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轍のゆくえ  作者: ルイン・リーカ
第一章
11/29

狐と神々

コピペの作業中、一部間違った部分までコピーしており訂正しました。

確認不足でした。申し訳ございません。

いつもの服装とは違う、高級な素材。重たいと感じる程に突き刺されている簪。歩く度に動きずら差を感じずにはいられない厚い下駄。朝からたたき起こされ、整えられた顔。

 何もかもが気に入らない。着飾るほどの相手でもない。ちょっと顔を出して、すぐに帰る。それだけの予定なのに、どうしてもと強請られたが故に着てしまった。裾に汚れをつけるだけでも何百万が消し飛ぶ。何百万が…ただでさえオンボロ神社。その修復工事も進んで一旦、金をためてもう一度、という段階だというのに何百万の出費はキツい。


「馬子にも衣装とはよく言ったね。しっかりした神様に見えなくもない」

「もとから神だが」


花見月はいつも通りの態度。しかしその身はしっかりとした生地の衣冠に包まれていた。


「それ、汚すなよ。神事の際にしか着ないヤツだからな」


親指と人差し指で金の形を作る。その衣装だけでも何百万。歴史的価値も含めたらもっとだ。一生かけて払いきれるかどうかの金額が、花見月にまとわりついている。まあ、札束を着ているという感じだ。

 花見月がマジマジと服の感触を確かめているのを他所に、俺は簪を抜き顔を擦る。


「せっかくメイクをしたのにとっちゃうの?」

「何度も言ってるが、こんなお目化しして会う相手じゃない」

「同じ神だけど、貴方は地方の神で相手は有名な神。形だけでも正装はしないと」


「それにせっかく人型に戻れたのに恩返ししなくてもいいの?」と痛いところを突いてくる。大国主命の住処_出雲大社_近くは、いつも大国主命の神力で満ち溢れている。その神力のお陰で一時的に人型に戻れているわけなのだが…恩返しと自身の気分を秤にかける。秤は右と左に揺れて揺れて、結局恩返しの方が勝利した。


「簪以上のことはしない。これだけだからな」

「まあ、いつもよりマシかな」


渋々髪を整えて、簪をさした。



 "渋々"渋々、簪だけ刺すことに譲歩し、会場へと向かった。会場に行く方法は、招待状を持っているモノにしか明かされない。毎回違う方法が指定されるから、誰かが迷い込むということも少ない。便利なシステムである。

 神社の敷地に入る手前でワタたちと別れ、花見月と二人、神社の敷地に入っていく。観光者が多く、何処もかしこも人で溢れていた。よく分からない言語も飛び交う場所で、正装に身を包む俺たちは完全に浮いていた。人の目が突き刺さり、コスプレと勘違いした人々がシャッターを切ろうとする。

 花見月は顔を隠し写真に写らないようにしているが、すでに何枚か取られているため手遅れである。観光そっちのけで集まってくる人々を置いて、俺は一人歩き出した。


「物珍しいんだろうな。客寄せパンダならぬ客寄せ狐だ」

「そんなこと言ってる場合か!ど、どうしたら…こんなに人が集まってくるなんて思ってなかった」

「無視だ無視。どんなに警戒したって、次には対策されんだよ。対処するところが何とかしてくれるさ」


 そう言って、階段を上り社務所の方まで行く。社務所前はグッズを求めた人々がごった返しだった。次々と人を捌いていく巫女の仕事ぶりが素晴らしい。

 俺はスタスタと並ぶ人々の前を通り過ぎて巫女の前に割り込んだ。慌てて追いかけてきた花見月が、俺の袖を引く。素知らぬ顔をして、突然割り込んできた俺に戸惑う巫女に言った。


「招かれて来た。大国主命のもとまで連れていけ」


巫女は首を傾げる。何も知らないという顔だ。なにも聞いていないのか。面倒なことになってきた、ため息をつかずにはいられない。


「…大国主命。来てやったのに、無視したのはそっちだからな。後で文句言うなよ」


ぼそっと呟いて、踵を返した。割り込まれた客が何か言いたげにしていたのが見えて、少し頭を下げておく。巫女に目で追われているのが分かったが、足早に去った。 俺が悪い自覚はあるし、明らかな場合は頭を下げた方が円滑に解決にたどり着く。後からごちゃごちゃ言われても、お互い良い気がしない。




いつもの服装とは違う、高級な素材。重たいと感じる程に突き刺されている簪。歩く度に動きずら差を感じずにはいられない厚い下駄。朝からたたき起こされ、整えられた顔。

 何もかもが気に入らない。着飾るほどの相手でもない。ちょっと顔を出して、すぐに帰る。それだけの予定なのに、どうしてもと強請られたが故に着てしまった。裾に汚れをつけるだけでも何百万が消し飛ぶ。何百万が…ただでさえオンボロ神社。その修復工事も進んで一旦、金をためてもう一度、という段階だというのに何百万の出費はキツい。


「馬子にも衣装とはよく言ったね。しっかりした神様に見えなくもない」

「もとから神だが」


花見月はいつも通りの態度。しかしその身はしっかりとした生地の衣冠いかんに包まれていた。


「それ、汚すなよ。神事の際にしか着ないヤツだからな」


親指と人差し指で金の形を作る。その衣装だけでも何百万。歴史的価値も含めたらもっとだ。一生かけて払いきれるかどうかの金額が、花見月にまとわりついている。まあ、札束を着ているという感じだ。

 花見月がマジマジと服の感触を確かめているのを他所に、俺は簪を抜き、顔を擦る。


「せっかくメイクをしたのにとっちゃうの?」

「何度も言ってるが、こんなお目化しして会う相手じゃない」

「同じ神だけど、相手は有名な神様。正装はしないと」


「それにせっかく人型に戻れたのに恩返ししなくてもいいの?」と痛いところを突いてくる。大国主命の住処_出雲大社_近くは、いつも大国主命の神力で満ち溢れている。その神力のお陰で人型に戻れているわけなのだが…恩返しと自身の気分を秤にかける。秤は右と左に揺れて揺れて、結局恩返しの方が勝利した。

 渋々簪だけ刺すことに譲歩し、会場へと向かった。会場に行く方法は、招待状を持っているモノにしか明かされない。毎回違う方法が指定されるから、誰かが迷い込むということも少ない。便利なシステムである。




 神社の敷地に入る手前で、ワタたちと別れ花見月と二人、神社の敷地に入っていく。観光者が多く、何処もかしこも人で溢れていた。よく分からない言語も飛び交う場所で、正装に身を包む俺たちは完全に浮いていた。人の目が突き刺さり、コスプレと勘違いした人々がシャッターを切ろうとする。

 花見月は顔を隠し写真に写らないようにしているが、すでに何枚か取られているため手遅れである。観光そっちのけで集まってくる人々を置いて、俺は一人歩き出した。


「ど、どうしたら…こんなに人が集まってくるなんて思ってなかった」

「無視だ無視。どんなに警戒したって、次には対策されんだよ」


そう言って、階段を上り社務所の方まで真っ直ぐ歩いた。参道がどうとか、手水舎がどうとか色々作法がある。それも全て無視しよう。俺がそういうのを気にしないということも、恐らく予想済みだろう。横から色々いっ社務所前はグッズを求めた人々がごった返しだった。次々と人を捌いていく巫女の仕事ぶりが素晴らしい。俺はスタスタと並ぶ人々の前を通り過ぎて巫女の前に割り込んだ。慌てて花見月が、俺の袖を引く。素知らぬ顔をして、突然割り込んできた俺に戸惑う巫女に言った。


「招かれて来た。大国主命のもとまで連れていけ」


巫女は首を傾げる。何も知らないという顔だ。面倒なことになってきて、ため息をつかずにはいられない。


「大国主命。来てやったのに、無視したのはそっちだからな。後で文句言うなよ」


ぼそっと呟いて、踵を返した。割り込まれた客が何か言いたげにしていたのが見えて、少し頭を下げておく。巫女に目で追われているのが分かったが、足早に去った。俺が悪い自覚はあるし、明らかな場合は頭を下げた方が円滑に解決にたどり着く。後からごちゃごちゃ言われても、お互い良い気がしない。


「お、おい。もう帰るのか。大国主命に会うんじゃ…」

「それはやめだ、やめ。本人…本神が出てこないなら、仕方ないしな」


速足で歩く俺を花見月が引き留めようとする。「これ以上いても仕方ない」と言うと、花見月は何も言い返さなかった。招かれているのに勝手に帰るのは、とか考えていそうだ。招かれているが招かれざる客だったという訳で、それを後から責められる謂れはない。相手は分かっていて招待してきたのだから。

 何とか鳥居のもとまで戻ってきて、鳥居を潜ろうとする。すると小さく鈴の音が響いた。人混みの喧騒の中でもかき消されることなく鮮明に聞こえる。花見月にも聞こえたらしく、キョロキョロと辺りを見回している。やっと開けてくれる気になったらしい。鈴の音は次第に大きくなっていく。鳥居はいつの間にか消え去り、目の前には大きな木製の扉が出現していた。

 花見月が感嘆の声を上げる。シャンシャンと鈴は鳴り続け、大きな扉は錆びついた音を立てながら徐々に開いている。扉の隙間から甘い香りと花弁が飛び出してきた。やっぱり帰れば良かった。その隙間から見える光景に嫌悪感を抱かずにはいられない。さっさと帰ろうと思いながら、重たい脚を持ち上げた。




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