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結婚式

こうして翌日、仕事を終えてから、


<リーネとトーイの結婚式>


を執り行うこととなった。と言っても、リーネ自身が作ったいつもより少しだけ豪勢な食事を家族で囲むだけのそれだけどな。


別に<婚姻届け>を出す義務もない。まっとうに行政の管理が届いてるところなら別かもしれないが、こんな辺境の寒村にまではなかなかそういうのも届かないし。


「リーネ。トーイ。アーク家の家長である俺の権限において、二人の結婚を認める。これから二人で力を合わせて家庭を作っていってほしい」


並んで座る二人に対して、俺は丁寧にかつ毅然とした態度でそう告げた。


「はい……!」


二人は神妙な様子で声を揃えて応える。これで晴れて二人は<夫婦>だ。


こうなるともう、子供達は異を唱えることもできない。本当はこんな形では収めたくなかったが、人間の感情ってのは、道理ではなかなか抑えられないからな。となるとこういう風に、


『仕方なく言うことを聞かせられた』


という<アリバイ>も必要になることもあると思う。


もちろん、イワンもカーシャもマリーチカも、本心では納得いってないだろう。それが、いかにも『仕方なく拍手してる』という様子にも表れてる。だが俺は、こうやって自分を抑えてくれた三人のことをこれからしっかりと労っていかなきゃならないと思ってる。


<心の傷>が癒えるまでな。


それが本当に癒えるかどうかは分からない。分からないが、つらい気持ちを蔑ろにされて嬉しい奴もいないだろう? なら、俺はできる限り労うだけだ。


『面倒臭い』


とは言わない。


『こんなことは自分で立ち直るものだ!』


とか、俺が勝手にリーネとトーイの結婚を決めておいて、


『後はお前らでなんとかしろ!』


などと無責任なことを言うつもりもねえよ。そんなことをしてるから信頼を失うんだろう? 自分がどんな奴を信頼できないか考えたら分かるだろうに、本当に自分ばかりが甘やかされたい奴が多すぎるってんだ。


こうやって労わってもらえた経験があるからこそ、他の誰かにも同じようにできるんだってなんで理解できないかねえ。


実際、カーシャとマリヤとマリーチカは、俺にひどく甘えてくるようになった。マリヤは今回関係ないように感じるかもしれないが、これも、


『イワンやカーシャやマリーチカの傷心に()てられてる』


ってことなんだろう。それもしっかりと受け止める。その一方で、リーネやトーイが慰めようとするのはむしろ<死体蹴り>になりそうだから、やめるように言っておいた。二人にはなるべくこれまで通りに振る舞うように言ったんだ。


で、もういい歳になったのもあって俺に甘えるわけにもいかなくなったイワンを筆頭に、これからしばらくは大変だぞ。


だがそれは覚悟の上だ。


<家長の権限を行使した者としての覚悟>


だよ。



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