この世で生きる上において絶対に忘れてはいけないこと
この世で生きる上において絶対に忘れてはいけないことの一つが、
『この世には自分の思い通りになることなんて、ほんの一握り以下しかない』
って現実だと俺は思う。何でもかんでも自分の思い通りになるのが正しいと思ってる奴が厄介事を起こしてるとしか思えねえんだよ。
戦争だってそうだ。自分の方の主張ばかり押し通そうとするから後に引けなくなる。けどな、『何でも自分の思い通りになる』なんて都合のいい話はこの世にゃねえんだよ。歴史を見ても分かるだろうが。
なんでその程度の現実も見られねえ?
調子こいて<時代の寵児>とか持て囃されてた起業家やら配信者やらが、
『自分ならできる!』
とか大言ぶっこいてやろうとしたことで蹴躓いて落ちぶれていったなんてのも、散々見てきただろうがよ。どうしてそこから学ばねえんだよ? 頭いいんだろ? お利口なんだろ? 現実ってもんが見えてるんだろ? でけえ口叩くなら理解しろよ。
宇宙旅行ができたところで、結局それも誰かの力を頼らなきゃやれねえし、何より、不老不死一つ実現できてねえよな?
いくら財産築こうが、死んだらすべて他の誰かのもんになるんだよ。違うってのかよ? 違うってんなら不老不死を実現して、永久不滅の存在にでもなってみせやがれ。
できねえんだろ? できねえって事実さえ認められねえ臆病者のヘタレが大言壮語並べてんじゃねえよ。
俺だってそんなことできねえよ。けどな、その中でもほんの少しだけなら、実現できることだってあるんだ。その、
<ほんの少しだけのこと>
を俺は、アントニオ・アークは大事にしたい。<選択と集中>だよ。できもしねえことに無駄なリソース割いてできることを疎かにするよりゃ、できることにリソースを傾けたいだけだ。
『俺の子供達を人間として扱う』
ってことにな。その結果が今のリーネでありトーイでありイワンでありカーシャなんだよ。そしてマリヤに対しても同じようにするだけ。
しかも、リーネが俺の真似をしてマリヤの世話をしてくれるようになった。今のところはあくまで<手伝い>程度のことだが、俺のやってきたことを参考にしてくれてるのが分かる。麓でもらってきた乳を飲ませて、ウンチしたら風呂場に行ってささっと尻を洗う。マリヤのためのベビーベッドを用意してくれる。
ちなみに、カーシャの時に使ってたヤツと同じ箱状のもので、そこに藁を敷き詰めた上に布を被せてベッドにしたあれだ。んでもって、敢えてオムツは使わずにそのまま寝かせて、布と箱の中の藁を交換することで対処する。布は洗濯し、藁は暖炉の燃料にする。
もうすっかり当たり前になったやり方だ。
 




