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この世にあるすべての事は移ろいやすく、その場の喜怒哀楽もまたひと時で忘れ去られてゆくものです。
しかし、その想いを詞にすれば形に残ります。
詞は、喜ぶものの詞は楽しげに、悲しむもの詞は悲しげに、その心の内を記録し表現できます。
これを表すに和歌より良いものは無いと存じます。
和歌とは人の心を根として生まれ、言葉となって花開くものです。
和歌には中国の詩経と同じく、
風 -ふう- (伝承)
賦 -ふ- (感想)
比 -ひ- (比喩)
興 -こう- (戯れ)
雅 -が- (儀礼)
頌 -しょう- (賞讃)
の六つの基本形がありますが、
形式など無くとも春になれば鶯が花中に囀り、秋になれば蝉が樹上で鳴きだします。
これは自然の理、つまり、和歌は天地創造の時代よりあったわけではありません。






