表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/398

なんて強力な<ストレス解消法>

俺が思わず『美味(うま)っ!!』と声を上げたことで、リーネの表情がぱあっと明るくなった。


「よかった……」


としみじみ呟く。俺の舌に合うかどうか、心配だったんだろうな。だが、その心配は杞憂だったぞ。リーネ。


俺はついつい鍋にあった分のほとんどを食べてしまってから、


「あ…っ!」


と気付いた。リーネの分が残ってないじゃないか!!


「悪い! ついほとんど食っちまった……!」


これは本当に申し訳ない。作った本人を差し置いてほとんど食っちまうとか。もう一口分しか残ってねえ。なのに彼女は、


「トニーさんに喜んでもらえたらいいんです♡」


満面の笑顔で。くう! 眩しい!!


彼女がこんな笑顔ができること自体が、俺は誇らしかった。彼女にとって俺が不快で嫌な相手だったら、こんな表情はできないだろう。実際、出会ったばかりの時には明らかに怯えた様子だったし警戒してた。その必要がなくなったからこんな表情してくれるんだ。


前世でも、女にキモがられるのを、


『女は外見しか見てないからだ!』


とか言ってる奴らがいたが、いや、そうじゃねえ。確かに外見を見てるのは事実だが、それは<仕草>とか<表情>とかを含めた外見なんだ。キモがられるのは、仕草や表情がキモいからだよ。そしてそれはてめえの内面が表に出てるんだ。内面自体が表に漏れ出てんだ。


それに気付かねえかぎり、女は振り向いちゃくれねえ。


もっとも、俺の場合、外見はギリギリ『キモくない』程度で、それ以上にまっとうに稼いでたから、経済力目当てで女房は選んだんだろうけどな。それ以外、見るところがねえんだよ。自分でもそう思う。


とは言え、最初は女房も、俺を労わろうとしてくれてたよな……なのに俺は女房を労わってこなかった。そりゃ、女房としてもバカバカしくなってくるだろ。自分ばっかり一方的に労わって、なのに旦那はそれに胡坐かいてるだけなんだからよ。


はあ……やだやだ……


が、それが分かった以上、リーネを前世の女房と同じにするわけにはいかねえ。


「ありがとう……お前は本当にいい子だよな……」


本心からそう言えた。口先だけのお世辞じゃなく、本気でそう思ったんだ。


「いえ…! 私なんて……!」


リーネはそう恐縮するが、いやいや、マジでいい子だよ。そして、彼女が今の彼女でいられる俺であることを貫かなきゃと思えた。それがまた気分がいいんだ。


彼女が笑顔を見せられる俺だという実感が、俺自身を癒してくれる。なんて強力な<ストレス解消法>なんだ。


前世で気付きたかったよ。冗談抜きでな……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ