39 最後の文化祭(1)
最後の文化祭ではレイ君は実行委員会と交渉して、RIZEの単独ライブを行う事が決まった。去年の文化祭で体育館がパンク状態で、入れなかった人から多くの苦情が寄せられたからだ。そのために、2日間でそれぞれ1回ずつ整理券を発行して対応する。
予算や時間的の都合で活動はコンテストだけに絞ってしまったので、今回がいわゆる『初単独ライブ』だった。
「整理券を配る人員はもらえなかったでしょ。どうするの?」
張り切っているレイ君に私は質問した。
「俺らと美紀で5人……」
「え、私も?!」
「え、当然だろ」
驚く私に、驚かれた。
「それでも足りないんじゃないかな」
「あと下級生の有志が5人ほど手伝ってくれる」
西高の生徒には告知して事前に配るそうだ。
「一人一枚、西高生は名簿にチェック入れるの?」
「実行委員会から言われたんだ。面倒だけど」
「その事前配布……私も手伝うのかな」
「え、当然だろ」
やっぱり驚くのですね。
初のチケット配布という慣れない作業だったが、なんとか無事に終えた。
「これならライブハウスでも、さばけたかなぁ」
チケットの残数を見て飯沼君がそう言った。
「文化祭はタダだから……」
几帳面にチケットをまとめながら畑君が呟く。
「身も蓋もないね~」
こんな二人のやり取りも卒業したら見られない。それぞれ別の地方大学へ進学を希望していたのだ。
「二人が浪人すれば来年もライブが出来るかもよ」
カズ君が爽やかに言う。
「それは勘弁して下さい」
見事にハモった。
だけど、この二人が残ったとしてもレイ君は……。
笑い合う三人を前に棘のように刺さる感情が疼く。
カズ君はレイ君の進路について、もう一言も口にしない。私に話した時点で踏ん切りをつけているのだろう。
でも私は一生懸命バンド活動をするレイ君に、少しでも期待してしまう。
もしかしたら……と。
単に音楽の事に関して、手を抜きたくないだけなのだろうけど。
文化祭の当日、整理券配布を聞き付けていた人達が体育館裏に行列を作る。
「こう列を流して……」
お兄ちゃんが大活躍だ。
お手伝い有志の中に竜岡さんはいない。
「何かあっても、すぐ対応出来ないから」と、レイ君は言っていた。
改めて生徒以外の観客を見ても、6割は女の子だ。そして「一人一枚、一日分」と説明すると、食い下がるのはほとんど女の子だった。
お兄ちゃんが出て来るとすぐに収まったが。
(気弱な性格じゃなくても、竜岡さんだと辛いかな……)
レイ君の彼女だと知られると、もっとあたりが強くなるかも知れない。
(でも私はOKなんだ)
確かに私は試合だと思うようにして、多少の言動には動じなかったが。
まだ券を貰いに来る西校生徒もいて混乱もあったが、なんとか落ち着いた。
「明日もこうかな……」
「ははは、疲れたかい?」
私がグッタリしているとお兄ちゃんが笑った。
「お楽しみはこれからだよ」
そうだ。本番はこれからなのだ。




