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銀光巨人ヴェルシア 第1話『星堕ちの怪獣』

大都市ルメリアス郊外に、巨大隕石が落下!

その中から現れた星堕怪獣アストロガルは、防衛軍の攻撃をものともせず都市へ迫る。


絶体絶命のその時、夜空から銀色の巨人が降り立った。

彼女の名は、ヴェルシア。


圧倒的な巨体同士の激突。

しかしヴェルシアは、暴れる怪獣の姿にある異変を見抜いていた。


アストロガルは本当に、人々を襲う敵なのか?

銀光巨人ヴェルシアの物語が、ここから始まる。


ヴェルシアは一歩だけ前へ出た。

防衛軍の通信網にどよめきが走る。


「動いた!」

「接触する気か!?」

挿絵(By みてみん)

第1章 星が落ちた夜


夜空が割れた。


海沿いの大都市ルメリアスを囲む防潮壁の上で、監視員は思わず息を呑んだ。

漆黒の天穹を横切り、幾筋もの火線が大気を焼きながら落ちてくる。


観測網が警報を発し、都市中央管制塔の壁面スクリーンに赤い文字列が走る。


『高密度隕石群接近』

『衝突予測時間 三分四十秒』

『防衛軍迎撃隊発進』


港湾区の避難警報が鳴り響き、市街地の照明が緊急モードへ移行する。

高層建築群の窓は次々と暗転し、空中交通路を飛行していた輸送艇は退避経路へ向かった。


防衛軍第七航空団のスターファイター隊が夜空へ飛び立つ。

青白い推進光が尾を引き、編隊を組んで上昇していった。


「目標群を確認」

「迎撃開始」


機首下のビーム砲が閃いた。

夜空に無数の光球が咲き、小型隕石が次々と砕け散り、火花となって消える。

だが、観測画面の中に一つだけ異質な反応が残った。


質量が大きすぎる。

熱量が高すぎる。

そして、軌道が乱れている。


「待て!」


編隊長が叫んだ。


「目標が加速している!」


赤熱した巨大な塊が、自然落下の軌道から外れた。

都市中心部を逸れ、海岸線の外縁をかすめるように進路を変える。


何かが空中で制御を失い、激しく姿勢を崩したようにも見えた。

巨大な火球は尾を引きながら海岸線を越え、郊外の丘陵地帯へ落下していく。


夜が、昼になる。

閃光。

轟音。


数秒遅れて衝撃波が到達した。

港のクレーンが軋み、高層建築の窓が震え、地平線の向こうで巨大な火柱が立ち上がる。


「着弾地点確認!」

「郊外区域!」

「半径二十キロ圏を封鎖!」


防衛軍部隊が現場へ向かった。

輸送車両と装甲車が道路を埋め、観測機が上空から映像を送り続ける。


そこには巨大なクレーターがあった。

山一つを抉り取ったような穴の周囲で森林火災が広がり、赤い炎が夜を染めている。


そして、クレーターの中央で何かが動いた。

溶岩のように赤熱した岩塊が、ゆっくりと持ち上がる。

表面の黒い殻が割れ、その奥から巨大な四肢が現れた。


黒灰色の外殻。

背中を覆う隕石結晶のような突起群。

長い尾。

赤熱した双眸。


その巨大な影が立ち上がった瞬間、周囲の観測員たちは言葉を失った。


「生物……?」

「そんな馬鹿な……」


誰も答えられなかった。


赤いクレーターの中心で、それが低く咆哮する。

大地が震え、火災の煙が衝撃で押し広げられた。


管制塔の誰かが、震える声で言った。


「……怪獣だ」


低い咆哮の奥に、切迫した響きが混じっていた。

苦痛。混乱。恐慌。

耳を塞ぎたくなるような、巨大な悲鳴だった。


観測主任が、喉の奥から絞り出すように言った。


「暫定識別名を付けろ。星から落ちてきた怪獣だ」


数秒後、管制塔の画面に赤い文字が走る。


『星堕怪獣アストロガル』


その名が通信網に流れた瞬間、防衛軍の全端末が同じ呼称へ切り替わった。


アストロガルは首を激しく振った。

背中の結晶が、都市の照明、通信電波、戦闘機のエンジン音、あらゆる刺激を拾うように不規則な光を返す。


巨大な身体は落ち着きなく揺れ、尾が地面を抉り、四肢が火の粉を散らした。


「攻撃許可!」


ビーム砲が発射された。

数条の光が怪獣へ命中する。


外殻にはほとんど傷が入らず、代わりにアストロガルの全身が大きく震える。


再び咆哮。

今度は先ほどより大きい。

尾が振られ、丘陵の斜面が崩れた。地面が割れ、岩塊が飛び散る。


「まずい!」

「刺激しているだけだ!」


それでも、防衛軍には他の手段がなかった。

攻撃は続き、怪獣の混乱は深まっていく。


咆哮が重なり、振動が広がり、破壊が連鎖する。

やがてアストロガルは、都市方面へ向きを変えた。


逃げようとしているのか、刺激源から離れようとしているのか、現場の誰にも判断できない。


ただ一つ確かなことは、その進行方向に数百万の市民がいるということだった。


避難列が伸び、港湾区の照明が落ちる。

誰もが迫り来る巨影を見上げていた。


その時だった。

一人の観測員が、空を指差した。


「……あれは?」


雲海の上、夜空の高みから、一筋の銀光が降下してくる。

流星のような尾を引きながら、その光は赤熱するクレーターへ向かっていた。

銀光は雲を裂き、大気を切り、白銀の輝きとなって地表へ降り立つ。


轟音と共に土煙が舞い上がった。

そして煙が晴れた時、そこに立っていたのは未知の巨人だった。


滑らかな銀色の外殻。

体表を走る深紅の線。

胸に輝く円形の光。

白青い眼光。


長い脚を大地に据えた銀の巨人は、静かに怪獣を見据えている。


防衛軍の識別データにも、人々の記憶にもない。

それでも、その姿を見た者たちは本能的に理解した。


あの光は、災厄へ向かって来たのだ。

銀の光が、赤熱するクレーターの縁に立った。


第2章 巨体、激突


アストロガルが咆哮した。


赤熱した吐息が夜気を震わせ、巨大な四肢が地面を踏みしめるたび、丘陵地帯の斜面が崩れていく。


その進路の先には都市があった。


港湾施設。

避難路。

住宅区。

まだ脱出しきれていない人々。


防衛軍は攻撃を続けていた。

スターファイター隊のビームが夜空を走り、光が命中するたび、アストロガルはさらに激しく首を振って尾を叩きつけた。

混乱は深まる一方だった。


クレーターの縁に立つ銀の巨人は、まだ動かない。

白青い眼光が怪獣を見つめている。

その眼光は鋭かった。

敵を見定める戦士の目。

同時に、何かを見極める眼光でもあった。


赤熱した瞳。

荒い呼吸。

落ち着きなく揺れる首。

周囲の光や音に過剰反応する動き。


ヴェルシアは一歩だけ前へ出た。


防衛軍の通信網にどよめきが走る。


「動いた!」

「接触する気か!?」


アストロガルも銀の巨人へ気付いた。

その巨体が向きを変える。

赤熱した双眸が、白青い眼光と交差した。

数秒、互いに動かない。


次の瞬間、アストロガルが突進した。

山が走ったようだった。

大地が揺れ、岩盤が砕け、防衛軍の車両が衝撃で横転する。


避難中の市民たちは悲鳴を上げた。


「ぶつかるぞ!」


誰かが叫ぶ。

ヴェルシアは脚を開き、腰を落とし、両腕を広げた。


そして――激突。

轟音。

空気が爆発した。


アストロガルの巨大な頭部を、ヴェルシアの両腕が真正面から受け止める。


外殻と外殻がぶつかり合い、火花が散った。

銀の巨人の脚が地面へ沈む。

踵から足首へ、足首から膝へ、荷重が深く落ちていく。

土砂が吹き飛び、放射状の亀裂がクレーターの縁を走った。


それでも、ヴェルシアは退かない。

肩が軋み、腕が震える。

その両手は、アストロガルの角状突起をしっかり掴んでいた。


怪獣がさらに一歩押す。

銀の巨人の足元で地面が裂ける。


巨体と巨体がぶつかり合い、まるで二つの山が夜の丘陵で噛み合っているようだった。


都市の避難路で、その光景を見ていた子どもが呟いた。


「……止めてる」


母親は答えられなかった。


巨大怪獣の突進。

本来なら都市を踏み潰すだけの質量。

それを銀の巨人が一人で受け止めている。

ヴェルシアの足元から地割れが広がる。


怪獣は前へ進めない。

その進路はそこで止まり、都市へ届かない。


アストロガルが苛立つように首を振る。

尾が唸りを上げた。

巨大な鞭が夜空を切る。


直撃。

ヴェルシアの側頭部に叩きつけられた。

銀の巨体が大きく揺れ、掴んでいた角が外れる。

その瞬間、アストロガルの巨体が横へ傾いた。


進路上には高層居住区がある。

倒れ込めば、数十棟が押し潰される。

防衛軍司令部が凍り付いた。


「まずい!」

「倒れる!」


司令部の叫びより早く、ヴェルシアが動いていた。


銀の巨体が地面を蹴り、傾くアストロガルと高層居住区の間へ滑り込む。

彼女は両腕を怪獣の胸下へ差し込み、肩を押し込み、背中で落ちてくる重量を受けた。


途方もない質量が一気にのしかかり、足元の地面が陥没する。

銀の膝が深く沈み、胸のルクス・コアが強く明滅した。


それでも、倒れない。


アストロガルは恐慌状態のまま手足を動かしていた。

その下で、ヴェルシアは膝をつきながら支えている。


崩壊しかけた高層建築群。

避難車列。

港湾施設。


その全ての前で、怪獣の重量を受け止めている。


防衛軍のパイロットが思わず呟いた。


「なぜだ……」


怪獣は倒れかけていた。

首も、胸も、腹も、無防備に開いている。

攻撃を加える隙なら、いくらでもあった。


それなのに銀の巨人は、アストロガルの下へ入り、怪獣と都市の間で膝を折っていた。

その姿は、戦闘というより救助に近かった。


アストロガルが再び咆哮する。

赤熱した瞳が揺れた。


ヴェルシアの白青い眼光が、静かに細められる。

胸の光が一度、深く明滅した。


都市の灯の上へ、怪獣の巨大な影が落ちる。

その下で、銀の巨人が膝を折って支えていた。


第3章 大気圏突破


アストロガルの咆哮が夜空を揺らした。


その声には、さきほどまでの勢いがなかった。

暴れてはいる。

だが、巨大な四肢の動きには疲労が混じり、赤熱した瞳は落ち着かないまま左右へ揺れている。


惑星の重力、人工光、通信波、戦闘機の飛行音。

未知の環境が、巨大生命体の感覚を容赦なく刺激し続けていた。


ヴェルシアは怪獣を支えたまま、白青い眼光でアストロガルを見つめる。

荒い呼吸。不規則な首の動き。

アストロガルの背に並ぶ結晶が、周囲の光を不規則に返している。

そこにあったのは敵意ではなく、痛みと恐慌、そして帰る場所を見失った命の反応だった。


胸の光が一度、深く明滅する。


銀の巨人は、怪獣の体重を街から外すように押し返した。

アストロガルがよろめき、数歩後退する。

再び咆哮が上がったが、どちらへ逃げればよいのか分からない生物の震えだった。


防衛軍司令部では、攻撃準備が続いていた。

港湾砲台、軌道迎撃施設、都市防衛ビーム。

複数の照準枠が、アストロガルの胸部と頭部へ重なっていく。


「全火力、同期準備!」

「目標、依然として都市方向!」


発射許可が下りる寸前、銀の巨人が動いた。


胸の光が深く沈み、深紅のルクス・ラインが脚へ、腰へ、背中へと赤く脈打った。

銀の外殻の奥で、巨体を支える光が満ちていく。


「エネルギー反応増大!」

「全身に分配されています!」


ヴェルシアは真正面から歩み寄った。

アストロガルの進路を街から外し、暴れる首の内側へ身体を入れる。

銀の腕が、怪獣の胴と首元を包んだ。


アストロガルが暴れる。

前脚が振るわれ、外殻同士がぶつかって火花が散り、尾が背中へ重く叩きつけられる。

ヴェルシアの銀の外殻に爪痕が走り、肩から背面へ白い亀裂光が一瞬だけ浮かんだ。


胸の光が強く明滅する。

それでも、銀の腕は緩まない。


ヴェルシアの足が大地をとらえた。

腰が沈み、背中がしなり、肩へ通った力がアストロガルの巨体を下から掬い上げる。


岩盤が砕け、都市郊外一帯が震動した。


「持ち上げる気か……?」


観測機の映像に、あり得ない光景が映る。

都市を踏み潰すはずの重さが、銀の腕の中で地面を離れた。


その瞬間、胸のルクス・コアに赤い警告光が混じった。


白青い芯は残っている。


だが、光は荒い拍を刻み始めていた。

前脚が浮き、尾が浮き、山のような質量が夜の丘陵から剥がされていく。


ヴェルシアはさらに腰を沈めた。

足元の地面が割れ、巨大な亀裂が放射状に走る。

次の瞬間、銀の巨人は怪獣を抱えたまま夜空へ跳び上がった。


爆発的な衝撃が郊外の丘陵を叩き、土砂と火の粉が円形に吹き飛ぶ。

防衛軍機が慌てて回避し、雲海が白く裂けた。


ヴェルシアはアストロガルを抱えたまま上昇する。

怪獣はなお暴れ、爪で外殻を削り、尾で背中を打ち続けるが、地表は急速に遠ざかっていく。


都市の灯が小さくなる。

海が黒い鏡のように広がる。

大気が薄くなり、空の色が濃紺から群青へ、そして漆黒へ変わっていった。


銀の外殻には爪痕が刻まれていた。

肩部には深い傷が走り、背中には尾の打撃痕が残る。

胸のルクス・コアは、赤を混ぜて荒く明滅している。


それでも、腕は緩まない。


地上では、無数の人々が夜空を見上げていた。

防衛軍、避難民、港湾作業員、子どもたち。

誰もが、怪獣を抱いた銀の光が星々の間へ昇っていく姿を見ていた。


銀の巨人は、怪獣を抱いたまま、その星の空を突き抜けた。


第4章 星へ帰す光


宇宙は静かだった。


激しい上昇の衝撃が抜けると、ヴェルシアの周囲には星々の光だけが残った。


眼下には夜の半球が広がり、さきほどまで怪獣と防衛軍の砲火で揺れていた港湾都市が、細い光の筋になって見えている。


アストロガルは、まだ彼女の腕の中にいた。

巨大な四肢はわずかに動き、尾も時折、反射的に揺れる。

だが、地上で見せた暴走の勢いは弱まっていた。


宇宙空間に出ると、アストロガルの反応は目に見えて鈍った。

赤熱していた瞳の揺れは、地上にいた時よりも弱まっていた。


地表で巨体を押し潰していた重圧も、都市の人工光も、通信波の奔流も、耳を裂くような防衛砲火も、ここでは届かない。


黒い空と星明かりだけが、巨大な生命体の周囲に広がっていた。


ヴェルシアは怪獣の胴と首元を支えたまま、白青い眼光でその反応を見守っている。

胸のルクス・コアは、まだ赤を混ぜて荒く明滅していた。

ここまで怪獣を抱えて大気圏を抜けた負荷は、彼女の身体から簡単には抜けない。


アストロガルが一度だけ身をよじった。

長い夢から覚めた生き物が、自分の居場所を確かめるような動きだった。


銀の腕が、ゆっくりと巨体から離れる。

ヴェルシアは少しだけ距離を取った。

アストロガルが再び恐慌を起こせば、すぐに押さえ込める位置だ。


アストロガルの背の結晶は、まだ不規則に光っている。

地上で浴びた刺激の名残が、結晶の奥に残っていた。


ヴェルシアは右腕を持ち上げ、左腕を添えた。

胸の光が静かに腕へ流れる。


掌の先で、細い光が輪を作る。

光輪はアストロガルへ向かって静かに進み、頭部付近でゆっくり広がる。

白青い波紋が黒灰色の外殻を撫で、背中の結晶群へ薄く染み込むように伸びていった。


怪獣は一瞬だけ身を固くしたが、やがて結晶の明滅が一つずつ遅くなる。

赤熱した瞳の揺れも、少しずつ小さくなっていった。


アストロガルの尾が止まる。

前肢の震えが小さくなり、荒かった呼吸が一定の間隔を取り戻していく。


胸のコアが赤く荒く明滅するたび、銀の外殻の爪痕と肩の亀裂が星明かりの中に浮かんだ。

それでも彼女は、光輪を乱さず保ち続けた。


やがて、アストロガルは動きを止めた。

赤熱した瞳に、初めて静かな焦点が戻っていく。

その視線は初めて、ヴェルシア自身を映していた。


言葉の代わりに、巨大な生命の呼吸の律動だけが、ゆっくりと整っていく。

ヴェルシアはその正面で、静かに白青い眼光を返した。


混乱から抜け出しつつある命と、それをここまで運び上げた銀の巨人が、星々の闇の中で向かい合っていた。


しばらくして、アストロガルはゆっくりと顔を上げた。

遠く、小惑星帯が淡く輝いている。

無数の岩塊が漂う暗い海。


アストロガルが本来進むはずだった場所であり、帰るべき航路だった。


怪獣は一度だけ身体を震わせる。

威嚇の震えではなく、帰る場所を思い出した命の反応だった。


アストロガルは姿勢を整えると、自ら尾を動かした。

巨体がゆっくりと前進する。

惑星から遠ざかる軌道。

安全な方向。

誰も傷つけない進路だった。


ヴェルシアはその場に残った。


怪獣が自分の力で進み始めたことを、白青い眼光で確認する。

アストロガルは振り返らず、巨大な影のまま少しずつ遠ざかっていく。


やがてその姿は、小惑星帯の光の中へ溶けていった。


静寂だけが残る。

ヴェルシアは惑星を見下ろした。


夜の半球に、港湾都市ルメリアスの灯が細く広がっている。


避難路の光はまだ動いていた。

防衛軍の通信反応も、星の表面で細く瞬いている。

この距離では声にならない。


それでも、地上の人々が空を見上げていることは分かった。


胸のルクス・コアは、まだ赤を混ぜて荒く明滅していた。

上昇と損傷の負荷は、事件が終わってもすぐには抜けなかった。


銀の外殻には深い爪痕が残っている。

肩部には亀裂。

背中には無数の打撃痕。


戦いの痕は、星明かりの中でもはっきり見えた。

それでも、白青い眼光は静かに澄んでいた。


感謝の声も、呼びかけも、星間の静寂にほどけていく。


それでよかった。

救うべき命は救われた。

帰すべき命は、星へ帰っていった。


ヴェルシアは一度だけ、アストロガルが消えていった航路を見つめた。


そして銀の光となり、次の救難信号を探すように、宇宙の闇へ消えていった。

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