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そのような風潮ですので、近代に古風の歌を創ろうとしたものはわずかに数人しかおりません。
それらの作風は私が思いますところ、完璧と言うわけではなく、それぞれ長所短所の特徴がありますので、いったんここでそれを批評してみたいと思います。
華山僧正(遍照)の歌はもっとも良い感じに作られております。
しかし、その言葉は華やかですが空想ばかりで、絵に描かれた美しい女性に憧れているような感じです。
在原中将(在原業平)の歌は想いが詰まり過ぎていて、言葉に表現しきれていません。
しぼんだ花で色はもう無いが香りだけ残っているような感じです。
文琳(文屋康秀)はとても表現力が豊かです。
ただ、その表し方は大衆的で、着飾って立派に見えている商人のような感じです。