表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢幻時空オンライン  作者: シュナじろう
stage0:TUTORIAL
3/12

第一回投稿分 第一話 夢と幻想の世界

 世界で初めてのVRMMORPG……仮想現実世界における多人数同時参加型RPGの販売発表が、二ヶ月にされた。

 最近インドア派に移行しつつある西丘(にしおか)聖也(せいや)もまた、ほぼ完全に服の形をした仮想現実体感ハード『パーソナルシミュレータ』をすでに持っており、ソフトウェアさえ購入すればいつでもプレイできる環境が整っていた。

 それが昨日までの、いやつい先程までの話だ。

 そして、今。高校生となって初めての夏休み初日を、明日に控えた彼の目の前には、くだんのゲームがインストールされた『パーソナルシミュレータ』が置かれている。さらにいえば、シミュレータにソフトウェアをインストールするための、ノート型端末もあるが。

「夢幻時空オンライン……ね。……まぁ、面白いかどうかはプレイしてから決めるしかないな」

 しかし、インドア派に移行しつつあるものの、依然アウトドア派の聖也としては、興味こそあれ、β版のテストプレイヤーに選ばれた妹に『ぜひ聖也も』とせがまれて、この際やってみるか、という気になったに過ぎない。

 よって、他のプレイヤーに比べて、その期待感はあるとは言えない感じだ。

 しかし、それでもやるといった以上、正規ソフトウェアへのバージョンアップを、楽しみに待っていた妹の、その喜びをぬか喜びにしてはならないという責任感が聖也にはある。

 さらに言えば、『夢幻時空オンライン』の開発班のメンバーである、両親が融通をきかせ、買ってきてくれたことに対する責任感にも後押しされているのだが。

 さて、聖也の目の前は、服の形をしたハードウェアの他に、ヘッドギア型のハードもある。これもシミュレータの一部であり、本体とも言える部分である。

 聖也は、学校が終わると家に帰って、それらを用意したのだが、いかんせん、キャラクターメイクのやり方がわからなかった。

彩希(あき)はもう先に行っちまったしなぁ……」

 そう。聖也の妹、彩希はもうすでに『夢幻時空オンライン』に入っている。これをログインではなくダイブインというらしいのだが、彩希がダイブインしている以上、もうすでに向こうで楽しんでいるであろう彩希を、引き戻す気にはなれないのだ。

 彩希がブラコンなのが伺い知ることができるが、しかしここまでくると、聖也もまたそうとうなシスコンだ。

「……持っといた方がいいグロースガイドラインとかあるのか、とかあるんだけどなぁ」

 と、呟くが。すぐに気を取り直す。

「……まぁ、出遅れたものは仕方ないか。……さっさとログインしよう」

 そして、『パーソナルシミュレータ』を装着、スイッチを入れて、意識を現実世界から電脳世界へと移した。

 ――とはいえ、『パーソナルシミュレータ』はすぐに起動したいソフトが起動するわけでないい。

 『パーソナルシミュレータ』は着込むタイプのハードだが、いわゆる『パソコン』でもある。まずは五感の接続から入り、『パーソナルシミュレータ』に搭載されているOSである、ナノサイズソフト社の『Doors』シリーズのロゴ(ちなみにホーリのそれは『Doors56』である)が表示される。そして『Doors56へようこそ』という文字が表示されたあとで、ようやく装着者は広大な草原の仮想現実に降り立つ。あとはそこで立ち上げるソフトを選択するか、『トップ』と呼ばれる、この美麗な仮想現実を堪能して癒しを得るか、ソフトの起動を中止してログオフし、現実に戻るか、となる。

 聖也――この時点ではもうすでに、VRMMORPG内で使われるメインアカウント名になる、『パーソナルシミュレータ』のユーザーアカウント名『holly』、ホーリとなっている(普通ならホーリーだが、あえて読み方をホーリとしている)――は、慣れた手つきで虚空を二回突いてホームウインドウを呼び出し、これから使おうとしているソフトウェア『夢幻時空オンライン』を起動した。




 ここは全ての夢が集う、幻想の世界。

 待ち受ける終焉は希望か絶望か、

 はたまた眠れるうちに見る夢うつつからの目覚めか。

 どうなるのかはあなた次第。

 さぁ、踏み出そう。抱える願望(がんぼう)を叶えるために。

 さぁ、時を飛ぼう。内なる願望(ゆめ)を見るために。

 理想の幻想(ゆめ)を追う、あなたの夢が、今始まる。

 壮大なグラフィックや美しいBGMと共に流れた、オープニングと思われるナレーションを聞き終えたホーリを待っていたのは、キャラクターメイキングの項目と思われる、選択肢だった。

 すなわち、髪や瞳の色など多少は変えられるものの、あまり変えることはできない、現実の自分ベースなのか。それとも、数多くあるパーツから気に入ったものを選ぶ形で、ほぼ一からアバターを作るのか、というものだ。

「キャラクターメイク……って、なんだ、いちいちめんどくさそうな作業やらなくて済むんじゃん」

 ホーリは迷うことなく、前者の、現実世界依存の外見を選んだ。

 確認ウインドウがでたので、これも迷わずYESを選択する。

 すると、今度はキャラクターの成長に関わる初期設定をする旨のテロップが表示された。

「成長に関する……、か。あれか、夢幻独自の成長システム……ていう」

 瞬間、ホーリはすぐにこれだというものにあたりをつけた。

 そのシステムこそが、夢幻(夢幻時空オンラインの略称)の爆発的人気の理由となったシステムであろう。

 聖也もさんざん妹から教えられたシステム、グロースガイドラインシステム……通称ガイドラインシステム。

 すべてのグロースガイドライン、他のゲームでいうジョブやクラスに該当するそれには、熟練度とGGレベルというものが設定されており、わざわざ転職や転向などという行動を取らなくても、そのガイドラインに沿った行動をしていれば取得できる、かなり自由性の高いシステムとなっている。

 最初に獲得したガイドライン以外はレベル0となり、レベル1に上がることで取得となるのだが、とにかくその種類が多いらしいのだとか。

 さて、他のゲームでいうジョブやクラスに該当するということは、当然ステータスには絡むし、スキルの覚えかたにも非常に影響が出る。

「……とはいえ、どんなものがいいのか…………」

 正直、まったく情報集めをしていなかった聖也は、どのようなガイドラインがよくてどのガイドラインが無駄ガイドライン、いわゆる『クズ』なのかがわからないのだ。

 さてどうするか、と悩んでいるホーリを待つこともなく、ゲームのシステムは先に進んでゆく。

 ホーリの目の前に現れたのは、ズラリと並んだ、膨大なガイドライン…………などではなく、二つの選択肢だけだった。

「……へ?」

 ホーリは、自分の目を疑った。

 そこにある選択肢は、『自分で選ぶ』と、『おすすめ詰め合わせ』の二つだった。

 『おすすめ』……つまり、システムにガイドライン選択を一任するということ。つさ悩まなくても、どんなプレイヤーになりたいかという指針が決まってなくとも、簡単に設定できる事実を知り、すべて自分で決めないといけないと思っていたホーリとしては、寝耳に水な選択肢だった。

「はは……これはいい」

 ホーリは乾いた笑い声をあげながら、恐る恐る下の選択肢『おすすめ詰め合わせ』を選んだ。

 すると、確認画面が表示された。

『おすすめ詰め合わせはゲームが始まるまで、グロースガイドライン内容を確認できません。よろしいですか?

○YES ◎NO 決定』

「ガイドライン内容が確認できませんって、言われてもなぁ」

 良し悪しがわからないのだから、自分で選んでも似たようなものだろ、とボヤきながら、ホーリはYESのラジオボタンをタップし、決定を押した。

 確認画面が消えて表示されたのは、自分で決めるよりかは圧倒的に少ないであろう、しかしやはり膨大な選択肢だった。

『どのようなプレイヤーになりたいですか? 下のリストから選択し、第一候補と第二候補を所定の場所にスライドてください。なお、各項目を詳しく見たい場合は、項目にタップしてください』

 というメッセージと共に表示されたそれは、ある意味においてはホーリの予想を少し超えていた。

「やっぱり結構あるのな。……でも、具体的な選択肢で分かりやすいな」

 そう。ホーリはおすすめ詰め合わせと聞いて、自身がどんなプレイヤーになりたいかを選び、それにそったガイドラインがランダムで選ばれるものだと考えていた。

 事実そうなったわけだが、選択肢の具体性については図りかねていたのだが、


優秀な剣士になりたい

目指すは名のある槍術士

正確無比な弓術でスナイパー気分

やっぱりファンタジーなら魔法使い

   ・

   ・

全滅寸前! 選んでよかったサポート重視

ブラックスミスで一財産

衣服つくってレッツコスプレ


 といった感じで、予想より未来像をイメージしやすい選択肢が出てきたのだ。

 さまざまな選択肢があり、結局悩んでしまい、思うようにはなかなか進まないものだ、と思いながらどれがいいのか考えていると、ホーリはあるひとつの項目に目が止った。

 それは、『バランス重視の万能職』という項目だ。

「…………バランス重視、か……」

 それは魅力的だった。万能職ということは、少なくとも弱点はない、もしくは少ないということだろう。不得手があっては万能を名乗れないのだから。

 だが、同時に胡散臭い話であるのも確かである。

 万能職など、そううまい話があるだろうか?

 少なくとも、何かにつけて弱点がないと、ゲームのバランスが崩れかねないのだから。

 しばらくその項目にしようかどうか悩んだ結果、ホーリは意を決して、操作をし始めた。


 そして、その設定が終わると、ゲームがいよいよスタートとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ