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気持ち悪い…!

『生きる』ってのは、


<自分の思い通りにならないこと>


<嫌なこと>


の連続だ。ましてや『目が見えない』なんて、普通の人間とは違う特徴を持ってるとそれこそ生き難いだろう。何しろ、人間社会ってのは、五体満足な奴を基準にして作られてるからな。


まあそれ自体は、コストとかそういうのを考えれば仕方ないんだというのは俺だって分かる。無限にコストをかけてありとあらゆる人間にとって完璧に過ごしやすい社会にするなんてのは、そうそうできることじゃねえのも事実だろうさ。


けどな。だからって、


『目が見えないカーシャが生きてちゃいけない』


って道理も、この世にゃねえんだよ。どこの誰とも分からねえ奴に、


<俺の娘の命の価値>


を勝手に決められて『はいそうですか』って言えるほど、俺は物分かりのいい人間じゃねえ。不具合はあっても不都合はあっても、その中でなんとか生きていく工夫はするしできる。それを邪魔しようとする奴の寝言なんざ、耳を傾けるに値しねえな。


自分が自分の親からそこまで大切にされてこなかったからって、自分がどんな人間になっちまおうと絶対に見捨てないって自信を持って思える親じゃねえからって、他者を妬むんじゃねえよ。


俺の娘の命の価値を勝手に決めるんじゃねえ。


目が見えないことを理由に『嫁には要らない』って考える奴のところになんか行く必要もねえよ。俺達家族で楽しく生きていけばいい。


「カーシャ、俺はお前が俺の娘になってくれて本当に感謝してる。お前と一緒に暮らせて本当に楽しいんだ。ありがとう……」


家に帰って、今日の<売上>を下ろしながらそう言うと、


「な……なによ急に。気持ち悪い…!」


彼女は怪訝そうな表情(かお)をして言った。もっとも、俺はこれまでにも同じことを何度も口にしてきてる。だから単に『久しぶり』だっただけで、実際には『急に』じゃないけどな。ただ、トーイのこともあって俺に対する反発も少なからず持ってしまってるから、『気持ち悪い』とも感じるんだろう。


すると、それを聞いてたマリーチカが、


「ホント、気持ち悪いオッサンだよね……!」


吐き捨てるように言った。けれど、それに対しては、


「私は……! オッサンとかまでは言ってないから……!」


カーシャが少し語気を強めてマリーチカを睨んだ。これにはマリーチカも、


「な…なによ。気持ち悪いって言ったのはあんたじゃん……!」


不満げに漏らす。そんな二人の様子を、マリヤとボリスが怯えたように見る。だから俺は、


「まあまあ、マリーチカにとっては確かに俺は<オッサン>だから。でも、ごめんな、カーシャ」


マリーチカの代わりに詫びたのだった。



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