手紙~謎の始まり~
「いらっしゃいま………ミー……。」
「えっと……やほ。」
「……このたびは、何とお悔やみ申し上げていいのか………。」
「いやいや、そういう堅苦しいのはいいよ。」
「でも………。」
「ほら!私はお客様だよ?」
「………失礼しました。ご注文は?」
「う~んとね……。やっぱり、コーヒーかな。
コーヒー1杯くださいな。」
「かしこまりました。」
そんなやり取りをするハルとミーの声はどちらも震えていた。
ミーの父親が亡くなってから1ヶ月。
俺がミーへの伝言をハルに伝えてから3日後、容態が急変したミーの親父さんは帰らぬ人となった。
それからは、お葬式やら何やらで忙しかったようで、この店に来たミーの顔はひどく疲れているように見えた。
「あ、ケイちゃんも来てたんだね。」
言いながら、ミーが俺の隣に座る。
「おお………まぁな…。」
俺は、何も話せなかった。何を話せばいいのかわからなかったのだ。
それからしばらくして
「お待たせしました。」
ハルがコーヒーをもってきた。
「ありがと……。」
ミーはコーヒーの入ったカップを受けとるとそのまま一口の飲んだ。
「…美味しい……。」
それから、ポツリポツリと小さな声で話始めた。
「結局、父さんは私のこと、最後まで理解してくれなかったな~……死んじゃうってわかってたら………もっと…ちゃ……と、はな……ばよかっ…た………。」
最後は泣き崩れて何を言っているのかよく聞こえなかった。
俺たちは、聞くことしか出来なかった。
何も言えなかった…言ってはいけないと思った。
少しして泣いて落ち着いたのか、ミーはホットケーキを食べたいと言い出した。
メニューにはないはずなのだが、ハルが用意を奥のキッチンでしていると…
「そういえば……。」
とミーが鞄の中から1通の手紙を取り出した。
「2人は、この手紙の意味わかる?」
「ん?ちょっと見せて?」
俺はミーから手紙を受け取る。
「どれどれ………。」
受け取った手紙を声に出して読んでみた。
「『玄関から
死にに来た
散歩行ったら
米の引き出し
ある。
サン、ゴ、ナナ、ジュウイチ……』
なんだこりゃ……。おい、ミー。
お前、これ誰からもらったんだ?」
「……父さんよ。正確には、実家の居間のテーブルの上に私宛てで置いてあったのよ。」
てことは、ミーの父親からの最後の手紙?
それにしても……
「どういう意味だ?う~ん……。」
さっぱり分からん。俺が頭を捻っていると…
「お待たせ。」
と言いながら、ホットケーキがのった皿をミーの前へ置く。
「ありがと。ごめんね?無理言っちゃって。」
「いや、大丈夫だよ。
それより、手紙がどうしたって?」
「これだよ。ミーの親父さんからの最後の手紙。
さっぱりわかんねぇ。」
俺はハルに手紙を渡しながら言う。
「あ、俺、もう1杯コーヒー欲しいな。」
「…………………。」
「俺、コーヒーもう1杯欲しいです。」
「……………………………。」
ハルは聞こえてないのか、反応がない。
「ハルキ~?」
ミーが声をかけても返事をしない。
「ハル……?」
もう一度声をかけてみると……
「……なるほど、そういうことか。」
手紙を見ながらハルがそう言った。
「え?!ハルお前、この手紙の意味わかるのか?」
「ハルキほんと?!」
俺たちの驚きとは反対にハルはあっさり答える。
「ん?ああ…まぁな。あ、ケイ。
コーヒー今淹れるから少し待ってて。」
「いや、コーヒーもだけど…それよりも……。」
「手紙の意味教えて?ハルキ」
「まぁ、慌てるなって。
ミーも、もう1杯コーヒー飲むだろ?
今淹れるから待っときな。説明はそのあとだ。」
そう言うと、ハルはまたコーヒーを淹れ始めた。