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負けたくない相手

それにマリーチカは、なんだかんだ言ったって真面目な子だよ。まだ七歳だというのに、家の事も、結構きちんとしてくれる。新しい方の家でトーイやラーナと一緒に暮らし始めたリーネにはなるべく頼らずに、家事とかもしようとしてくれてるんだ。


彼女なりの矜持なんだと思う。


『リーネには負けたくない』


っていうな。それは単なる子供っぽい意地だと言ってしまえば確かにそうなんだろうが。でも同時に、蔑ろにしていいようなことでもないと思うんだよ。


これも結局、独立心や自立心の芽生えだろうしな。七歳でこれはむしろ偉いと俺は思う。


だいたい、<可愛いげ>なんてものもどうせ自分にとってどれだけ都合がいいかって話でしかねえ。


俺にとっちゃマリーチカが自分の人生をどれだけ謳歌してくれるかが大事なんであって、俺にとって都合のいい子供でいてくれるかどうかは大した問題じゃないんだ。


リーネを見返してやりたいという気持ちをモチベーションにするというのならそれはそれでいいだろう。『それの何が悪い?』って話だしな。リーネを害しようってんじゃなければ。


そんな彼女のために、俺は簡単な料理を教える。俺に対する反発心もありつつ、リーネに対するそれよりは、まあまだ抑えられるみたいだし。


ナイフを手に食材を刻む表情も真剣そのものだ。彼女の場合は子供っぽい好奇心から『お手伝いがしたい』っていうのじゃなくて、もっとこう、切実な問題だからかもしれない。


「ナイフの使い方には気を付けろよ」


「分かってるよ。うっさいなあ!」


俺が注意を促すと、なんだかんだと憎まれ口を叩きながらもちゃんと気を付けてるのが分かる。ここでヘマなんかしようものなら、それこそリーネに負けると思ってるんじゃねえかな。


だからこそ、拙いながらも、意外なほど危なげはない。これはリーネに負けず劣らず料理上手になってくれる予感。


一方、カーシャも、野菜の皮むきぐらいはできる。目は見えないのに、指先の感覚だけでナイフを自在に操るんだ。しかもこれまで怪我をしたことがない。目が見えないからこそ刃先にまで神経を行き渡らせてしっかりと対処してるんだと思う。俺が教えもしないのに正しい使い方を自ら編み出して。


だからそんなカーシャの存在も、マリーチカにとっては<ライバル>というか、負けたくない相手の一人なんだろう。そういう相手がいることで自分を高めようという気持ちになれるのなら、それを活かせばいいさ。


あと、マリーチカも、読み書きや算術についてはさすがにリーネに頼るしかないから、おとなしく教わっている。もちろんこれも、リーネやカーシャに負けないためだろうが。



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