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返事をしてはいけない声

作者: Wataru
掲載日:2026/02/17

夜中に目が覚めた。


理由はすぐ分かった。


誰かが、自分の名前を呼んだからだ。


「……気のせいか」


時計を見ると、午前2時17分。


寝返りを打とうとした、その時。


ドアの向こうから、もう一度聞こえた。


「……ねえ」


小さな声。


女の声だった。


一人暮らしの部屋だ。


誰かいるはずがない。


体が動かない。


金縛りでもないのに、怖くて動けない。


しばらくして、声は止んだ。


やっと息を吐き、布団をかぶる。


そのまま眠った。



翌朝。


何となく嫌な気分のまま会社へ行き、帰宅した。


ドアを開ける。


部屋はいつも通り。


何も変わっていない。


安心して靴を脱ぎ、電気をつける。


その瞬間。


リビングの奥、寝室のドアが、


少しだけ開いていた。


朝、閉めたはずなのに。



気味が悪くなり、その夜はテレビをつけっぱなしで寝た。


そして、また夜中に目が覚める。


テレビは消えていた。


部屋は暗い。


そして、はっきり聞こえた。


耳元で。


「なんで返事してくれないの?」


全身が凍りつく。


声は、布団の中から聞こえた。


自分のすぐ後ろ。



翌日、友人に相談した。


「それ、前の住人じゃない?」


笑いながら言われる。


「前の住人、部屋で自殺したらしいよ」


冗談だと思った。


帰宅して、不動産サイトを調べる。


確かに、事故物件だった。


知らなかっただけだ。


気にしすぎだ。


そう言い聞かせて寝た。



そして、その夜。


また声がした。


はっきりと。


「ねえ」


布団の中で、震えながら思う。


無視すれば、そのうち消える。


そう信じて。


声は続く。


「ねえ」


「聞こえてるでしょ」


「ねえ」


そして、すぐ耳元で、


はっきりと囁かれた。


「今、後ろ向いてるよね?」



翌朝。


警察が部屋を確認したが、異常は見つからなかった。


「気のせいでしょう」


そう言って帰っていく。


ドアが閉まり、部屋が静かになる。


電気を消し、ベッドに横になる。


疲れていたのか、すぐに眠りかけた。


ふと、違和感で目が覚める。


体が動かない。


暗闇の中で気づく。


自分の横に、


もう一つ分の重みで、


布団が沈んでいる。


息だけが、


すぐ近くで聞こえていた。

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