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ワーク:虚構の楽園

 春だ。新しい季節だな。春といえば新しい出会いだな。今日から新しいスタッフが来るらしい。楽しみだな、おい。

 さっそく社長の挨拶から始まるみてぇだ。


「え~みなさん、日頃の活動お疲れ様です。本日から新年度ということでですね、えぇ、張り切って参りましょう。そして、今日から一緒に働いてくれる早海麗蘭はやみれいらさんです」

早海麗蘭はやみれいらです。静岡から来ました。今日からよろしくお願いします!」

早海はやみさんはご自身で動画投稿もされているので、編集や……あとはスタジオ撮影の際に手伝ってもらうことになります」


 もしかして即戦力? まじやば。


「じゃあ……まずはウチのタレント達を紹介しますね。早海はやみさんの教育係やスタッフは人数が多いから後々……ということで」


 お、私らの出番か。


「まずはカンヌキ系ライバーのかんぬきタリナさん」

「おっす。本名は一門字琢奈いちもんじたくな。覚えなくていい。みんな『タリナ』って呼んでるから。よろ」

「よろしくお願いしますっ!」

「こちらはクレセント錠系ライバーの三日月みかづきシメルさん」

「窓も首もシメちゃうぞ! 三日月みかづきシメルで~っす。……あ、本名は真黒飛羅芽まぐろひらめといいます。元漁師です。マグロ釣ってました。お魚捌き生配信をメインに活動しています」


 ひさしぶりに会社で会ったけど、相変わらずシメルモードと飛羅芽ひらめモードのギャップひでーな。真面目っつーか、仕事熱心っつーか。


「蝶番系ライバーの蝶番狸ちょうつがいりポバンさん」

「うっ……ぽんぽこバンバン、あなたのスキマに蝶番、蝶番狸ちょうつがいりポバンー……」

「ごめんねー寝転がったままの挨拶で。彼女は体が弱くてねぇ。配信の時以外はああやって担架で点滴を打って安静にしていないといけないんだよねぇ」

「大丈夫ですか!?」


 大丈夫じゃねーよ。いつも。病院衣(?)以外見たことねーもん。

 ライバーやめろってみんなで説得しても聞かねーし。


「あ……あァ。社長、今度こそもうダメかも」

「えぇ!?」

「きょ、今日、死にます……。まじでホントに具合悪い……」

「す、すぐに救急車を……!」

「は、配信、始めてください……」

「えぇ!? 無理だよその状態じゃ……。こ、困ったなぁ……。とにかく、今日の新衣装お披露目配信は中止に……」

「やだぁ、社長……。病院じゃなくて配信中に死にたい……。最期までポバンとして生きたい……。『狸小路たぬきこうじすすき』なんてつまんない人間じゃなくてポバンが良いのぉ……」

「もういいから! 救急車呼ぶからね! まずは鎮痛剤飲んで!」

「薬……忘れましたぁ」

「「「「「「えぇぇぇぇっ!?」」」」」」(ほかスタッフ多数)

「誰か! 会社に置いてあった分を!」

「ええと、確か昨日使いきって、今日業者さんが補充しにくるはずでしたよね!? だよねタリナさん!」

「あー……そうだったかも」

「なんてことだぁ! ……あっ! 早海はやみさん、悪いんだけど今すぐ社宅に戻ってポバンさんの薬を取りに行ってくれませんか? 早海はやみさんの隣の部屋なんです! これっ、タクシー代と合鍵!」


 へぇ、タヌキの社宅に引っ越してきたのか。


「えへへ……。早海はやみさん。隣の部屋から変な臭いがしたら、私が死んだってことだからぁ……葬儀屋さん呼んでくれると嬉しいな……」

「えぇっ! と、とにかく行ってきます!」

「頼みましたよー!」

「配属初日に走らされるとはツイてねーな早海はやみさん」

「社長……配信、始めてください。リスナーのみんなにお別れしなきゃ……今日こそダメって」

「で、でも」

「いつものことだから始めてやれよ社長。どうせなんやかんやで無事に終わるから」

「もうっ、不謹慎ですよタリナさん!」

「……遺言、遺言……。……あっ……社長がここに連れてきてくれたから、私、いっぱい友達ができた。仲間も、視聴者も……みんな、私を見てくれる。もう、一人じゃない。だから私、もう、思い残すことは……な……」

「ダメだからぁ! 起きてくれポバンさ~ん!!」


 あれ、もしかして今日ホントに?





 ※このあと、早海はやみさんがダッシュで持ってきてくれた薬と救急隊員のおかげで乗り切れた。

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