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父→娘

 ミーの家は喫茶 BeLiebeから南に5分ほど下がったところにある一軒家だ。

「さて、ここだな。」

 手紙の内容に従って敷地内を進むと、そこには確かに引き出しが置いてあった。

「2個目ってどっちから数えてだ?」

 俺の疑問はハルの一言ですぐに解消された。

「引き出しに番号が振ってあるから、たぶんそれの2番目だな……っと、ミー。ここみたいだぞ。」

 ハルはミーに場所を譲る。

 そこは駐車場のようになっていて、大人3人が入るには少し狭かった。

「じゃ……開けるね。」

 そう言ってミーは引き出しを開けた。

「………………手紙……?」

 引き出しの中には1通の手紙が入っていたのだ。

「おいおい。また暗号か?」

「ううん、違うみたい……読むね?」

 ミーは手紙を声に出して読み始めた。


 *********************


        ミーへ

 この手紙をミーが読む頃には父さんはもうこの世にいないでしょう。こんな手紙を残したのは他でもありません。今まで言えなかった気持ちをミーに伝えたいと思ったからです。

 ミーが中学生の頃、母さんが帰らぬ人となってしまい、父さんも後を追おうと何度も思いました。

 けど、その度に部活や勉強に加えて、家事をすべてやりながら笑顔で父さんを支えてくれるミーに救われました。父さんの前では笑顔を絶やさなかったミーだったけど、陰で一人で泣いてたよね。

 そんなミーを父さんは支えてあげられませんでした。頼りない父さんだったよね。ごめん。

 ミーが自分の会社をおこそうとしている理由が父さんのためだってこと、ハル君とケイ君から聞きました。(本当にいい子だね。)父さんの腰をいたわってくれていたのは知っていたけど、まさかそんなことまで考えてくれているとは驚きと感謝でいっぱいです。ありがとう。

 でも父さんはミーに、ミーが本当にしたいことをしてほしいです。

 父さんは先に母さんのところにいきます。ミーのことを上から見守ってるからね、なんて父さんは言いません。ミーなら大丈夫、そう信じているから。

 もし、何か苦しくなって、堪えられなくなったなら、そのときは空か海かで父さんのことを呼んでください。行けたら助けにいきます。(無理でもハル君とケイ君をむかわせます。)

 安藤にThankと言うことも忘れないでね。

 きっと、ミーの役に立ちます。

 最後に……いっぱいぶつかって、いっぱい喧嘩したけど……ミーが父さんのことを嫌いでも、父さんはミーのことが大好きだからね。

                 父さんより


 *********************


 読み終わったとき、ミーは震えていた。

「……いい、親父さんだな。」

 ハルがそう言うと、

「どこが?!やっぱ馬鹿だよ!せめて上から見守っててよ!行けたらいくって何?!初めからハルキとケイちゃん頼るよ馬鹿……。」

 そう言うミーの声は震えていた。

「おいおい……いくら何でもそれは言い過ぎ…。」

「ケイ、言わせてやれ。」

 ミーはまだ文句を言っている。

 その顔は涙でグシャグシャだった。

「ほんと頼りない父さんだったよ………泣いてたの知ってたこと今さら言われても……謝罪なんか要らないし……。

 それに……私が父さんのこと嫌いなわけないじゃない!私も………私も父さんのこと大好きだよ。」

 ミーの声が静かに響いた。


 *********************


「なぁ、ミー。お前これからどうするんだ?」

 俺たちはあれから喫茶 BeLiebeに戻ってきてハルが淹れてくれたコーヒーを飲んでいた。

「ん~……とりあえず、会社おこすのは諦めるわ。

 お金も社員も無いから。」

「そっか。」

「うん。今は、ね。」

「えっ?」

「お金を貯めていつか会社をおこすの!

 だからお願い!ハルキかケイちゃん、私を雇ってください!」

 突然のミーのお願いに俺もハルも驚きを隠せない。

「何でだよ。前の会社戻れよ。」

 ハルがそう言うと、

「戻りにくいでしょ?

 それに、お二人さんに美人社員を提供しようかとね。ね?どう?」

「俺は却下。ケイに頼めよ。」

「はっ?!俺も嫌に決まってるだろ。」

 と2人でミーの押し付けあいをしていると……

「ちょっと!そんなに私が嫌なの?

 高校の時のお二人さんの、コーヒーよりも苦~い思い出の数々を、お客様に暴露してもいいんですよ~?」

 この一言がキッカケで俺とハルはじゃんけんで、勝っ(てしまっ)た方がミーを働かせるということことでまとまり、

 見事ハルがじゃんけんに勝ったのだ。

「よし!決まりだね。

 じゃ、これからよろしくね?ハルキマスター。」

「…………ああ……よろしく…。」

 対照的な2人を見て楽しんでいるところにお客さんが入ってきた。

「いらっしゃいませ。」

 こうして、ミーが喫茶 BeLiebeで働くことになったのだ。


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