48 決断(4)
レイ君を見送った後すぐにカズ君へ電話をかけ、レイ君から話があった事を伝えた。
『よかったね、カズ君』
『うん。正直言ってかなり驚いたけど、それ以上に嬉しいよ』
電話口でもカズ君が相当喜んでいるのが伝わってくる。
『それにしても、カズ君とはお昼休みに会ってるのにそんな嬉しい話を聞いてたなんて、ちっとも気がつかなかったな』
『あはは……レイ君自身が美紀ちゃんに伝えるって言ったからね。本当は言いたくてしょうがなかったんだけど』
その代わり……という訳ではないが、お母さんが『いい加減夕飯を食べなさい』と呼びに来るまでずっと話し込んでしまった。
まだ「レイ君がバンドを続けてくれる」という事しか決まってないけど、カズ君の声はここ最近で一番弾んでいた。
翌日、やはりレイ君は学校に姿を見せなかった。
そして竜岡さんが……いつもより遅めに登校してきたとはいえ、直接自分の席へ着いてしまった。
今まではレイ君に合わせて遅刻ギリギリになってしまっても、私と中里さんには必ず声をかけに来ていたのに。
HRが終わり一限目の始まるわずかな時間、竜岡さんの席へ寄ってみた。授業の準備をしている竜岡さんの表情は暗く顔色が青白かった。
「竜岡さん、大丈夫? 顔色が……」
「ええ、平気」
そう言うが声に力が無い。
三限目からは自習だ。もしこのままなら保健室へ連れて行った方がいい。
そしてやはり二限目が終わると竜岡さんから「保健室に行きたい」と言ってきた。
しかし廊下を歩く竜岡さんの足取りは思ったよりしっかりとしている。どうも風邪などの体調不良とは少し違うようだ。
授業中も気になっていたのだが、もしかしてレイ君の進路について……なのだろうか。
ずっと黙っていた竜岡さんだったけど保健室に着く前に突然口を開いた。
「少し話しがしたいの……いいかしら」
「うん」
何となくそんな予感がしていたので驚かなかった。
保健の先生に暫く付き添いたい事を伝えると許可がおりた。ベッドには誰もいない。カーテンをひいて小声で話せば大丈夫だろう。
竜岡さんはベッド腰掛け、私はイスに座る。
「昨夜、彼から聞いたわ」
竜岡さんは私の顔を見ずに話しだす。
「進路の事?」
「そう。音大の進学は止めてバンド活動する話」
「反対?」
「大学にいっても出来るでしょう。卒業してからでも出来るじゃない」
普通はそういう反応だろう。しかし竜岡さんなら応援してくれると思っていたのだけど、そんな感じはしない。
「中途半端な事したくないんだよ、レイ君は」
「…………」
「それこそピアノを捨ててまでバンドを選ぶ……相当な覚悟だと思う」
「私だって理解してるわ。彼がどれだけ音楽に対して真剣かって」
深く俯いていているので表情が分からない。でも初めて聞く暗い声色だ。
「協力もしてきたつもり。もっとも直接手伝うのは断られたけど」
確かにずっと練習への顔出しや文化祭の手伝いはさせていなかった。




