17 文化祭(3)
「RIZEが一番手でしょ?」
「うん」
周りを見ると多くの人が集まっている。
(緊張してきた……)
毎回の事だが出場しない私もドキドキしてきた。
「あ、出て来たよ」
RIZEのメンバーが舞台に上がった。レイ君の案でメンバーはワイシャツの下に黒いTシャツを着ている。
楽器の準備をしている間、カズ君は何度か深呼吸をしていた。それから会場を見渡すといつもと違う厳しい目。いや、バッターボックスに立った時ああいう表情だ。
準備はすぐに終わりメンバーはそれぞれの位置につく。
レイ君はスティックを構え、メンバーを見渡すとカウントをとった。
畑君のギターが鋭く鳴る。
飯沼君とレイ君のリズムがズッシリと響く。
ノリの良さに観客はすでに揺れ始めている。
(いい感じだよ、みんな)
「……ッ!」
歌い出す前、カズ君は何かシャウトした。そして力強く歌い出す。
『おぉ……』
観客席からどよめきがおこった。
大丈夫だ。リハーサルよりずっと声が出ている。
メンバーは棒立ちで演奏せず、出来るだけ動きを取り入れている。また比較的よく耳にするメジャーな曲なので観客席は瞬く間に引き込まれた。
勢いは止どまる事無く2曲3曲と続く。
「確かに辻村君は歌うと全然違うね。格好いいよ」
曲の合間に竜岡さんがそう耳打ちしてきた。
私は何も言わずに微笑む。普段でも格好いいもの。
「ギターの早弾きスゴイ」
「ベースが安定してる」
次々と声があがる。
「ボーカルがいいよ。高い声なのに力があって」
メンバーへの褒め言葉は私がしっかり伝えよう。だけど一番注目を集めたのは、やはりレイ君だった。
「ドラムの人格好いい!」
「格好いいって言うか、中性的じゃない?」
「あんな華奢なのに音は力強いよ」
ドラムからレイ君の顔がよく見えるのは通常よりイスを高く設定してあるから。本当は叩き辛いらしいがあえて変えたそうだ。
それでも技術的には全く変わらないので、たいしたものだと思う。
小・中学校ではレイ君の事を知ってる人が多かった。ステージに上がるだけで黄色い声援が上がり、バレンタインは大騒ぎで……。
それに比べたら今日は静かな方だけど、これからはまた騒がれるかもしれない。
「RIZE、いいね!」
隣りの中里さんは、大きくリズムをとっている。反対側の竜岡さんはボーッとしていた。始めは一緒に盛り上がっていたのに、具合が悪くなったのだろうか。
「竜岡さん、大丈夫?」
「……えっ?!」
心配なので声を掛けたら、かなり驚かれた。
「具合悪いの?」
「ううん。平気よ」
可愛く笑って答えると、またステージに視線を戻す。今度はリズムをとって聴いているけど、ステージの一点だけを見てる気がする。
(レイ君、かな)
カズ君の声は広く響き演奏も上手くのっている。最後のコピー曲もラストのサビに入り、ますます勢いがつく。体育館全体が熱く揺れている。
それに早くも噂を聞き付けて、演奏中でも観客が次々と来た。