表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/398

最高の御馳走

とにかく、形だけは風呂っぽくなったが、どうにもまだ上手くはいかないようだ。ここから先は、とにかくいろいろ試してみてその都度、修正していく感じにするしかないだろうな。


そう割り切って、『続きは明日』と家に戻ろうとした時、


「ピギャッ!!」


と悲鳴が上がって、バササッ!!と罠が作動した気配があった。俺がいた庭の反対側に仕掛けた罠だ。


「おっしゃ! これでまた肉が食える!」


俺が思わず声を出しながら罠の方に向かうと、今度はウサギだった。しかも、結構大きい。こりゃ、食い応えがあるぞ。テンションが上がる。


やっぱ、肉は大事だよな!


可哀想だとかなんとかは、便利な社会で余裕があるからそんなことを言ってられるんだ。<可哀想じゃない肉>とか<肉を食べるのは可哀想>だとか、こういう世界じゃただの寝言だ。


『食えるものを食える時に食う』


それをわきまえてなきゃ死ぬだけだ。まあ、『可哀想だから食べられない』とか言って飢え死にするなら勝手にしてくれ。そうすりゃ逆に、森の動物達が、『可哀想』とか欠片も思わずに食ってくれるさ。


そうだよな。『可哀想』とか思ってるのは人間の方だけだ。人間以外の動物はそんなこと気にしちゃくれねえ。


で、気配を察して家から出てきたリーネも、


「ウサギですね! 準備しなきゃ♡」


一瞬もためらうことなく食うための準備を始めてくれる。あの<血のプディング>と<肉と野草のスープ>にこれでありつけるんだ。最高の御馳走だよ。


だから俺は、逃げようと必死に暴れるウサギに容赦なくとどめを刺した。


『ありがとうな。お前の命、無駄なく頂かせてもらう……』


そんな風に心の中で悼みながら感謝しながら。


そうだ。前世じゃ<火葬>だったが、ここじゃ人間が死ねば基本的に土葬だ。ただ土に埋められるだけだ。昔はそれこそ山の中に放置して獣に食わせてたこともあったらしいが、それで人間の味を覚えたのが人間を狙うようになったらしくてそれじゃヤバいってんで、掘り起こされることもないようにしっかりと埋めるようになったと聞いたな。


もっとも、どこまで本当か確かめようもない<昔話>だけどな。


とは言え、埋められるのは確かだし、そこで微生物に食われて土に還っていって、それで森の一部になるなら、悪くない気もする。


それを養分にして植物が育って、その植物をネズミやウサギが食って、で、人間がまたそのネズミやウサギを食う。


このサイクルもすごく身近に感じるな。


いいじゃねえか。うん、改めて『生きてる』って感じがするぞ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ