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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

たまご粥

作者: さんさい





ピンポーン、ピンポーン

聞き馴染んだチャイムの音が響くが、一向に扉が開く兆しはない。

俺がここにいるのは、朝俺のsnsに届いたメッセージがきっかけだ。どうやら昨日、雨にも関わらず傘を忘れたためびしょ濡れになったらしい。そして彼は見事に風邪を引いた。正確にいうと拗らせていた風邪を再燃させた。鼻風邪+夏バテであまりご飯が食べれていなかったのが仇となり、彼は今日38度発熱し寝込んでいる。そして、俺に助けを求めるメッセージが届いたため、俺はこうして翔の家に来たわけだ。







うーん、開かないな。電話してみるか。

プルプル、プルプル・・・・・・ガチャ。







「・・・もしもし」







お、出た。明らかに体調不良者の声をしている。鼻詰まりなのかいつもより僅かに高くてくぐもった声。これはかなりしんどいやつだな。







「今家の前にいる。鍵開けれそう?」







「うん、今開ける」







プツッ。電話きれてしばらくした後、扉の向こうでガチャガチャという音が聞こえてきた。

ガチャ、と音を立てて扉が開いた。向こうから覗かせた顔は赤くなっており、活気のない表情をしている。







「全然大丈夫じゃなさそうだな、とりあえず中に入らせて」






俺はトボトボと歩く翔の後についてリビングに向う。リビングに着くなり彼はソファに横になった。






「・・・来てくれてありがとう。授業大丈夫だった?」







「うん、今日は午前中だけだから。

お昼作るけど何が食べれる?」







「んー、・・・おかゆがいい。あの卵のやつ」







「はいよ、今から作るし、しんどかったらベッドで寝ててもいいよ。できたら持ってく」







「ううん、ここにいる」







そういうと蓮はソファに横になって目を閉じた。よかった、食欲はありそうで。

俺はエコバッグを持ってキッチンに向かった。

キッチンからは翔の姿が見えた。お粥を作っている間に翔は眠ってしまったようでスースーいっている。・・・あとにするか。俺はラップをして、粗熱が取れたお粥を冷蔵庫にしまった。俺はリビングに戻ると翔の隣にあるテーブルのそばに腰を下ろしテーブルを引き寄せた。しばらく課題に集中していると、「うぅーん、」という声がした。そちらを見ると、寝ぼけ眼の翔がこちらをぼーっと見ていた。







「起きた?」







「・・・うん、俺結構寝てた?」







「1時間くらいかな。

お粥できてるけど、どうする?」







「うんもらう。ありがとう」







寝たおかげか心なしか顔色がいい気がする。俺はお粥を温め直し、お茶とスポドリと一緒に翔の元に運んだ。







「ありがとう、あーいい匂いする」







「まだおかわりあるから食べれそうなら言って」







「蓮は食べないの?」







「あー、俺先にこの課題だけやっちゃう。

もう少しで終わるから、先食べてていいよ」







「もう少しなら待ってる。一緒に食べた方が美味しいじゃん」







「・・・逆に気を遣うんだけど」







「圧かけてるつもりだから笑」







「なにそれ、どうせ冷ましたいだけでしょ。

急ぐから待ってて」







翔は「猫舌なだけですー」と不貞腐れたように言いながら、携帯を触り始めた。しばらく俺のシャーペンの音だけが室内に響いていた。

10分ほどで終わらせた俺はキッチンに向い、すでによそっておいた自分の分を温め直した。







「もうすぐ食べれるけど、

翔の分もちょっとだけ温める?」







「ううん、いいー。

これくらいの温かさの方が食べやすいし」







相変わらず鼻声だが、やっぱり昼寝してからの方が元気だな。多めにお粥作っておいてよかった。

結局翔はおかわりこそしなかったものの、よそった分は全て完食した。俺が後片付けをしている間に、やいやい言いながら市販薬も飲んでいた。







「あーあ、熱とか久しぶりすぎて堪えたわ。

ほんと来てくれて助かったーー!」







「助けになれたならよかった。

ちょっと元気になったみたいだし」







「本当にお粥も美味しかったです。

てことで、もう一眠りするかー。

蓮も一緒に寝るぞ」







「え?俺はいいよ、別に眠たくないし」







「病人は人肌恋しくなるものなんだよ。

ほら、ここに横になって」







翔は自分の隣にある毛布をパンパン叩いている。なるほど、俺が課題をしている時にガソゴソと動いているなと思っていたが、その毛布を準備してたのか。用意周到なことで。

俺は渋々翔の隣に横になった。翔は嬉しそうに同じく横になり、こちらに顔を向けた。







「久しぶりだな、この雑魚寝スタイル」







「そういえば、高校のときは4人でよくこうして寝てたな。なんかよく分かんない話して5時くらいまで起きてたこともあったよな」







「そうそう、勉強合宿とか言って・・・・」と、俺たちはしばらく高校時代の話に花を咲かせていたが、人間横になると眠たくなる生き物なのか、次第に瞼が閉じていった。













・・・・・んーーー、よく寝たー。あれ、今何時だ?てか、俺何してたっけ。そう思い俺は目を開けた。ああ、そっか。翔の家に看病に来たんだった。携帯の時計を見ると17時と表示されている。確か、お昼ご飯を食べ終わったのが15時前で、そこから寝転んで話して・・・俺ら2時間くらい寝てたのか。寝過ぎたな。

目の前にいる翔はまだ眠っているみたいだっだ。翔の寝顔を見たのは久しぶりだな。高校生の時はよく泊まった時とか授業中とかにこっそり見てたけど、まさか恋人として寝顔を見れることになるとは。これは、あの頃の自分に言っても信じてもらえそうにないな。






俺は思わず彼の口にキスをした。「風邪なんて俺にうつして、早く良くなればいいのに」

・・・・まて、何言ってんだ、俺。てか今何した。俺はハッと我に帰り、今起こってしまった出来事を無かったことにしたくて慌てて翔の家を飛び出した。翔には後で連絡すればいい。

・・・はあ、まじで俺翔のこと好きすぎじゃん。俺は家を出てからも、しばらく心臓がドキドキして収まらなかった。












__________________




おまけ




蓮がバタバタと出ていった後、翔は目を開けた。翔はしてやられたという顔をしていた。





「何今の、

はあーーーー、風邪治ったかも」






彼は頭を抱えしばらく思い出し笑いをしていた。







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