02 高校入学(2)
教室はすでに半分以上の生徒が来ている。
ほとんどが初対面同士なので話し声も控え目だ。それでも私達が入ると一瞬だけ声が途切れた。
「出席番号順だろ?」
レイ君がチラッと私を振り返って言った。
「そう、だよね」
ざわめきは戻ったけど何となく緊張感のある雰囲気に、思わず小声で返事をしてしまう。
「じゃあ」
レイ君は堂々と自分の席に歩いて行った。
(私の席は……ここだ)
女子の席は窓際のようだ。クラス発表では出席番号が後ろから2番目だった。机の上にはプリントが置いてあり、名前が書いてあったので間違ない。
「おはよう」
席に座る前に私は周りの人達に声をかけた。
「おはよう」
「おはよう……」
全体の緊張感からすると、拍子抜けするほど普通に返事がかえってきた。
「何処の中学校?」
そんな話題をしていたが、誰からこんな質問された。
「一緒に来た人、彼氏?」
周りから興味津津な視線を感じる。
「違うよ」
私は苦笑混じりに答えた。
「同じクラスだったけど、全然そんなんじゃないよ」
みんな一斉に『なぁんだ』と言った。
「でもお似合いだよね」
「お似合い?!」
「ホントの所はどう?」
「えっ?!」
今までにない突っ込んだ質問にタジタジとなる。
「おはようございまぁす」
その時後ろからおっとりした声が聞こえ、私の後ろの席に着いた。
「おはようございます」
ちょっと助かったなと思いつつ挨拶を返す。
「竜岡です。よろしく」
可愛い人で微笑まれると私でもドキッとする。またかなり小柄なので私が前の席だと申し訳ない。実際HR前に担任が「前、見えるか?」と声をかけた位だった。
入学式の後、クラスで自己紹介があった。
レイ君はその時に、バンドメンバーを探している事を言った。
(見つかるといいなぁ……)
早ければ9月の文化祭。もしかすると、その前にライブハウスやコンテストにも出られるかも知れない。
春休み中も2人で練習していたけど、やはりバンドとして聴いてみたいのだ。
「うちのクラスに、ギターを弾く人がいたよ」
帰る途中、カズ君が嬉しそうに言った。
「バンドを組んでた事はあるの?」
「うん。全員違う高校に進学して解散したって」
「ふーん……ちょっと話しをしてみるか」
レイ君もその人に興味を持ったようだ。
「1組はどう?」
「今のところ居ないな」
「もっと呼びかけよう」
二人がバンドの話をするのを聞いているだけで私も楽しくなる。
中学と違い楽器の経験者は多く、早速何人かと会って演奏を聴いたようだ。
そしてもう一ヵ月後には、ギターをカズ君と同じクラスの畑君。ベースはその畑君が楽器店でよく会った、と紹介された5組の飯沼君に決まった。
今回もレイ君が積極的に動き、リーダーになった。
「また新たな気持ちで始めようって、バンドの名前を変える事になったんだ」
初めてのミーティングが終わった後、カズ君が教えてくれた。
『BRAVE』『STIMULUS』ときて、次は何になったのだろう。