奴らだ。今の爆発から言ってかなりの確率でそうだ。実際に被害にあったことはなかった。テレビで見たり、新聞・雑誌で読んだりはしてたけど、こうして被害を被られるのは初めてだ。

だけど、わかる。やばいって。

光が浚われた。

もう、これだけでやばすぎだろ!

きっと、あと10分もすればヒーロー&ヒロインがくるだろう。

だけど・・・そんなの待っていられるか!!

タオルできつく縛ったはずの頭からは、まだ少しだけ血が出ている。

目の前は霞んで見えるし、足はふらふら。

だけど。

蛍は進み、砂埃の先に影が見えたところで立ち止まった。


『ぎゃはははははは!!もうあきらめろ!おまえの負けなんだよ!!ぎゃははっ!』


『くっ!?』


声?

男の野太い声と、透き通るような声が苦痛を発する。

だんだん、砂埃が晴れ、視界が回復していった。

目の前にいるのは、黒い・・・そう、どこまでも漆黒の女性だった。

一瞬見惚れてしまいそうになったが!

いまは、光の方が優先だ。

視線を伸ばすと、怪人と・・・光だ!

怪人もまた黒く、2メートルほどの身長である。体にはゴツゴツした鎧のような物を付けていて、背中から光を浚った触手が6本でている。そのうちの一本がまだ光を掴んでいる。

それを見た瞬間、急激に怒りがこみ上げた。どうやら、光は気絶しているだけでほかに外傷を負ったような気配はないが。

とにかく、怒りがわいた。むかつくあの怪人。もちろんシスコンじゃないけど!妹の心配して何が悪い!


「後ろからこっそり忍び込めば・・・」


幸いまだ煙は晴れきっていない。怪人の注意もあの黒い人に向いている。


・・・なら!


すこし遠回りだが、怪人に見つからないように回り込む。怪人の背中が見えた。蛍は吹っ飛ばされていたバックを持ってから回り込んだため少しばかり余計に時間がかかってしまった。

怪人のほうは、なんか黒い人を触手でイタぶってる。なんか、目が入っちゃうけどちょっと我慢。ウン。オレ偉イ。

バックを漁ってあるモノを取り出した。


『ノコギリ』


残念なことに電動じゃないが。

なぜこんなモノ持っているかというと、ぶっちゃけ今日の授業で使ったからなんだけど・・・。まあ、なんにせよ。これであの触手をギッタギタに!

妹を傷つけた罪は死より重いと思い知れッ!!


「うぉおおおおおッ!!!!!」


ノコギリを両手で構え蛍は駆け出した。


『なんだッ!?』


『?』

怪人や黒い人たちがこえに気付き振り返った。

だが・・遅いっ!!

蛍は振り上げたノコギリを滑らすようにして光を拘束している触手を切断した。

そのままノコギリを投げ捨て落ちてくる光をキャッチ!

そしてあとは・・・

逃げる!!!

光を抱えて全速力!

そう思って足を踏み出そうとしたら、


「痛ッ!?」


なにか、足を取られて転んだ。

もちろん光は無事だが。

足元を見てみると、やっぱりなんでの触手・・・・。その先を少しずつ見ていくと・・・・なんか、怒った顔の怪人がいます。

もぅチョー怖い。


『きさまぁ!?よくもオレ様の触手を!糞ガキの分際で!!』


なんかもう、コレが人間だったら血管が浮き出てるくらい怒ってるよ?


『糞ガキが!くらえぇッ!!』


3本の触手に殴られ、4本目の触手に光をなんなく奪われ、足に巻き付かれていた5本目の触手によって投げ飛ばされた。

盛大に投げ飛ばされたが、なんとか受け身はとれた。

・・うん。まだ動ける。

頭がくらくらするが知ったことか・・・。

いまは自分の体調より光だ。

と意気揚々立ち上がると目の前に黒い人が飛ばされてきた。


「・・・・え?」


なんとも間抜けなリアクションしかとれず、そのまま黒い人とともに10メートルくらい吹き飛ばされた。


『ぅ・・・・・ッ』


黒い人は意識が曖昧なのかまともな言葉を発せないでいる。

よく見るとこの人アレだ!


『黒姫』


ヒロインの中でもトップクラスの彼女がなんで?でも、今はそんなこと気にしてられない。たとえ、最強クラスのヒロインが勝てない相手だろうが関係ない。勝てなくてもいいし。兎に角、光をもう一度奪い返して、後は一目散に逃げればいい。そのうちほかのヒーローが来てくれるだろ。

でも、逃げるとなると、この黒姫さんも連れて行かないと。このまま放って逃げたらきっとこの人殺されちゃう。

そんなの後味悪すぎる。光のためにあれだけ攻撃を食らってくれた人だし、この人も助ける。

蛍は決意すると迷わなかった。

都合よくさっき投げたノコギリもあることで。ノコギリを握りしめ、黒姫さんを地面に寝かせると蛍は走り出そうとしたが、


「痛ッ!?」


また何かが足を掴んでいた。

今度のはあんな気持ち悪い触手ではなく、なんか美しいって言っていいような黒姫さんの手だった。


『・・ま、て・・、少年』


「はい?」


何とも透き通るような声。うっかり聞き惚れてしまった。


『これ・・以上やったら、君は・・死ん、でしまうぞ・・』


さっきまでのダメージが大きいのかうまく喋れていないが、彼女はすごく蛍と心配してくれている。


『早くにげ・・るん、だ。・・彼女は・・私がなん、とか、する・・。私の、命・・に代えても』


そう言い終わると黒姫さんはゆっくりと上半身を起こすと蛍を自分の後ろに隠すように押しやる。

だけど、


「えいッ」


『うぬッ』


何となく押してみた。そしたら黒姫さんはコテンと倒れちゃった。ちょっと罪悪感。だけど・・


「俺は逃げない。光はこの手で助ける。それに命に代えてもとか、そんなコトされてもうれしくない」

「死ぬ覚悟ってのはすごいと思うけど、なんかやだ。俺は生きる覚悟持って光を助ける」


『・・・・』


「それにあなたはもうボロボロだし、女の人にそこまで戦わせられない・・・何というか男として?」


黒姫は眼を丸くした。


『君は・・・・・・・バカか?』


「・・・・バカじゃない・・・たぶん」


でも、バカかもなぁ。まぁ、でも、バカでもいいや。絶対光を取り戻す!

今度こそと蛍は走り出した。と思ったのだが、


「痛ッ!?」


再びの再びで足を捕まれて転んだ訳だった。


「今度は何ですか!?これでも俺結構ぎりぎりなんですから、あんまりダメージ増やさないでくれません!?」


もう、ほんと何なんですか?

あの怪人から光を取り返す前に転けすぎで倒れるって・・・格好悪すぎでしょ?


『君は本気なんだな』


「・・はい?本気です?」


『・・何故そこで?を入れる」


「いや、まぁなんとなく?」


『・・・・』

「いや、本気です。マジ!」


『・・・まあ、いい。君にコレを』


黒姫さんの手には携帯電話が握られている。

受け取って見回してみるが普通の市販の携帯電話だ。ただ、機種は1年くらい前の物だ。


「これが、どうしたんすか?携帯くらい俺ももってるんですけど・・・?」


ちゃんとポケットに入っている・・・・あれ・・・。

ポケットに感じる携帯の様子が可笑しい。

急いで取り出してみると、案の定壊れている。

真っ二つ。二つ折りが通常状態の携帯なのに四つ折りになっちゃった・・・。


『ふっ、ちょう、ど、良いじゃないか・・・』


「うぅ・・・先週買ったばっかなのに・・」


なんでだろう。涙が・・。ぼく、男の子なのに・・。あぁ、5万円・・。さらば五万円。


『君に・・この、携帯の、アプリ・・・【ヒーローアプリケーション】を託す・・、』


「・・・はぁ?」


『コレ・・を、使え、ば、きっと君の役に・・・たつは、ず・・』


「いや、あ、あの、大丈夫ッすか!?なんかすごい具合悪そう?もう喋らない方が・・」


それでも黒姫さんは喋り続ける。


『君に・・・私の、・・い、意志を・・託す・・・・ガクッ・・・』


バタッ・・・・・。

気絶しちゃった。

しかも、なんか黒いスーツ?って言うか戦闘服みたいなのが霧みたいになっていく!みるみるそれは晴れ、黒姫さんだったそれは、なんかJK?女子高生さんになってます?しかも、美少女だ!?しかものしかも、うちの高校の制服だし!?しかものしかものしかもので、なんか、生徒会長だし!?

なぜ!?

・・・・いや、まぁ、今はいいや・・。うん。

投げ飛ばされて結構経つ気がするけど・・怪人は・・。

うん。ちゃんといるよ、律儀に腕組みして待っててくれちゃってるよ。

なんか、この怪人・・・・バカなのか?

やっぱ、変身シーンとか、感動シーンとかはおきまりで待ってくれるものだろうか?

兎に角、光だ。まだ気絶してるみたいだ。

まぁ起きてたらきっとトラウマとかになっちゃうから寝ててくれた方がいいな。

蛍は地面に置いておいたノコギリを再び掴むと、持っていた携帯をポケットに入れた。

たぶん、壊れはしないだろう。

そう言えば、【ヒーローなんちゃら】ってアプリをどうとか言ってたっけ?

まぁ、いまは遊んでる場合じゃないし。

蛍はノコギリを構え走り出した。

もう、じゃまするモノはなにもない!


「やぁあああああああッ!!!!」


『ふんッ』


「ぶぁはっ!!」


まぁ、何だろ。一発で吹っ飛ばされましたよ。なにあの触手!?ぐねぐねと気持ち悪い・・。

くそ、もう一度。

蛍は再び、立ち上がり走り出した。

ノコギリを振り上げ向かってくる触手に振り下ろす。が、何とも残念なコトにノコギリの刃は意図も簡単に折れてしまった。そのまま、また触手に殴られた。


『なんだ、小僧。まだ向かってくるのか?』


怪人のくせに喋るな・・。むかつくから立ち上がってやった。どうすれば近づけるんだろう?う~ん。あんまり考えてる時間もないし、まぁ、正直突っ込むしか思い当たらないバカな自分いるからしょうがない。

よし。突っ込もう。

今度はなるべくあの触手に当たらないように。向かってくる触手を蛍はしゃがんでは避け、ジャンプしては避けを繰り返し、少しずつ怪人との距離を積めていく。

ノコギリが折られはしたが、武器になるのは別にアレだけじゃない。蛍は腰のベルトに挟んでいた工作用金槌を捕りだした。

光が捕まってる触手まであと少し・・・いける!

と思った瞬間、何度目かの鋭い衝撃が横腹に走った。

痛みが体に染みこむときにはすでに元の場所に吹っ飛ばされた後だった。すぐ後ろには黒姫さん?JK?生徒会長様がいる。

よくこんな体の細い女の子がバンバン怪獣と戦っていられたなぁ。

何でだろ?

生徒会長は文武ともに学園一だって噂があるけど、それにしたって、飛んだりできる訳じゃなかったし。あくまで人間だったし。あの力はどこから来てたんだろう?

まさか、ほんとに変身するだけで百万馬力とか?

ウルト○マン・・・・

仮○ライダー・・・・・

そういえば昔よく見てたなぁ。こんな状態だってのしみじみ思う。

まぁ、立ち上がりたいにも力が全然でないんだけど。

そう言えば、最近の仮○ライダーは携帯で変身してたな・・・・・・・・・・・・。



・・・・・携帯で変身。



まさか・・・な。

蛍はあくまで何となく、そう、何となく携帯を取り出し、何となくアプリ画面を出して、何となくアプリを探した。

そう、あくまで何となく。

黒姫さんの言ってたヒーローなんちゃらはすぐに見つかった。


【ヒーローアプリケイション】


あった。コレで変身できるなら、名前がそのまますぎる気がするけど。

何となくアプリを起動させてみた。すると携帯の画面が真っ暗になった。一瞬電源が切れたかと思って驚いたが、すぐに変化があった。


『生年月日・名前・性別を記入してください』


画面に映し出された文字だ。いやまぁ、なんなんだろ。別に期待はしてませんでしたよ?さすがにアニメとかの見すぎかなぁとかちょっと思っちゃったよ?

はぁ、とため息をつきながらも、蛍は携帯を操作し記入をしていった。


『ヒーローにとって最も大切なモノとはなんでしょう?』


うち終わると次の文字が登場した。

ヒーローにとって最も大切なモノとは?

力?

財力?

正義?

否、

どんなときでもあきらめない心?

否、

違う。

ヒーローにとって最も大切なモノとはやはり、

蛍は動かなくなってきた指を必死に操作して文字を打ち込んだ。



『愛』



だろ?


言うじゃん。『愛』は世界を救うって。

入力してみても特に変わったコトはない。やっぱり、パッチモンか。

そりゃ、携帯で変身なんてテレビの中くらいなもんだわな。

はぁ、とため息混じりに残り少ない力を振り絞り立ち上がる。

今度倒れたらキツいかも。

それくらい自分でも解るほど蛍の体はガタがきていた。だけどあきらめる気なんてさらさらない。・・・必ず光を取り返す!

とまぁ、走りだそうと思った瞬間手のなかの携帯が輝きだした。


「!?」


手の中の携帯はさらに輝きを増し、熱をおび始めた。

でもその熱は何故だか心地いい。

その光はまるで傷を癒す様で。

まさか・・・・・この携帯・・・・・本物かも・・・!?

そしてコレが本物だとすると、この次の展開はやはり。


変身!しかないだろう!!


別に正義のヒーローって柄じゃないけど、使える力ならなんだって使ってやる。


「   変身ッ!!  」


ありきたりの変身ポーズを決め『変身』の言葉を叫んだ。

あまりのまぶしさに目を瞑ってしまっていたが、だんだんと明かりが弱まっていく。

さぁ・・・・変身?したのだろうか?

目をゆっくりと開いていく。

まず目に入ったモノは自分の両腕。

シルバー?いや、灰色か、メタルカラーと言って良いのか?

兎に角、そんな色の軽鎧が腕に装着されている。足も、腰も、胸も、基本的に同種の軽鎧で統一されているようだ。顔・・・は見れないけど・・。手で触ってみる。まるでヘルメットを触っているような感触。まぁ、姿なんてどうでもいいや。今は目の前の触手怪人から光を取り戻さないと。

さっきまでの脱力感はなく、今なら100メートルくらい5秒で走れそうな気がする。

まぁ、そろそろ、行くか。

蛍は走り出した。

足が軽い。

怪人はこちらの変身に驚いたようだが、すぐに触手を飛ばしてきた。

だけど・・。見える!!

蛍には怪人の触手の動きが見えていた。そして、動く!体は軽く、思った通りに動いてくれる。飛んでくる触手を寸前で交わしながらも全力で走るのと変わらないスピードで走れる。そのまま一気に怪人の懐まで潜り込んだ。驚いている怪人の顔がよく見えた。怪人は慌てて、蛍を掴もうと腕を伸ばしてきたが宙をきる。蛍は怪人の腕を避け、後ろに回り込んだ。狙いはもちろん光を掴んでいる触手だ。触手を掴み、思いっきり引っ張る。今のこの力なら簡単に引きちぎるコトができる!

そのまま落ちてくる光を抱えると、バックステップで黒姫さんのいるところまで戻った。


「・・もう大丈夫だからな」


気絶しているから聞こえないだろうが、蛍は優しくそう言い、光を地面に寝かせた。

いつもならこのまま光を連れて即行で逃げるところだけど・・・

今の蛍はヒーローなのだ。光を助けるためだったけど、ヒーローになったのだ。昔からヒーローと言えばどんな敵を前にしても逃げてはいけないって言うし。なんだかんだ、黒姫さんに頼まれたし・・・ね。意志を託すって言ったんだもんね。

あの人、黒姫さんのヒーローっぷりはよく聞く。いまの世の中ヒーローは意外とたくさんいる。蛍が知るだけでも何人かいるわけだけど、そのヒーロー全員が正義をかざしているかというとそうでもない。得点稼ぎのように重要人が襲われているときだけ登場したり、人質の安全を考えない行動をするヒーローもいたりする。

そんなことだから子供たちがヒーローに幻想を抱いたりするコトも少なくなった。

でも、そんな中でも少数のヒーローは弱きを助け悪気をってのを実現させている。

黒姫さんはその代表のような人だ。人質になった光のために傷ついてくれたりもした。

そんな人に意志を託されたら、もぅ・・・ね、黒姫さん・・・会長、美少女だし・・・・。まぁだから、・・・あいつ倒す!

蛍は怪人に向き直った。


『きさまぁ、何者だ?』


なんとも怪人らしい低い声。笑っちまうよ、はっはは・・・。


「オレは・・・」


何者って・・何者?ヒーローって答えれば良いの?


「オレはヒーローだ」


『そんなことは見れば解る!!』


じゃ、なんだよ!何!?名前ですか!?黒姫さんとか、そう言った風なやつ?


「・・・灰色仮面」


とっさに出たのがこんな名前だった。なんだか頭に浮かんだ。まんまだな。灰色の仮面。はぁ、まあいいや。


「今からオマエを倒す」


『ハッ!!雑魚が調子扱いてんじゃねぇぞ!!テメェみてぇなひ弱そうな奴に負けるかってんだぁ!!』


「なッ!ひ弱だと!!」



このオレに向かってひ弱だと!?・・・ふふふ。いいだろぅ、オレの本当の力を見せてやろう。

蛍は一歩、堂々とした面持ちで前にでた。

怪人はびびったか?少し下がった。

ふん!

そう、いまのオレは無敵!パーフェクトヒーローなのだ!!!


「ふがぁ?!」


気付いたら3メートルほど飛ばされていた。

触手がうねうねと戻って行くのが見えた。

しかも、触手は二本同士が巻き付き合った太いモノへと変化していた。


「・・・・あれ?」


見えなかった。いや、何となく見えたけど体が全然反応しませんでしたよ?

なんで?

何故だ!?

たぶんさっきまでの感覚なら見切れた気がする。あくまで気がするだけだけど!


『どうしたぁ?口だけヒーロー!さっきより弱くなってンなぁ!』


くっそ!言い返したいけどその通りだ。

蛍は拳を握り立ち上がった。

まずは考えるんだ。何故突然見切れなくなったのかを、さっきまでは妹を助けようと必死で、あんな触手に妹をいつまでも絡めておくわけにはいかない!

たくっ、ふざけるなってんだ!


そしていまは妹を取り敢えず取り戻しホッとしたところ・・・。つまりアレか?気が抜けたってやつ?いやいや!人質助けて気が抜けてやられちゃうヒーローってどうなの!?いや、いないだろ?そんなヒーロー。

兎に角、気を引き締め直さないと・・・。

蛍は精神を集中させるためゆっくり目を閉じ深呼吸をした。

すぅーはぁー

すぅーは・・・・ぐわしッ!?

やられた。

目を開けると触手がうねうねしてた。


「ッ!卑怯だぞ!コッチが集中しなおしている隙に攻撃するなんて!ここはお約束で黙って見守ってるのが筋だろ!?」


『馬鹿かキサマは・・・ふん、アニメや漫画の見すぎだガキがっ』


っく、確かに・・・深夜アニメと見ちゃってますが何か!?触手うねうね野郎に文句言われる筋合いはない!


「くそっ、全然集中できない」


これもアレか?!この怪人の能力か?だとしたら、この怪人・・・・できる。ごくり。

蛍は生唾を飲み込み怪人を睨んだ。

とにのかくに、動きださないと。

蛍は走りだした。

気が抜けているのかもだけど、変身して最初の痛みはなくなっている。そして、防御力も上がってるみたいだ。さすがにこの灰色軽鎧は伊達じゃない!

走る蛍を触手は追う。触手凄まじい早さで、尚且つ複雑な動きで蛍を狙うっている。

今現在、触手の数は4本が合わさって2本だが、大きさ、速さはさっきの倍だ。

複雑な動きの触手を避けるのは難しく、完全に避けきることはできない。何回か蛍の体をかすめる。

くそっ!

蛍は嘆く。

何か武器みたいなモノがあれば、あの触手をさばくコトができるかもしれないのに。ノコギリはさっき折れてしまったし。くそっ!ヒーローなんだから剣とか銃とかソレくらいの装備が合ったって良いじゃない!!最低限必殺技とかさぁ。ないの?この灰色仮面様には、必殺技もないの!?つか、やっぱあの携帯不良品だったんじゃない?

いまになって不安になってきた。

やばい。お腹痛い・・・。こんな時、必殺技でもあればなぁ・・・。

ふと思った時だった。

腕に着いている小手みたいな軽鎧の先端の三つの穴が光りだした。

もしや、コレは!?必殺技か!?

・・・光る拳。・・・シャイニング・フィスト

うん。なんか格好いいじゃん?まあ、名前なんてどうでも良いのだ。

いまは、コレを怪人の顔面にでもたたき込んでやるだけなのだ。

構えを取ろうとしたとき既に触手はコチラに向かってきていた。

蛍はそれを横に転がり避け、急いで立ち上がった。


「はあぁぁあっ!」


そしてそのままダッシュ!全速力で走る。

手の光はどんどん輝きを増す。

なんか、温かく、暖かく・・・・あれ?なんか熱いような・・・・気のせい?でもなんか鉄が焦げたような匂いが・・・。

右手をみた。

光ってる

そして黒い煙り。

熱い。

えッ!

まさかと思ったがダメージ受けている!普通、こういうの自分は受けないよな!

火吐く奴とか舌、火傷するよ!!

やばいな。

早めに必殺技をたたき込まないと。

触手はすぐに蛍を追い、連撃を仕掛けてくる。

転がり避け、跳ねて避け、しゃがんで避け、滑って避け、兎に角避けて避けて少しずつ怪人に近づく。

腕の光はそろそろやばいかもしれない。右手の感覚が薄くなってくる。何か隙が出来れば。

やるしかないか・・・アレを。

怪人相手に通じるか解らないが、もう、これしか手段はない!

蛍は人差し指を怪人の後ろにびしっと指し、叫んだ。


『あっ!UFOだっ!!』


『何ィッッ!?』


怪人は蛍の指差す方へ振り向いた。


「UFOだと!ど、どこだ!?」


ふっ、計算どおり。


『くッ!いないじゃな・・・ッ!?』


この隙を待っていたんだ。

怪人の隙を突き、懐に飛び込んだ蛍は拳にこれでもかと言うほど力を込めた。


「くらえッー!!スーパーパーンチ!!」


ゴスッン!

と気持ちいい音とともに拳は輝きながら怪人の顔にめり込んだ。

すぐに拳を怪人の顔から抜き、距離を取る。


『ぐっ!?がぁっ!ひ、卑怯な・・ッ!』


卑怯だと?


「オレの妹に手を出した時点でオマエは底辺の底辺の最低以下なんだよ。そんなオマエに卑怯と言われる筋合いはない」


『ぐっ!理不尽な・・ッ!』


怪人は壊れた顔を中心に光りだし、次第に形を崩し始めた。

数十秒で跡形もなく消え去った怪人のいた場所を一別し蛍は、灰色仮面は妹のもとへと戻った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ