さくら
春の風が優しく吹き抜ける中、私は校庭の桜の木の下に立っていた。
花びらが舞い散る様子はまるで夢の中のようで、その美しさに心を奪われていた。
でも、私の視線は桜の花びらではなく、少し離れた場所にいる一人の先輩に向けられていた。
「おはよう、元気?」
ふと彼女の声が私の耳に届く。
慌てて私は、我に返る。
心臓がドキドキと高鳴るのを感じながら、私はなんとか平静を装って近寄る。
「おはようございます、先輩。元気です」
「今年も桜が綺麗だね」
私が彼女の隣に立つと、ニコニコしながらにそんな問いを投げかけてくる。
「…はい。本当に綺麗です」
私は、彼女の横顔を見つめながらそう答えておいた。