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空の黒騎士  作者: 楽機
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【5.その後の五人】

【5.その後の五人】


 ニードリッヒはまず本国に無事であるということ、共和国との講和は予定通り行うことを伝えた。そしてノウトラルシュタットの要人が見守る中、十年にも及んだ帝国と共和国の戦争はここに幕を閉じる。

 帝国に戻った後、周囲の反対を他所に異例の若さで皇帝に即位した彼女は今回の事件の黒幕を調べ上げるために皇帝直轄の情報機関を組織。ほどなくして強硬派やその協力者たちは投獄された。その後事件の全容を共和国側にも伝え、両国の関係改善に努める。

 国内の格差問題に関しても解決のために奔走し、貴族たちの反対を押し切って身分制度の廃止を宣言した。一部の貴族階級からの反発もあったものの、ニードリッヒの人徳とその真摯な態度に多くの国民が彼女を支持することとなる。特にスクラブの人々からの支持は絶大であった。

 最終的には自らも皇帝の身分を国家の象徴と位置付け、施政権を国民議会に譲渡した。その後二度に渡る世界大戦が起こるが、彼女は帝国の象徴として周辺各国との友好のために働き、その生涯を捧げた。


 エデルはその後も軍に残り、二度の世界大戦を生き抜いた。身分制度の廃止によってそれまでにない異例の早さで昇進し、初のスクラブ出身の空軍大佐にまで上り詰める。その際、この事件の働きに対してポッセ、ブロイ兄弟と共に勲章が授与された。幾度となく昇進の話も挙がったが、前線から退くことを良しとせず、大佐の地位に留まる。

 退役後は空軍士官学校で教鞭をとり、若い世代の人材育成に尽力を注いだ。


 ポッセはエデルと共に二度の大戦を戦い抜き、その後すぐに退役。退役後は帝国の片田舎で牧場を営み、妻との間に三人の子供を設け幸せに暮らす。


 ブロイ兄弟は三人と別れた後、無事帝国国境の空軍基地に到着。しかし到着した途端憲兵隊に拘束され危うく軍法会議に掛けられるところだったが、ニードリッヒの言伝のおかげで難を逃れる。

その後兄弟は別々の部隊に異動になり、一度目の世界大戦に従軍した。ブロイ兄はその際、任務中に消息を絶つ。遺体はまだ見つかっていない。

それをきっかけに大戦後ブロイ弟は軍を辞め、作家になることを決意する。

彼の書いた本は幸運にもベストセラーとなり、世界各国で翻訳版が発売されるほどであった。


その後も四人は互いに手紙を出しあい、会うことはできずともその友情が途切れることはなく末永く幸せに暮らす。

気持ちはあの若き日のまま。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 まずは読んでくださった皆様に厚い感謝を。

 今回私がこの物語を書こうと思い至ったのは、先日古い写真を見つけたからだ。その写真には飛行服を身に纏い、仲間同士で肩を組んで笑う少年たちの姿が映っていた。若くして戦場へと赴くこの少年たちを今の人たちは憐れむかもしれない。しかし、私はただ単純に“可哀そう”などとは思って欲しくはない。ポッセならきっと、「そんな偽善なんていらねぇよ」と毒づくはずである。彼らには彼らなりの、戦う理由があったのだ。

さて、この小説を書くに当たって、特に後半の大部分については多分に私の想像が入っている。何しろ昔の話であるし、それも彼らからの伝聞に過ぎないからだ。その点はご了承いただきたい。しかし、当時の彼らならきっとこんな風なことを思い、話したに違いない。

最後に出版社の皆様、私の古き友人たち、そして公務の合間を縫って取材に協力してくださった皇帝陛下と、親愛なる私の兄へ。

最大限の感謝をここに述べたいと思う。本当にありがとう。

―― 作者 フランク・ブロイ


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