表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/398

動かなきゃいけない時もある

<ウサギの血のプディング>を堪能して、俺は再び、<剣先スコップ>の制作に取り掛かった。リーネは、嬉しそうに残った血のプディングを口にした後、鍋を洗って、


「果実を摘みに行ってきます」


と言って家を出た。自分にできることするべきことをちゃんと理解して動いてくれる。でもそれは、俺自身が、彼女にとって、


<力になっていい相手>


でいられてるからだと思う。俺だって、ムカつく奴のために自主的に動こうなんて気にはなれない。そういう気になれなくても動かなきゃいけない時もあるのは確かだが、それだと今度はストレスが半端ないからな。


過剰なストレスがかかると、次はそれをどう発散ないし転嫁するかってことが必要になってくる。


で、自分より弱い相手、抵抗できない相手、反抗できない相手を探し出して、自分のストレス解消ストレス転嫁のためのサンドバッグにするんだ。


『人生には我慢が大事』?


嘘こけ。てめえが他人をストレス解消ストレス転嫁のためのサンドバッグにしたいがための詭弁だろうが。


『俺のストレス解消ストレス転嫁のためのサンドバッグにされても我慢しろ』


と言いたいだけじゃねえか。


まさに前世の俺がそれだった。女房や娘や部下を、自分のストレス解消ストレス発散のサンドバッグにしたいがために『我慢しろ』『耐えろ』と言ってきただけだ。


なんでそんな奴が好かれる? 大切にしたいと思ってもらえる? 労いたいと思ってもらえる?


寝言は寝て言え!


俺自身がそう思うんだから、他人も同じように思わないと考えられる道理がないよな。


ひたすら鉄を打ちつつ、延々とそんなことを考える。幸せになりたいなら、自分がまずそのために心掛けなきゃいけないよな。


前世の俺はそんなことさえ分からなかった。でも今はそう思える。思えるが、それでも失敗することはあるだろう。間違えることもあるだろう。大事なのは失敗や間違いをちゃんと受け止めることだと今なら分かる。じゃなきゃ、それを改めることもできない。


自分の間違いを認めない奴が世間から袋叩きにされるのも何度も見たじゃねえか。そこから学べよ。学べなかったから、前世の俺はあんな最後を迎えたんだ。後悔しかない人生の終わりを。


そういう<想い>をひたすら込めるようにして鉄を打ち、俺は、<剣先スコップ>を作り上げていく。


こうして日が暮れるまでには何とか形にして、そこからは手頃な枝をあてがい、さらに接合部を鎚で叩いて枝を包むように噛ませて固定。その上から蔓を巻き付けてしっかりと結合させたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ