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道具の使い方

リーネと共に果実を食べて一休みしていると、


「キイッ!」


と家の外で声がし、バサバサと物音がした。すぐに察して、外に出ると、やっぱり、罠が作動していた。今度は、ネズミだ。と言っても、尻尾を別にしても二十センチ以上ある、やたらでかいネズミだが。耳と尻尾を変えたらウサギにも見えそうだ。


これも、<貴重なたんぱく源>だ。


この世界ではまだペストの流行は起こっていないのか、そういう認識でしかない。


まあ、ペストが流行した原因自体が、下水道がほぼ存在せず、糞尿を家の窓から投げ捨てるような不衛生な状態だったことが大きいみたいな話は聞いたことがあるし、その点、この辺りじゃそこまでひどいことにはなってないから、気にする必要もないのかもしれない。


つくづく、ローマ時代に整備された上下水道の技術がなぜ継承されなかったのかが謎だ。


いや、整備するのに大変なコストがかかるのは分かるんだが、それにしたって城の一部が糞に埋まって王様が引越しを決めるような状態になるよりマシな気がするんだがなあ。よく分からんよ。


などと余計なことを考えている間にも、俺がとどめを刺したネズミをリーネが受け取って、捌いてくれた。


俺も、転移とかいう形で向こうの世界の感覚のままで来てたら食えなかったかもしれないが、仮にもこっちで普通に生きてた期間があったからか、すでにこっちの感覚が身に付いてたおかげだろう、ネズミも普通に食えたよ。


で、ネズミ肉の下ごしらえはリーネに任せて、俺はまた、鍛冶の仕事を始めることにした。


炉に火を入れて、地金を焼き、鎚で打つ。なんだかんだとこれからについて不安もないわけじゃないが、そういう不安を叩きつけるようにして、焼いた鉄をひたすら打つ。


今度は、草刈り用の<鎌>を作ろうと思う。リーネに草刈りをしてもらう時に、少しでも楽になるようにだ。


根っ子ごと抜いた方がいいのは分かるんだが、それにはいい<軍手>みたいのがないとまた怪我をするだろう? 鎌を使った草刈りでも怪我する可能性はあるが、道具の使い方についてはリーネはわきまえてくれてるから、心配はしてない。


そして、ネズミ肉の下ごしらえが終わったリーネには、


「今日は俺が渡したナイフで草刈りをしておいてくれ。怪我には気を付けてな」


と頼んでおいた。


日が暮れる頃、鎌が大まかな形になった。砥ぎは明日にしよう。


外に出てリーネを見ると、ナイフでかなり草刈りが進んで、庭が広がってる。


「今日はそのくらいにしておけ」


「はい…!」


返事をして戻ってきた彼女の手を見ると、今度は怪我をしてなかった。うん、やっぱりちゃんと道具は使いこなせるんだな。



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