表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/398

他の奴らが俺を労うのが先だ

前世の俺は、


『まず、他の奴らが俺を労うのが先だ』


と思っていた。俺はこんなに頑張っているんだから、まず俺が労ってもらえるのが当たり前だと思ってたんだ。


でも、それはおかしいよな。なにしろ、世の中には俺以上に頑張ってる奴なんていくらでもいたはずなのに、なぜか俺が一番頑張ってると思い込んでいたんだ。


なんでだ? なんで俺はそんな風に思い込んでた? 実際に俺も頑張ってたのは事実だとしても、俺以外の奴は頑張ってなかったのか? 俺より頑張ってる奴がいないなら、なぜ、世の中には俺より評価を受けてる奴がいた?


前世の俺は、それを、


『運がよかっただけ』


『甘やかされてるだけ』


『ゴリ押しするために評価が盛られてるだけ』


と考えてたように思う。要は、


『本人の頑張り以上に評価を受けている』


と思ってたわけだ。<嫉妬>だよな。完全な嫉妬だ。自分より評価される奴がいることを認めたくなくて、そうやってこじつけてただけだ。


確かに、本人の頑張りや努力や実力以上に評価されてた事例もあったんだろう。しかしすべてがそうだとする根拠なんか、俺にはなかった。世界のすべてが見通せるわけでもなかったのに、俺は、何もかもを見通し理解してるつもりになって、分かったつもりになって、他人を見下してたんだ。


情けない。こうやって生まれ変わって他人の立場でかつての自分を省みることができるようになってようやく気付くとかな。


リーナは、なるほど俺と同じことはできないのかもしれない。だがそれは、俺の方が長く生きて経験を積んできてるだけであって、俺の頑張りだけで努力だけでそうなったんじゃないんだ。むしろ長く生きて経験を積んでる分、俺の方がいろんなことができるのは別に普通のことなんだよ。偉いわけでもなんでもない。


俺が鉄を打ってる傍らで、リーネがウサギを捌いてる。血を抜き、毛を切り、皮をはぎと、前世じゃ大人でもほとんどの奴ができないであろうことを、淡々と。


今世じゃ俺だってできるが、前世の俺はそんなこと、


『なんで俺がしなくちゃいけねーんだよ。そういうのを仕事にしてる奴がいるんだからそいつにやらせろよ』


と、一ミリも疑いなく思ってた。でもここじゃそれは通用しない。子供のうちに大体やらされる。嫌でもなんでもな。


でもそれは、確かに役に立ってることもあるものの、少なくとも俺にとっては、親への殺意も同時に植え付けるものだった。それも事実なんだ。俺が今世の両親を殺さなかったのは、たまたまきっかけがなかっただけだ。


黙々と鉄を打ちながら、俺はそんなことを考え続けてたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ