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夢幻時空オンライン  作者: シュナじろう
stage0:TUTORIAL
4/12

第一回投稿分 第二話 ゲームスタートは絶望から

 ゲームはどこぞの街の広場にてスタートした。

 周囲を見渡せば、規則性のある配置の石畳で整備された道に、どこか芸術的な外見の家々。ともすればそれらはゴシック様式という言葉がピタリとあう街並みだ。

「ふぅ。ゲームスタート、か。どうするかね……」

 しかし、ホーリはもちろん、なにを最初にすればいいかなどわからない。とりあえず街を歩きながらなにをしようかと悩んでいると、いきなりメッセージが届いた。

「おわっ!?」

 思わず驚くホーリ。しかし、効果音から誰かからのメッセージだと気づいて、メッセージ画面を開いた。

 受信したメッセージはすべてシステムによるものだった。

 いろいろしゃちほこばっているが、要約すると一通が『グロースガイドライン初期設定でおすすめ詰め合わせを選んだので、その確認を』というもので、もうひとつは、『チュートリアルはないが、ヴェンディルの東門を出てすぐのヴェンディリア山エリア、北よりのヴェンディル側山道は入門者向けエリアなので、装備を揃え次第、ぜひ足を運ぶことをおすすめします』というものだった。

「……なるほどね。おし、んじゃま、とりあえずはグロースガイドラインの確認でもするかね」

 ホーリはメニューを呼び出してグロースガイドライン画面を呼び出し、ガイドラインを確認した。

 そして、硬直せざるを得なくなった。


ホーリ 男性 レベル1 

現在エリア:ヴェンディル・stage1-N、スターティング広場

初期グロースガイドライン

道具の知識:レベル1 魔法薬の知識:レベル1 化学の知識:レベル1

製作:レベル1 武術:レベル1


「うへぇ~、知識ってついたのばかりじゃん! いったいどんなけ鬼畜な組み合わせなんだよ!」

 まったくである。

 知識ばかりで役に立ちそうなものなど二つしかない。

 しかも、そのうちのひとつが製作――生産系と称される、非戦闘向けのものだろうことが明白だった。

 そして、最後の一つも、名前だけではいまいちピンとこないものだった。

「つか、武術ってあるけど、具体的にはどんなガイドラインなんだ?」

 そう、武術である。武術といっても、いろんな意味でとらえることができてしまい、名前で判断できない。武術というからには戦闘向けなんだろうが。

 説明を見ても、『武術に関するグロースガイドライン』としかなく、具体的にはわからないままだ。

 仕方なしに、今日のところはウェイクアップ(注:ログアウトのこと)して(せんぱい)に話を聞くことにした。




「武術? また奇妙なやつ当たったね」

「奇妙なやつ?」

 聖也の質問を聞いて、開口一番に言った彩希(あき)のセリフがそれだった。

 ちなみに彩希の容姿はよくも悪くも普通で、艶のある黒い髪に黒い瞳。街角ですれ違っても、一人振り向けば好成績という、徹底した普通っぷりだ。対する聖也はアウトドア派にも関わらず、細身な上に徹底した女顔で、よく女と見間違われる。彩希と並んで歩いていても、兄妹ではなく姉妹として見られることも結構ある。本人としてはうざったいことこの上ないらしいが。

 普段からセミロングで髪を整えているせいもあるのだろうが……特に、後ろ姿を見られたときはほぼ確実に女性と間違われるくらいだ。

 閑話休題、夕食の席で、聖也は彩希の説明を受け始める(当然親もいるが、親は親でテレビを見て談笑している)。

「うん。武術って、ありとあらゆる武器を使えるんだけどね。覚えるスキルが、他の専門的なガイドラインより、遅めになってるんだ。あ、スキル自体も結構違うみたいなんだけど。

 で、大抵の人は、自分がどの武器を使うかっていうのは、大抵最初の、ガイドライン設定の時に決めちゃうからね。そのうえで、例えば剣なら剣捌き+剣術、見たいな組み合わせで限定して育てる人多いし。

 それに、特定の武器に特化したガイドラインを選んでも、後から取得できる上に、常に平行してレベル上げできることもあるからね。なんとか捌きっていうガイドラインがなくても、状況に応じて、自由に武器や防具を装備できるっていう利点があっても、武術のガイドラインを選ぶ人はわりと少ないと思うよ? 選んだとしても……肉体派プレイヤーくらい?」

 はっきり言おう。その説明を聞き、聖也は心臓がばくばくいっていた。

 今の彩希の説明を、記憶に新しい初期設定の知識も交えて要約すると、ガイドラインは初期設定の時こそ5つという縛りがあっても、プレイ方法によってどんどん増やすことができる。取得数に限界はなく、装備ではなくステータスの一種として扱われるので、他のゲームでたまに見られる、保有スキルの制限数もない。それは例えば、魔法と剣を同時に扱いこなす、魔法剣士というのも簡単になることができる。

 つまるところ、万能職とはよく言ったもので、いってしまえばそこにたどり着くための手段を、成長の早さという対価を払ってすっ飛ばしただけなのだということ。

 突きつけられた、(ランダムだったので仕方ないのだが)自身が取得してしまったグロースガイドラインが、クズだったという事実に、聖也は内心泣きそうになった。

「ま、まぁまぁ、落ち着いてよお兄ちゃん。まさか、おすすめ詰め合わせでやったんだから、なにも役に立たないスキルだけって訳じゃないよね?」

 彩希には、武術のことを話すときに、一緒に説明したため、こう返されてもおかしくはないのだが、見るからにクズとわかるようなガイドラインばかりだとは知られたくなかった。

 それでも、β版のテストプレイヤーにアドバイスを聞けば、まだなんとかやっていけるかもしれない、と若干大袈裟に考えながら、聖也は正直に答える。

「……製作と、知識ってつくやつ三つ」

「……ん?」

 しかし、思いの外声が小さくなってしまい、彩希がよく聞き取れなかったのか、聖也に聞き返す。

「製作と道具、魔法薬、化学の知識だ」

 今度は若干大きめの声で、さらに内容も詳しく彩希に伝える。

 すると彩希は、驚いたような、それでいて同情するような顔で聖也に向き直った。

 彩希だけではない。両親も、同情するような顔で聖也を見る。この家族は、全員『夢幻』に何らかの形で関わっている(特に両親は共に尋常ではないほど)のだから、おかしいことではない。

 ――もっとも、家族全員が関係者となったのは、今日、聖也がプレイを始めてからなのだが。

「それは、なんというか……かなり、運が悪かったね……。ごめんね、お兄ちゃん。せめて私が、おすすめガイドラインを書き留めておけば、そんなことにならなくてもすんだのに」

「これは……予想外だったね。そんな大変な道筋のくじを引く羽目になったとは……」

「あ、でも、そう悲観することはないと思うな、私は」

 四人中三人が悲観するなかで、聖也たちの母親、西丘なぎさが唯一、なにかを確信したような顔で、聖也を優しい言葉で言い聞かせるようにいう。

 事実、なぎさは運営者のなかでも、スキルとガイドライン設定のトップを担当していたらしいので、思い当たる節があるのだろう。

 ちなみに父親の西丘清也(しょうや)は武器の設定担当トップだ。そして、スキルやガイドラインには一切携わっていないので、よくわからないようだ。

「確かに知識系ガイドラインは、片手で数えられるほどの数種類を除いて、その全てが地味で薄味。取得しても最初は旨味ないわ。でもね、これ以上はあまり詳しくは言えないんだけど、『夢幻』はね、役に立たなそうなガイドラインほど意外に高性能なツリー構成になっているから、なんとかなるわ」

「なんとかって……」

「そう、なんとか、ね」

 なんだ、と聞き返そうとして、しかし聖也の言葉はなぎさに遮られた。

「なんとかならなくてはバグなのよ。もしくはプレイヤーの努力が足らないか。夢幻の真骨頂は、なんといっても意外性に集約されるのだから」

「意外性、ね」

 いったいどんな意外性なのだろうと思いつつも、事情を知る聖也たちは親にそれ以上話を聞くのをやめにした。


 夕食を食べ終えた聖也は、夢幻内で落ち合うことを約束し、それぞれの部屋でダイブインした。理由は、彩希が夢幻で暇なときは一緒にプレイする約束をしていたからである(もっとも、彩希も決まった固定パーティに入っているわけではないらしいので、その機会は多くなりそうである、というのがホーリの見解。であるが)。

 ホーリがヴェンディルのスターティング広場につくと、

「やっほー、お兄ちゃん」

 というハスキーボイス――もとい、妹の声が左の方から聞こえてきた。

「はい!? って、あれは彩希か?」

 そちらを見てみれば、リアルの彩希にそっくりのキャラが駆け寄ってくるところだった。

「お兄ちゃんってすぐわかったよ」

「なんでだ?」

 ホーリはリアルの自分そっくりのキャラ外見を設定している。それでも、夢幻内ではじめて会うはずの彩希がそれを知るはずがない。

 よって、ホーリとそっくりだからといって、他人の空似かもしれないそのキャラを、ホーリと認めることは異常ではないか。と、ホーリは思った。

 だが、実際には違ったようで……。

「お兄ちゃん、服だよ服。初期装備にいつもの服ってあるじゃない?」

「あ、ああ」

 初期装備はいわゆる不滅アイテムで、各部位の防具を外すと、外した部分は必ずいつもの服になる、というものだ。

 が。

「それがどうかしたのか?」

 ホーリとしては、それがなにか関係があるのかなどわかるわけがない。

「よくやっちゃうことなんだけど、いつもの服は特定の形が決まってる訳じゃないの。機械が記憶を読み取って、リアルで一番最後に着替えた服装に、自動的に合わさるのよ」

「へ……? って、えぇ!? 俺、今寝間着!?」

 言われてホーリが自身の体をみてみれば、ゲームを終えたあとすぐに眠れるようにと着替えた、寝間着が装備されていた。

「さすがに家族の着ているパジャマを見間違えたりなんかはしないよ。ほとんど毎日見てるんだから」

 道理だった。

 そして、寝間着で人前に出ている自分に、大恥をかいた。


 ホーリは仕切り直しをしようと、衣服を取り替えるために一旦ウェイクアップしようとした。

「あ、お兄ちゃんちょっと待って」

 しかし、そこで彩希に呼び止められた。

「なんだ? さっさと取り替えたいんだけど」

「うん、それなんだけど、防具屋にいけばなんとかなるよ」

「……。俺、ゲーム内のお金持ってないんだけど」

「うん。初めての人に、無償配布される武器と防具があるんだけどね。基本的に、武器屋と防具屋にいかないと手に入らないのよ」

 そうなのか、と思いながら、ホーリは受け流した。

「まぁ、ただで防具が手に入るんなら、行った方がいいやな」

 そして、二人は初心者向けの防具屋に向かって歩き始めた。

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